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快楽旅団

 意気揚々と空港に集まる。いつもの旅路は、早めについて、ラウンジで仕事に没頭するか、ギリギリに空港に到着し、名前を呼ばれつつ飛行機に滑り込むかのどちらか…。
現在、e-Ticketが進み、思いのほか出国の手続きが簡略化されている。どのシーズンでも長蛇にならずにゲートに迎えるのはすばらしい。今回は後者。日曜日の午後、東京で友人の結婚式に出席後、急いで空港へ。





 さて、会社役員会議目的の24時間。たった1日だけのリーゾート滞在のためびっくりするほど軽装。半袖、半ズボン。そして中にはコンビニ袋に海パンとパスポートという猛者も。自分もそうありたかったが、あいにく帰国した朝そのままにすぐに会議のためにやや重装備なのが残念。
まず漢4人は、出国手続きを済ませ、はやくも酒盛りである。既に出発時間21時を1時間ほど過ぎている。遅延である。早くもトラブル。
機体の不調でなんと2時間遅れの23時出発になってしまった。
ただでさえ短い24時間滞在。22時間になってしまった。


 残念ながら成田は、国際空港だが24時間体制ではない。こんなに遅く出国するのは久々。飛行機はガラ空き、エコノミーの6人掛けを独り占めだ。自分の中では、ファーストクラス→エコノミー6人席ぶち抜き→ビジネスクラスが座席のカーストである。
早速我々4人は横に並ぶことになく、縦に並び、離陸前に撃沈。到着までの3時間は、眠りに入るに限る。サイパンの予備知識は何もなく、会議とロケーションは海ということを達成すれば良いのである。そして無人島にいけば一日楽しめることだけ。深い眠りに落ちたまま、無事サイパンに到着。南国特有の匂いと肌に触れる空気が特有。サイパンは、驚くほど田舎であるが、人口の大半を占めるチャモロ人の気さくさがうれしい。ホテルに到着したときには既に明け方4時。そして二回目の撃沈。





 朝である。
暑い。一足先に夏である。ホテルは場末ながらもサイパンの中心街。ちょうど渋谷的なところと笑いながら友人が教えてくれたが、驚くほど何もない。
唯一のシンボルは、世界共通免税店 DFSギャラリアである。その周りに申し訳程度にショップが点在するばかり。
この寂れた感じがまた良い。ホテル横のカフェで朝食をとりながら、本日のスケジュールを組む。

 マハガニャ島を基地にパラセーリング、シーウォーカーなどを行うマリンスポーツパッケージを申し込む。これで約$150だ。食費以外何も使わないために今回の出費はほとんどない。予約デスクは朝7時からオープン。予約を済ませ、9時の迎えを待つ。
ヨットハーバーに着くとバナナボートでマハガニャ島へ。シーズン前で人もまばらである。貸し切りの海にただただ青い空と海。一気にテンションがあがる。
早速パラジェーリング(船に引っ張られ、パラシュートで海上15mぐらいを飛行する)に挑戦。絶景である。引き続きシーウォーカー(専用のカプセルを被り、海底を歩行する)に。浅瀬でも色鮮やかな魚が群れをなしている。




 一通り楽しんだ後は、今回の目的、会議にいそしむ。これからの事業計画など話す内容はシビアだが、周りからみているとただの避暑でしかない…。


 ここでまだお昼12時。
砂浜で眠りつつ、暑くなったと思ったところに、スコールが激しく降り注ぐ。そのままレインシャワーとして雨を浴びて、大地と会話。天からのギフトである。
すっかり心は解き放れた。十分満足だ。




 陽が落ちる頃、船に乗り、ホテルに戻る。ご飯をゆっくり食し、もう帰り支度である。帰りの飛行機でも十分眠れた。朝7時半に成田に着き、そのまま10時の会議に滑り込む。いつもと何も変わらない日常である。日焼けし、早くも皮がめくれているのが、唯一の証拠。限られた時間で日頃の喧噪を離れ十分リラックスできた。自分にとって日常と非日常がシームレスでつながる毎日こそ本当の贅沢かも知れない。時間がないよ!とお嘆きの貴方。そんなことはない。時間をデザインするのは結構簡単。ただただ詰め込むことではない。後は行動するかどうかである。

ロケ地 サイパン



















著者紹介
猪蔵(いのぞう)
株式会社ヒマナイヌ 取締役副社長いつも腹ペコ。世の中の面白いことを常に探っている在野編集者兼古物商。大学在学中より映像編集をはじめる。傍ら、株式会社まんだらけの店頭公開業務に取締役として従事。公開後、株式会社イマジカに移籍し、ソフトウェア開発を行なう。また映像専門誌「DVJ」編集デスクも務める。2003年(株)ヒマナイヌを起業。現在は東京麻布十番のカフェ縁縁を経営他、投資会社(株)アストリックス・キャピタル・パートナーズの取締役に就任。一瞬香港在住。プランニングを中心に映像に関するライティングや著書、TV番組の構成も手がけるなど多方面に活躍中。「人への思いやり」や「おもてなし」をテーマに頓知の利いた商品を世に送り出そうと奔走中。

http://www.himanainu.jp/




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