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25年目のG-SHOCKに求められるもの
定番G-SHOCKへ

 1983年の誕生以来、あくなき進化を続けてきたG-SHOCK。もともとG-SHOCKは「寿命10年、10気圧防水、落下強度10メートル」という“トリプル10”コンセプトの思想から生まれた。よいものを長く使ってもらおうという、モノ作りの原点のような発想からG-SHOCKは成り立っていたのだ。四半世紀という歴史を積み重ね、大人が満足できる“こだわりのモデル”が出てきたのも必然の流れなのかもしれない。

 ピークだった1990年代後半には200(色違い含む)ものG-SHOCKを投入した時期もあったというが、現在はピークの半分以下のラインアップ数に落ち着いているという。

 カシオ計算機 羽村技術センター 開発本部 時計統轄部 商品企画部 第一企画室の井崎達也氏は「ピーク時には限定商品を積極的に投入した結果、ラインアップが多くなった時期もありましたが、今は、ひとつのモデルを長く売り続けるという方針で、定番で売れる商品のラインアップに力を入れています」と語る。

カシオ計算機 羽村技術センター 開発本部 時計統轄部 商品企画部 第一企画室の井崎達也氏
ターニングポイントは「電波ソーラー化」

 腕時計の進化を語る上で、「電波ソーラー」は避けて通れない。この“狂わない、止まらない”時計の登場は、ユーザーの腕時計離れを食い止める大きな材料となった。

 G-SHOCKでも「ターニングポイントは電波ソーラー化だった」と井崎氏。しかし、耐衝撃性をアピールするG-SHOCKにとって、デリケートな電子部品を使っている電波ソーラーモジュールの内蔵は困難を極めた。

 それでも、1998年にソーラー駆動システム“タフソーラー”を搭載した「DW-9300」、2000年に電波受信機能“ウェーブセプター”を搭載した「GW-100」を発売。そして2002年に発売した電波ソーラー機能搭載「GW-300」で、精度と電池寿命という時計の基本性能のタフネス化に成功した。

電波ソーラー機能搭載「GW-300」
大人のG-SHOCK――原点は「DW-5000」
DW-5000をベースに電波ソーラー化を果たした「GW-5600」

 「G-SHOCKの原点は、1983年の初代モデルDW-5000。このデザインというのは、耐衝撃を満足させるために必要最小限のウレタンバンパーをつけるという形で作られているのです。このカタチで機能アップができれば、その機能があらゆるG-SHOCKのモデルに応用できるということ。つまり、長く使ってもらうためにはこのDW-5000のカタチに持っていかなければならなかったのです」(井崎氏)

 そして作られたのが、2005年に発売された「GW-5600」というモデルだ。DW-5000をデザインを継承し、電波ソーラー化を果たしたこのモデルが、結果的に“長く使ってもらいたいG-SHOCK”の原点となった。

そしてG-SHOCKの最高峰へ

 “長く使ってもらいたいG-SHOCK”への取り組みは、2007年3月に発売された「MRG-7500」でひとつの答えを提示する。

 ケース・バンド・ベゼルに採用した純チタン素材には「深層硬化処理」と「DLC処理」を施して耐摩耗性を強化。さらに、傷つきにくいサファイアガラスの採用や、メタルパーツが美しい多針フェイスなどで、最高峰にふさわしい仕上がりをみせている。18万9000円という価格も話題となった。

 「チタンを使うための二重の硬化処理も、前処理に時間がかかる上に正直いって歩留まりもあまりよくない。文字盤1枚にも従来品とは比べ物にならないコストをかけているほか、人手をかけて組み立ての精度を上げるなど手間ひまをかけている。手作りに近い感覚です」(井崎氏)

G-SHOCKの最高峰「MRG-7500」

 必然的な進化をしているので、価格に対して説得力が生まれてくる。決して華燭に走っているわけじゃなく、チタンのようなやわらかい素材をG-SHOCKに使うのだから硬くする。

 こだわりのモノ作りの発想から生まれたG-SHOCKだからこそ、大人に似合うのかもしれない。

井崎氏の左腕には、様々な試みが施された試作評価用の「MRG-7500」が光っていた

取材・文/+D Style編集部

取材協力/カシオ計算機  G-SHOCK http://g-shock.jp/