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肉の食べ分けと食べ合わせで、真価を発揮させる
中国医学に基づいた“肉の食べ方”
楊先生01

 ヘルシーで女性に大人気の薬膳料理。そのルーツは中国3千年の歴史を持つ「中国医学」にあることをご存知だろうか。もともと中国では、すべての食物を“薬”として考えており、季節や体質、体調に合った食材をとることで病気を防ぐことを、最上の健康管理と考えている。そのため、あらゆる食材についての健康への影響や効能が研究されてきており、中国最古の漢方のバイブル「本草網目(ほんぞうこうもく)」には1892種類の効能が載っているのだという。

 「中国医学では、すべての食べ物を“甘・酸・苦・辛・鹹(塩辛い)”という5つの味と、からだを温める“温性・熱性”からだの熱を下げる“涼性・寒性”、中立の“平性”に分類しています。たとえば、温性の牛肉は、寒い時期に食べるとからだをあたためますが、冷性の鴨は控えめにした方がいいというように、素材や、それだけではなく、部位によっても細かに分かれているんですよ」と語るのは、「Oggi」や「クロワッサン」など、多くの女性誌に登場し、女性の美と健康についてアドバイスをしている中医学講師・楊暁波先生。

 楊先生の専門は主に主に婦人病、皮膚病や美容だが、その基礎となる中医学では薬膳や経絡(ツボ)の知識も学ぶため、食からライフスタイル、漢方に至るまで、幅広い引き出しを持つプロフェッショナルである。

楊先生02

 そんな楊先生に、肉についての知識をうかがってみた。動物別から、部位による細かな効き目の違いまでの幅広さにオドロキ。中国医学おそるべし! とても書ききれないので、以下、表にまとめてみた。

牛肉

からだへの働き

体を温める(水牛は平性)。消化機能や腎の働きをよくし、貧血の予防や骨を丈夫にする働きを持つ

おすすめの食べ合わせ

ビールやワイン、またはプーアール茶やウーロン茶などと。冷え性の方のみ、焼酎や紹興酒ともおすすめ。冬は煮込みが良い。にきび、肌荒れ、アトピーのひどい時は控えめに

部位別の効能

@「胃袋」:胃腸の弱い方に。柔らかくなるまで煮込むと良い
A「牛髄」:肺腎を補い、肌や皮膚のつやや血色を出す。骨を丈夫にする。スープを作って飲むと良い
B「牛筋」:コラーゲンが多く、肝を補い、美肌や関節痛などに

豚

からだへの働き

からだの血液と水分調節機能を補い、めまいやのぼせ、口の渇きや肌の乾燥に良い

おすすめの食べ合わせ

日本酒やワイン、ほうじ茶、ウーロン茶などと

部位別の効能

@「皮と豚足」:コラーゲンが多く、体を潤す血や津液を補い、美肌効果が。皮はのどの乾燥感や渇きに
A「豚の心臓」:多汗や動悸、不眠、精神不安などに
B「豚の腎臓」:腰痛、膝や腰に力が入れない、寝汗、耳鳴りなどに
C「レバー」:貧血やかすみ目、視力低下などの目のトラブルにも
D「胃袋」:食欲不振、男性の精力アップに
E「ホルモン」:痔や脱肛、頻尿などに

鶏肉

からだへの働き

やや温性で、五臓の働きをよくし、からだの血液と“気”を養う

おすすめの食べ合わせ

黄酒や紹興酒、ジャスミン茶と。鍋料理が最適

部位別の効能

@「玉子」:肌を潤し、体力をつける。不眠、動悸などにも
A「手羽先」「もみじ」:コラーゲンが多く、美肌に
B烏骨鶏は潤い作用がより強く、疲れと痩せ型の人に特によい

羊

からだへの働き

冷え性や貧血、疲れやすい時に良い

おすすめの食べ合わせ

ビールや冷酒、あるいは少量のワイン、黄酒や紹興酒と合う。また、ジャスミンなどの花茶とも。アトピー、皮膚病、アレルギー体質や風邪の時には、食べないほうが良い

部位別の効能

「羊のミルクで作ったチーズ」:体を温める、からだの血液と“気”を養う

鴨

からだへの働き

からだを冷やす性質がある。虚弱や胃弱、むくみ、寝汗、微熱の時や、精力増進にも良い

おすすめの食べ合わせ

焼酒、日本酒、紹興酒や、そば茶、玄米茶、ウーロン茶などと。アトピー、皮膚病、アレルギー体質の方や、めまいがする場合は控えめに

部位別の効能

「鴨の卵」:のどの痛みや咳などに

鹿

からだへの働き

温性の性質がある。腰、足のだるさなどの痛みの改善によい。冷え性、インポテンツにも有効

おすすめの食べ合わせ

ビール、冷酒や、緑茶、そば茶に。食べる季節は冬のほうがおすすめ。食べ過ぎると体に熱がこもりやすくなるので、にきびや吹き出物に要注意

部位別の効能

「鹿茸」:薬用として、EDなどに有効!

イノシシ

からだへの働き

温性の性質がある。腰、足のだるさなどの痛みの改善によい。脂肪分が豚より少なく、高脂血症の方に良い。関節の痛みの改善にもおすすめ。冷え性、EDにも有効

おすすめの食べ合わせ

紹興酒やプーアル茶に合う。鍋料理、蒸料理にも合い、焼き物も良い

熊

からだへの働き

体を温め、虚弱を改善、筋骨を強くする作用がある。手足のしびれ、痛みなどに効く。

おすすめの食べ合わせ

焼酎と白酒によく合う。紹興酒も一緒に美味しく食べられる。
プーアル茶とウーロン茶も

部位別の効能

@「手のひら」:なかなか手に入らない高級食材。左手で蜜を取るので、右手よりも大変の珍味といわれている。からだの血液と“気”を養い、傷の修復に役に立つといわれている
A「筋」:腰、足のだるさに良い
B「胆汁」:解毒と鎮静作用が高い

うさぎ

からだへの働き

からだを冷やし、解毒作用がある。病気のあと、体が弱っている時にも

おすすめの食べ合わせ

酒や紹興酒やジャスミン茶に合う。鍋料理が最適で、炒めものもよい。わさびと一緒には食べないほうがよいといわれている

 中国医学の奥深さもさることながら、それぞれの食材の効能はぜひ記憶にとどめておきたい。日頃の食事で役に立てることはもとより、話題にすれば盛り上がること間違いない。

楊暁波(よう・きょうは) 楊暁波(よう・きょうは)

 1984年雲南中医学院医学部卒業。雲南省中医研究所にて主治医・講師として勤務。 1994年、埼玉医科大学客員研究員として来日。1996年、日本遺伝子研究所勤務。 1999年より、日本中医薬研究会専任講師、中医皮膚病専門講座講師として活躍。
 毎週水曜日、イスクラ薬局中野店にてカウセリングを受けられる。

取材・文/似鳥陽子