2000年にここにアトリエを持った中国人画家・薛松氏からはじまった「莫干山路50号」は、若手のアーティストが世界に向けて作品を発表できる場として注目を浴びるようになった。その草分けといえるギャラリーが「香格納画廊(ShangART)」である。 |
オーナーは、スイス人のローレンツ・ヘルブリング氏。10年前に小さな画廊として始まり、1999年から本格的に始動、2005年に現在の場所へ移転した。楊福東や周鉄海、徐震など、上海出身の代表的な新進アーティストを幅広く支えており、コレクターやバイヤーから、中国現代アートのデータベース的な存在として認知されている。 同ギャラリーの広報・朱さんによると、現在の契約アーティストは30人。特に個性的な作品やテーマ性の強い作品は、隣接する「H-space」で個展として展示している。作品の売り込みはあとを立たず、審査はとても厳しいけれど、若手の育成は積極的に行っているとのこと。 「まだ世に出たばかりの無名に等しいアーティストをサポートするのは、仕事としては大変なことですが、画廊としての使命でもあります」 ちなみに、同ギャラリーの看板でもある周鉄海の作品は値がつけられずに非売品なのだそう。 |
1年で2倍になるものはザラだという中国現代アート市場は、玉石混交の過渡期であるとも言われている。 投資や新しモノに目端が利くのが上海人の特徴である。オーストラリアへ15年移住していた、ある上海人画家は、チャンスを掴むべく太平洋を横断して上海へ戻ってきた。1〜2年間、上海で創作活動をしてみて、駄目だったらまたオーストラリアへ戻るのだと言う。つまり、上海人の目から見て、今のブームが続くのはせいぜいあと2年だと見ているとも言える。 |
以前はタクシーの運転手に場所を告げてもわからなかったという「莫干山路50号」は、今や観光バスも停まる観光名所になりつつある。歩いている人の姿には外国人も多い。 投機として新進アーティストの作品に大枚を払うのはリスクが大きいが、旅の思い出に求めた作品が将来有名になるという宝くじ的なラッキーはあるかもしれない。そんなロマンを感じながら、自分の気に入った作品を探して歩いてみるのも、今までとは違った上海の楽しみ方で悪くない。 |
写 真:永山昌克
取材・文:似鳥陽子