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鮮てっちり 浜藤(東京・六本木)
「こだわり」そして「遊び心」がたっぷりと詰まったふぐ料理店

新鮮な天然もののふぐにこだわっているため、10月〜3月までの年の半分しかオープンしないという、てっちりの店が「鮮てっちり 浜藤」だ。各界の有名人も多く訪れるこの店には、乾晴彦店主の半端ではないこだわりと、いい意味での「遊び心」が、たっぷりと詰まっている。また、年の半分の営業で、六本木の交差点からすぐというロケーションながら、下関産の天然もののふぐを、コース1万円台で食べさせるというのは特筆に値するのではないか。
とにかく楽しみながら店をやっているという印象が強く、毎年様々な特別メニューを設定しており(今年の11月は白トリュフを使った特別メニュー、ちなみに10月は松茸&ふぐ)、他のふぐの店とは明らかに一線を画する。
「シャンパーニュの合うふぐ屋にしたい」という乾店主の進言どおり、この店に来たら、とりあえず乾杯はビールではなくシャンパーニュをオススメする。もちろん、シャンパーニュのラインアップも素晴らしい。

鮮てっちり 浜藤
予想外の食材たちが織り成す、ドラマティックな味
キャビア

素晴らしいのはコンセプトだけではない。素材には細部にわたってこだわりが反映されている。下関産の天然のふぐに、鍋の水は木曽川上流の伏流水。羅臼産の昆布に枕崎産の鰹節。白舞茸、下仁田葱、白菜など、多くの食材が作り手、産地にこだわったものである。
そして、この店の真骨頂は、まずは「てっさ」。通常、ポン酢で食することの多い刺身だが、この店ではオリーブオイルと藻塩で食べることを薦められる。これが絶妙な味。今までに食べたことがない味なのに、まったく違和感なく受け入れられるだろう。
さらに今回は特別バージョンで白トリュフと白子と、キャビアを合わせるという離れ業。世界三大珍味のうち2つが揃ってしまうのだが、白トリュフの香ばしい香りと、白子のなめらかさ、そしてキャビアの塩加減がとてもマッチする。目で楽しむ豪華さではなく、あくまでも味で楽しめる組み合わせ。新世界三大珍味に入れたい、まさにドラマティックな味だ。

ラストを締めくくるのは、世界一のふぐ雑炊

「てっさ」に引き続き、「てっちり」はふぐも美味いが、しっかりした味の野菜がとてもうまい。それをまた、ポン酢だけでなく、オリーブオイルと藻塩で食べると、ふぐ鍋なのに、上品なオイルフォンデュを食べているような錯覚に陥りそうになる。
そして、鍋を存分に楽しんだあとは、「世界一ウマい」と謳われる(店主も自ら謳っている?笑)雑炊がいよいよ登場する。時間を計りながら丁寧につくった雑炊は、若干、米の固さを残しつつも、ふぐの旨みを余すところなく吸い上げる。そこに榛名地鶏の卵が入ると、滋味深さを一層引き立てる。白、黒コショウをかけて食べれば、さらに美味しさが倍増する。
写真は、特別バージョンの烏骨鶏をつかった雑炊。烏骨鶏ならではの薬膳的な、独特の香りが鼻腔を通るたびに、感動の波がどっと押し寄せる。従来のふぐ料理では使われなかった、さまざまな食材が、鍋と言う共通のプラットフォームの上で、縦横無尽に連係し、ドラマティックな味を演出するという。その様は、「てっちり2.0」と言っても過言ではないだろう。

てっちりコース (1人前 1万3125円〜)

ふぐ雑炊