「D500」と組み合わせるのにぴったりなレンズ:山形豪・自然写真撮影紀
アフリカで、ニコンのDXフォーマット一眼レフ、「D500」のβ機を評価する機会を得たので、一足早くそのインプレッションをお届けする。今回は組み合わせて使うのに最適なレンズを考えてみたい。
これまで2回にわたって、ニコン「D500」の操作性や性能について述べてきたが、今回はレンズとの相性について見ていきたい(作例は全てβ機で撮影)。
1月に紹介したように、D500は高速/高精度のAFと、秒間約10コマの連写速度をバッテリーパックなしで達成しており、野生動物や乗り物、スポーツなど、激しいアクションや高速で移動する被写体を捉えるのに抜群の性能を有している。さらに軽量/コンパクトなので汎用性も高く、あらゆるシーンの撮影に対応。とはいえ、それはあくまで使うレンズの性能がボディに追い付いていればの話だ。
撮影内容やジャンル、撮影者のスタイルによって必要となるレンズはさまざまだ。自然写真のフィールドで、野生動物のタイトなポートレートから、風景や景色の中の動物といった、バラエティーに富んだ写真を撮影するには、広角域から超望遠まで、あらゆる画角をカバーできることが望ましい。しかも、機材を全て担いで徒歩移動をせねばならない現場や、荷物の重量に厳しい制限が設けられている軽飛行機の利用などを余儀なくされるケースでは、携行できる機材量をできるだけ少なく(軽く)したい。その上で、画質にも妥協したくないので、レンズ選びは慎重に行う必要がある。
超望遠ズーム
飛び立つアフリカコビトウ。ボツワナ、オカバンゴ・デルタ。F7.1、1/1250、ISO200、-0.3EV、レンズ:AF-S NIKKOR 200-500mm f/5.6E ED VR、焦点距離:750mm相当
サイズ/重量と画質の関係が特に問題となるのが超望遠レンズだ。一般的に野生動物の撮影では、接近することが困難な被写体が多いため、300mmから500mmくらいの焦点距離の使用頻度がとても高い。そこで重宝するのが超望遠ズームレンズだ。幸いニコンからは、高画質で最大焦点距離も長く、比較的小型な超望遠ズームレンズが2本出ている。「AF-S NIKKOR 200-500mm f/5.6E ED VR」と「AF-S NIKKOR 80-400mm f/4.5-5.6G ED VR」だ。いずれのレンズも、D500との相性はよく、コンパクトながら高倍率での撮影を可能にしてくれるありがたい存在だ。
ただし、それぞれに長所/短所があるので、どちらを選ぶかについては難しいところだとも感じる。具体的に言うと、AF-S NIKKOR 200-500mm f/5.6E ED VRは、最大焦点距離500mmというリーチの長さが最大の利点であり、野鳥などを撮る場合に大変便利なレンズだが、価格が手ごろな分、AFに関して若干もの足りなさを感じることもある。それに対しAF-S NIKKOR 80-400mm f/4.5-5.6G ED VRは、AFが非常に速いので、D500の高速な動体追尾AFをフル活用できるし、サイズが小さいので扱いやすさは上だ。スーパーEDガラスやナノクリスタルコートの採用により画質もよい。ただし、最大焦点距離が100mm短いのと、手振れ補正機能(VR)にスポーツモードがないため、激しく動く被写体を撮る際の厳密な構図決定が少々難しい。
いずれにしても、超望遠域での撮影がコンパクトなパッケージでこなせるのは、ネイチャーフォトの現場ではとてもありがたい。
超望遠単焦点レンズ
一方、最高画質と最高速のAFとにあくまでこだわるなら、単焦点超望遠レンズを使う以外に手段はない。そんな人には2015年7月に発売となった「AF-S NIKKOR 500mm f/4E FL ED VR」がお勧めだ。すさまじいまでの光学性能と高速AF性能を有している上、蛍石レンズの採用により重さが3090gと、これまでの同クラスのレンズに比べて大幅な軽量化を実現しており、D500と組み合わせたときのトータル重量が4kgを切る(D500の質量はバッテリー、xQDカードを含めて860グラム)。これは、慣れれば手持ちで容易に扱える範囲だし、重量バランスも極めて良好で、見かけからは想像できないくらい取り回しやすい。サイズと値段を許容できるのであれば、最強のコンビネーションだ。
さらに、「AF-S テレコンバーターTC-20E III」を使えば、1500mm相当の画角を、ほとんど画質を落とさずに手に入れられる。接近の難しい被写体を相手にする場合や、動物のタイトなポートレートなどを撮りたい場面で絶大な威力を発揮する。そしてD500には合成F値8まで対応したAFポイントが15点もあるので(うち9点が選択可能)、ためらいなく2倍テレコンバーターを使用することができる。
リカオンの横顔。ボツワナ、リニャンティ・コンセッション。F8、1/320、ISO320、レンズ:AF-S NIKKOR 500mm f/4E FL ED VR、AF-S テレコンバーターTC-20E III、焦点距離:1500mm相当
標準ズーム
とかく望遠側で撮影する際の優位性ばかりが強調され、広角側は弱いとされるDXフォーマットだが、最近ではレンズラインアップも充実し、風景等のワイド側の撮影も安心してこなせるようになっている。特に、2015年に発売された「AF-S DX NIKKOR 16-80mm f/2.8-4E ED VR」は、フルサイズの24-120mmと同等の画角をカバーしており、正に理想的な常用レンズだ。キットレンズとしても発売されるので、セットで入手しておけば、ジャンルを問わず幅広い撮影が可能となる。DXフォーマット専用レンズの中で唯一ナノクリスタルコートを採用しており、画質も良好だ。そしてなんと言っても軽量、コンパクトなので、D500に取り付けたときのバランスがとてもよい。首からぶら下げていても負担にならず、長時間の撮影も快適にこなすことができる。
超広角ズーム
24mm相当の画角よりもさらに広く撮りたいシーンでなら、「AF-S DX NIKKOR 10-24mm f/3.5-4.5G ED」という選択肢が存在する。遠近感を強調したい時や、手前から奥まで全てをシャープに写したいときなどに効果的なレンズだ。D500はチルト式モニターとタッチシャッター機能を搭載しているため、地面にカメラを置いて超ローアングルから被写体をあおるといった撮影にも柔軟に対応できる。
幾つかのレンズとD500との組み合わせを見てきたが、機動力重視のフィールドでは、とりあえずD500 2台に、それぞれAF-S DX NIKKOR 16-80mm f/2.8-4E ED VRとAF-S NIKKOR 80-400mm f/4.5-5.6G ED VR を付けっ放しにすることで、ほとんどの撮影をこなすことができてしまうだろう。機材の総重量を抑えつつ、35mm換算で24mmから600mm相当までの画角をすべてカバーできる上、現場でレンズ交換をしなくて済むのは実にありがたい。
木陰で休むアフリカゾウの家族。ボツワナ、マシャトゥ動物保護区。F8、1/200、ISO200、+0.3EV、レンズ:AF-S DX NIKKOR 10-24mm f/3.5-4.5G ED、焦点距離:15mm相当
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