「つかの間のショートバカンスに、ちょっとレアな体験をしてみない?」 アモイという街の名を聞いて、どこにあるか即座にピンと来たならば、なかなかの中国通である。アモイとは福建語の呼び方で、本来の中国で使われる標準語(北京語)では厦門(シアメン)という。日本からの直行便が増便され、昨年の冬頃からメディアでちらほらと取り上げられるようになった。とはいえ、まだまだ情報が少なく、観光地としてはマイナー感があるのが、逆にテンションが上がることに。 「よしっ、行ってみよう!」と、飛行機に乗ること約4時間。思ったよりずっと近い! 空港に降り立つと、もわっとした熱気に包まれた。 |
湾岸を走り、港にさしかかると、海の向かい側に小さな島が見えた。白い壁にオレンジ色の屋根をしたコロニアル調の建物が並ぶエキゾチックな風景である。突端には大きな石像が建っており、テーマパークのようにも見える。 |
ホテルに荷物を置き、さっそく街をぶらぶら歩いてみた。海風が心地よい。 |
店頭に並ぶお茶の缶を手にとってみると、なんとみんな中身が空っぽ! 「はて、これは一体……」と首を傾げていると、お店の女性が話しかけてきた。茶葉は全部冷蔵保存しているそうで、まず試飲してから、気に入ったものを買って欲しいとのこと。おそるおそる値段を聞いてみると、100グラムで25元からあると聞いてホッ。 店の奥には専用カウンターがあり、鮮やかな手つき(茶芸というのだそう)で煎れてくれた。これが「今まで飲んでいた烏龍茶は何だったの〜っ!?」と思うほど、美味しくてビックリ! うっとりと飲んでいると、お店の人が喜んで、どんどん値段の高いお茶を出してきてくれた。高級になるにつれて、煎れられたお茶の色が金色に輝き、雑味がなくなっていくのが素人でもわかる。まるで、鼻孔を抜ける一陣のそよ風。 近所の中国人が入れ替わり立ち替わりお茶を飲んで世間話をしていく様子は社交場さながら。こよなく烏龍茶を愛する厦門人に認められていることの証である。ほかの高級店で、既にパッケージングされている新茶の試飲もしてみたが、先に味わったお茶にはとても叶わない味だった。 |
港街・厦門のグルメの楽しみといえば、もちろん海鮮中華。けれども「厦門に来たなら、食べなきゃ損!」という隠れた名物がもうひとつある。それは南普陀寺の素菜(精進料理)。 |
「え〜っ、オーシャンフロントの街で、なんでわざわざ精進料理なんか……」という偏見は、テーブルについた瞬間から、ぶっ飛ぶこと確実。すべての料理が一級細工師の手によって豪華絢爛に飾り付けられ、中国古来の世界観を表現する“皿の上の芸術”なのである。 |
取材・文/似鳥 陽子
撮影/永山 昌克