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スチュワートが映像で明かす THE POLICEという「冒険」
50時間にも渡る「THE POLICE」というバンドの冒険の記録
スチュワート・コープランド氏01

――日本に久々に来てみて、どう思いましたか?

 日本に対する印象は僕は変わっていないんだけど、でも僕の印象ではなく、日本がすごく変わったのではないかなと思っているよ。THE POLICEのツアーで20年前に来たときは、みんな制服を着ているなぁって思っていた。でも、今は全く違う。今回ちょっと街を歩いてみても、皆さんすごく個性的でおしゃれだなぁと思ったよ。

――スチュワートさんもとてもおしゃれですよね

 これはいつも僕の妻が買ってきてくれるんだよ。まぁ、自分でもちょっとは買いにいくけどね。

――最初から上映しよう、世界的にみんなに見てもらおうと思って始まったドキュメンタリー撮影だったのですか?

 確かに、カメラを最初に手にしたときは、まるで観光客のような気分で、新しいおもちゃを手に入れて楽しいなという気持ちでまわし始めたんだ。気持ちの中では、例えば「風と共に去りぬ」みたいな素晴らしい映画のようなものを作って世界各国で上映してということも頭の中にはどっかあったのかもしれない。ただその時自分では、本当のカメラの使い方を知らなかったし、映画を作るということも、「スーパー8」というカメラでは超大作の映画を作ることはできないことも当時はまだよく分かっていなかった。ただカメラそのものよりも、カメラの前にあった出来事、THE POLICEというバンドの大冒険を自分には撮れたと思っているよ。

――自分の昔の姿を自分で撮って、またそれを20年以上経ってから編集するということはあまりないことだと思うのですが、どんな気分でしたか?

 (撮影していたので)自分が映ってなくてよかったなぁって思ったよ。

――その映像の中で、自分がこっち側で撮っているという状況は思い出したりしましたか?

 撮影していたことはもちろん良く覚えているし、アンディとスティングも当時はとても格好良かったんだよ。先週も彼らに会ったばかりなんだけど、もちろん今も格好いいんだけど重みが出たというか、人間として丸みも出たと思うし。まぁ、昔ほどではなくなったかなとは思うけどね。スティングの髪の形も今とは違うしね(笑)。ただ、アンディとスティングの髪の量を合わせても、僕の方が多いよね!

スチュワート・コープランド氏02
再結成はスティングからの1本の電話から

――この映画の制作を決めた時に、再結成を少しでも考えていましたか。

 全くなかったね。20年ぶりに映像を引っ張り出して作っていたわけだけど、映画に関連して受けた雑誌の取材なんかでは必ず最後に「自分じゃなくって、うちの上司がどうしても聞けっていうんですが、THE POLICEの再結成はあるんですか?」って聞かれるんだ。その度に「ないね」と一言でいつも答えていたんだ。まぁ、振り返ってみるとそれは嘘をついていたのかなと思ったりもするんだけど、当時の気持ちとしては再結成はあり得ないと思っていたので、嘘をついてるつもりはなかったんだ。自分としては映画を制作することでTHE POLICEとしての思い出を箱に詰めて、棚の上の奥にしまって「さぁ、もうこれで僕はTHE POLICEとは決別したんだ、これで終わりなんだ」という気持ちを持てていたんだ。そんな翌日にスティングの方から「やろうぜ」って電話がかかってきたんだよね。その時から、去年1年間というのはTHE POLICEの仕事に関わっていたわけで、ある意味でTHE POLICEという大きな怪物に飲み込まれてしまった気がしている。沼地から大きな怪物が出てきて、自分の人生をがっと飲み込んでいく。今年は、きっとスティングとアンディもこれを味わうことになるんじゃないかなと思っているよ。

スチュワート・コープランド氏03

――スティングやアンディから「このシーンは入れて欲しくない」なんて言われませんでしたか?

 アンディはこの映画を見て、どのシーンも気に入ってくれたよ。これを見た人がアンディがこの映画のスターだと思ってくれないかなぁ。スティングはとてもミステリアスでハンサムな存在だけど、アンディはいつも笑いを取るタイプだ。「ローリング・ストーン」誌のインタビューでも、僕とアンディはとにかくしゃべり倒して、少しでも自分達のことを記事にしてもらおうと思っていたんだ。スティングはといえば、だまってとことこと部屋の中を歩いていて、一言「Sky is blue(ああ、空が青いな)…」といった。たった3語しかしゃべってないのに、雑誌になったのは「空が青い――スティングはそう語った」。どーんとと大きく活字になったんだ。スティングだけがいつも注目されていた。まぁ、彼がカリスマ的存在だったから、僕もこうして日本に来れるようになったのかと思ったんだけどね。ただ、やっぱりこの映画の中のスター的存在はアンディだよ。

――解散したときに大喧嘩をしたという噂もありましたが、それは本当ですか?

 ケンカ別れというのはしていないんだよ。つい先週会ったときも、大ゲンカをしていたけどね。だから、ある意味でいろんなことが変わったのかもしれないけれど、中身は何も変わっていないんだ。ケンカの内容は、スティングは「この曲はもっとスローでやろうぜ」というけど、僕は「もっと早く、アップテンポでやっちゃおう」と言う。僕が「もっともっと大きくやろう」というとスティングが「いや、もっとソフトにやろうよ」というように、こういったことが延々と行われる。でもみんなで夕食を食べて、またアコースティック・ギターを出してきて、彼がベースを弾いてまたやるんだよね。

日本での再結成ツアーは来年2月を予定

――5月28日から新生THE POLICEとしてのツアーが始まりますが、いままた集まっているのですか?

 今またお互いのことを大好きになっているんだ。昔から変わってないんだと思う。映画を見てもらえばわかるんだけど、怒鳴りあっているよりも3人仲良く笑い合っているシーンが多いんじゃないかな。本当の兄弟みたいに大喧嘩もするんだけど、5分後には仲良くなって笑っているんだ。それに、みんな大人になったよね。でもスティングはまだ「スローでやろうぜ」っていうんだよな(笑)。
 今回の再結成はスティングが朝起きて、僕とアンディに電話をしてきたことがきっかけだったんだけど、たぶんその時のスティングの頭の中には「スチュワートの奴、今はきっとスローでやってくれる」と思ってたんじゃないかな。大間違いだったよな、あいつ(笑)。

――日本でのライブの予定があるんですよね?

 日本公演は2008年2月の初めを予定しているよ。ちょっとこのポスターを見て気がついたんだけど、フェニックスで仕事をしているときにたまたま時間ができて、ショッピングに行ったんだ。スティングがたまたまカメラを手にしていたときに「それ格好いいから俺も欲しいな」といったのがきっかけだったんだ。当時は誰かがいいものを見つけると、必ず3つ買わなければ気がすまないというところがあってね。それで3人でスーパー8のカメラで撮り始めたんだけど、アンディとスティングは途中で「あっ、自分で撮っていると自分は映してもらえないんだ」ってことにすぐに気がついた。でも僕はそのまま撮り続けて、その結果こういう映画を作ることになったんだ。
 この時計もみんなで買ったものなんだよね。このポスターの写真でスティングがしているのをまだ使っているよ。スティングはカルティエか何かをしてるんだけど、僕はカシオだよ! ちなみに40ドルだったね。

次のページでは、わずか6年で世界を駆け抜け、活動を停止したTHE POLICEの軌跡をスチュワートが撮った映画を紹介しながら振り返る。

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