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焼酎ぐびなび

第二回 好みに合わせて飲めるバラエティに富んだ酒

 本格焼酎とひとことでいっても、実に様々な原材料からつくられている。人それぞれの好みに応じて、いろいろな味が楽しめる。そうしたバラエティに富んだところも本格焼酎の大きな魅力のひとつだ。今回は代表的な芋、麦、米、黒糖、泡盛などを紹介しよう。

芋焼酎

 近年の焼酎ブームを巻き起こした主役は、芋であるといっても過言ではないであろう。芋とはもちろん「さつま芋」であり、でん粉質の豊富なコガネセンガンが一般的。さつま芋というと「金時」などの皮が赤紫で実が黄色のものを想像するが、コガネセンガンの表面は淡い茶色である。もちろんコガネセンガン以外の芋(たとえばアヤムラサキや、ジョイホワイト、ベニアズマ、シロユタカなど)でつくられた芋焼酎も多数存在する。芋焼酎の魅力は、ふかし芋のようなほっこりとした香りやほのかな甘みだ。地元ではお湯割りで飲まれることの多い芋焼酎だが、最近は黒麹で仕込まれた焼酎が人気。こちらは白麹のものと比べると、味にパンチがあり、ロックでも美味しく飲めて、都会の味にもじゅうぶん対応できる。洋食や油っこい食べ物との相性もバツグンである。

九州の各地方からピックアップしてみた。
左から種子島のシロサツマでつくられている『南泉』(上妻酒造)、
鹿児島は薩摩半島最南端の指宿郡から『純黒』(田村合名会社)、
日置の『天狗櫻』(白石酒造)、国分の『玉露』中村酒造場、
宮崎・高鍋の『たちばな』(黒木本店)。

麦焼酎

 今回の焼酎ブームより一昔前に大ヒット商品となった大分の『いいちこ』は、下町のナポレオンという秀逸なキャッチでお馴染みの麦焼酎である。水割りやウーロン茶割でも楽しめるさっぱりとした味わいでいまだに売れ続けている商品だが、麦焼酎の中には、もちろんもっと麦独特の甘みや香ばしさをもったものや、宮崎の『百年の孤独』のように樽で長期熟成させたものなどもある。また、長崎県の壱岐は麦焼酎のふるさとといわれ、壱岐焼酎というブランドを確立している。こちらは麦らしい非常にしっかりした味が特徴である。

左から大分の『いいちこ』(三和酒類)、
壱岐焼酎の代表的銘柄である『天の川』(天の川酒造)、
一番右は東京で一番人気のある麦焼酎であるといわれている『中々』(黒木本店)。
名酒『百年の孤独』もこの蔵元がつくっている。

米焼酎

 芋焼酎などと比べると全国的につくられているのが、米焼酎。
日本酒の原材料ということもあり、日本酒の蔵元がつくっている米焼酎も多い。
熊本の『鳥飼』(鳥飼酒造)のように吟醸香の強くすっきりとしたタイプから、
しっかりしたタイプまで様々である。しっかりしたタイプとしては熊本県の球磨川流域で、
常圧蒸留によってつくられている球磨焼酎が有名である。
日本酒好きの方は、ここからスタートするとスムーズに焼酎に入っていけるかもしれない。

しっかりした味わいのなかにも清涼感のある宮崎の『山翡翠(やませみ)』(尾鈴山蒸留所)、
球磨焼酎の『誉の露』(深野酒造)、
長野県佐久市の日本酒の蔵がつくる、日本酒と同銘柄の焼酎『佐久の花』(佐久の花酒造)

黒糖焼酎

 独特の甘みで女性にも人気の焼酎が黒糖焼酎である。
原産は奄美諸島で、さとうきびを原料とした焼酎。
こちらも壱岐焼酎などと同じく産地が指定されているブランドである。
大小さまざまな島からなる奄美諸島で、それぞれの島の異なる環境でつくられた
黒糖焼酎はとても個性的である。
ロックで飲んでも美味しい焼酎で、暑い日などは、
水割りにクラッシュアイスをたっぷりいれて飲むと、ビール代わりにぐいぐいいける。

奄美のそれぞれの島から。左から沖永良部島の『天下一』(新納酒造)、
非常にしっかりとした味わいが特徴である奄美大島の『長雲』(山田酒造)、
さんご礁の島である徳之島の、ちょっと変わった名前の『あじゃ』(にしかわ酒造)。

その他の原材料をつかった焼酎

 その他にもいろいろな材料から本格焼酎をつくることはできる。『雲海』などで有名なそば焼酎や栗焼酎、ごま焼酎。また日本酒の製造過程からでる酒かすをつかった粕取り焼酎などあげればきりがない。旅行先などで、現地の原産のものを使った、ちょっと変わった原材料の焼酎をいろいろ探してみるのもなかなか楽しいものである。

左から山芋を原材料として使った宮崎の『天嵐坊』(黒木本店)。
名前の由来は詩人のアルチュール・ランボーからとか。
先ほど米焼酎でも紹介した長野の『佐久の花』(佐久の花酒造)のそばバージョン。
福岡発で全国的にも有名なごま焼酎『紅乙女』、
高知・四万十川の栗をつかった『ダバダ火振』(無手無冠)は
もちろん栗の香りがたまりません。

泡盛

泡盛はタイ米をつかった、独特の製法でつくられた沖縄の焼酎である。
泡盛についてはまた独特の世界があるので、次回以降で触れていきたいと思う。


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筆者紹介
橋本 裕之(ハシモト ヒロユキ)

有限会社デジほん社長 SSI認定焼酎アドバイザー。
株式会社ダイヤモンド社で編集者として『旨い!本格焼酎』(著・山同敦子)の企画、編集などに携わる。また、モバイルサイト情報誌『iして! ケータイサイトの歩き方』の編集統括を務めた以降はモバイル業界に関わるようになり、株式会社ドワンゴを経て、2005年6月に独立し有限会社デジほんを設立。デジタル、アナログを問わず、コンテンツを広くプロデュース、運用している。最近ではスケート界の裏を深くえぐった『愛するスケートに何が起こったのか?』(著・渡部絵美)を手がけている。

http://www.digifon.jp/






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