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冒険心を満たす、Deepな厦門の楽しみ方
セクシーダンス付き国境接岸船ツアー

 現在、台湾領である金門島は、厦門の海岸から肉眼で見えるほど近くにある。国境接岸船に乗ること約1時間。あいにく海上には霧が立ちこめてきたが、それでも、はっきりと島の姿を望むことができた。
 島の正面には、中国大陸側に向かって「三民主義、中国統一!」の赤字が躍る看板が挑戦的に立っている。乗客が窓際に押し寄せて船が傾いた。こちらの船に乗っているのは、ほとんどが中国人である。見えない国境線を目の前にして、彼らは何を思っているのか……私の緊張まで高まっていたところ、我も我もと、金門島をバックにピースサインで写真を撮りだした。私も「俺を撮ってくれ!」と見知らぬ中国人に頼まれ、「イー、アール、サン」のかけ声とともにパシャッ!とシャッターを押した。おしなべて中国人は記念撮影が大好きなのは知っていたが、こんなところでも発揮されるとは……。

「三民主義、中国統一!」の看板。三民主義とは孫文が完成させたスロ ーガンで、民族主義・民権主義・民生主義のことをいう(写真左)、中国人は記念撮影が大好き! 中には、国旗と島をバックにして写ろう とする人も……(写真右)

 10分ほど停泊してから船はUターンした。国境線までは行けるが、さすがに島への上陸はできない模様。もししようと思っても、海岸には地雷が埋まっているそうだが。
 海上の霧はますます深くなり、肌寒くなってきた。甲板に上がっていた乗客は、みな船室へ降りていく。私もならって中へ入ると、そこには驚くべき光景が繰り広げられていた。

客室の先頭に小さなステージが……(写真左)、ダンサーは4人で、2組に分かれて踊っていた。片方が踊っている間に、もう片方の組が、ステージの後ろで衣装を着替えている。ほか、男性と女性の乗客を選んで、皇帝と皇后のコスプレをさせるアトラクションも(笑)(写真右)

 客室の先頭に小さなステージがあり、そこで、ベリーダンスの衣装を着た厦門ギャルが、セクシーダンスを踊っていたのである! おそらく100元という乗船料に見合うよう、乗客を飽きさせないためのサービスなのかもしれないが、“前門の虎、後門の狼”ならぬ“前にセクシーギャル、後ろに戒厳令の金門島”というシュールさに、頭がクラクラ。さすが、ここは「何でもあり」の中国なのだと実感した。

珍味! カブトガニ&海虫

 厦門港へ戻ると、夕食の時間だった。シュールな空気に当てられたのか、厦門でしか食べられない、思い切りレアなものが食べたくなった。現地の人に聞いてみると、「土笋凍」――海虫が有名とのこと。
 「海虫って……虫!?」
 一瞬怯んだが、現地では“ゲテモノ”扱いではなく、どこの店にもある名物料理で、美容や健康にも良いとのこと。「うむむむ……それではチャレンジしてみよう!」と決心し、厦門の名店「好清香」へ。メニューの「土笋凍」の文字を指さすと、出てきた出てきた……。
 ん? 高級感のある盛りつけで、意外とグロテスクではない。添えられたチリソースにつけて食べると、ふるふるとしたゼラチン質の食感の中にコリコリとした歯ごたえが。臭みもクセもなく、意外にイケた。

「土笋凍」は沙虫ともいう。砂の中に潜む、ゴカイによく似た風貌の虫だそう

 しかし、その帰り道に、もっと強力な食材を発見した。食堂の軒先の水槽にひっそりと沈む、ステルス戦闘機にも似た物体は――カブトガニであった。カブトガニといえば、日本では“生きた化石”として珍重されている生物。確か中国でも保護動物として指定されていたはずなのだが……。
 値段を聞いてみると60元という安さに、おもわず飛びついて調理してもらうことに。料理人が水槽の中に手を入れ、おもむろに尻尾を掴んで引き上げると、それまで動かなかったカブトガニが空中でバタバタと折れ曲がり抵抗した。あまりの激しいリアクションに「本当に食べるべきか」躊躇したのだが、料理人はあっさりとまな板の上でカブトガニを裏返し、大きな中華包丁でいとも簡単に捌いて炒めて皿の上に出した。

特別に、カブトガニを調理しているところを見せてもらった。血は青い(写真左)、沙茶醤と唐辛子の風味がビールにぴったりで、味もまさにカニそのもの(写真右)

 ――その間、わずか3分ほど。衝撃さめやらぬ間に、“一品料理”の姿に変わって湯気を立てているカブトガニを恐る恐る箸でつまむ。沙茶醤と唐辛子の風味がビールにぴったりで、味もまさにカニそのもの。ただ……食べるところが極端に少ないのと、水槽から引き上げた時のリアクションを思い出すと、「別にカブトガニじゃなくてもいいよね……。次からはカニにしよう」と思ったのであった。(ごめんよ、カブトガニ)

癒し系な厦門スタイルのナイトライフ

 厦門の夜の楽しみはバーやクラブが有名だが、もうひとつの楽しみがある。それはマッサージ。実は厦門はマッサージ店の激戦区だそうで、500以上の店があり、中国全国からマッサージ師が集まってくるのだそう。もっとも有名な老舗の大型店「老房子足浴」に行って、その広さとゴージャスさに驚いた。お茶やフルーツ、麺類などの軽食が飲み食べ放題。ほど良い痛気持ちよさに、そのまま眠りにつきたくなったら、部屋をそのまま使ってもOK。一晩中のんびりとマッサージ店で過ごすのが、癒し系な厦門スタイルのナイトライフなのである。

200室の個室は、団体で行っても、一部屋で一緒に施術を受けることが できる(写真左)、足マッサージだけなら90分で50元、全身オイルマッサージをつけてのフ ルコースでも160分で160元という、上海の半値ほどの安さ(写真中央)、もちろん、バーやクラブでのアッパーな夜遊びも。白鷺州公園のある湖 周辺が、賑やかな店が連なるナイトスポット(写真右)

 というわけで、2泊3日のショートバカンスでも、十二分に非日常へトリップできる厦門ガイドはいかがだっただろう。はじめて中国を体験する方におすすめしたいのはもちろん、上海や北京へよく行かれる中国通な方も、中国観が変わること間違いなし! である。

似鳥陽子(にたどり ようこ)01
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似鳥陽子(にたどり ようこ)02

取材・文/似鳥 陽子
撮影/永山 昌克