本は電子書籍か、印刷か――その答えは「Think Different」で郷好文の“うふふ”マーケティング(2/3 ページ)

» 2011年10月13日 08時00分 公開
[郷好文,Business Media 誠]

私の本棚から電子化を考えよう

 私の本棚の端には『コトラーのマーケティング入門』がある。大家が語るマーケティング原則は普遍だが、事例や用語は古くなる。しかしオンラインなら、中身をリアルタイムに改訂して2度もうけられるし、著者アドバイスやネット講義などと組み合わせることもできる。

 反対の端には風間完著『女性美の描き方』がある。美人がいっぱいの本ですが何か? 風間完氏の美人画が好きなのだ。こういう本は隠し読みなら印刷、手本にするなら電子書籍が向いているように思う。だから、印刷本と電子メモリーを同梱(どうこん)して販売できそう。美人は印刷でも電子書籍でも売れるのだ。

 日航機墜落を描いた横山秀夫著『クライマーズ・ハイ』。主人公の遊軍記者、悠木和雅の全権デスクぶりが手に汗握る。本と映画の動画をバンドル販売すれば、小説の悠木の姿に映画の悠木役の堤真一氏の熱演がだぶり、2度楽しめる。タブレットの画面上で文字と動画を代わる代わる観るのも面白そうだ。

 視界から消えたのはトーマス・フリードマン著『フラット化する世界』。私は593ページの原著を持ち運ぶのがイヤで、2つにぶった切った。だが、切ったせいで読む気がしなくなった。結局読んだフリをして捨てた。だから知識はフラットのままだ。電子書籍ならお手軽に読んだかというと、それも微妙。厚さもまた本の1つの魅力だから。

 本棚の奥にハヤカワ書房の『弁護士ペリーメイスン』シリーズが何十冊もある。旅先で読むのが魅力のミステリーには電子書籍がちょうどいい。どの本を読んだか忘れて、ダブって買うアホをしなくても済むし。

 雑誌は電子書籍化して、収益モデルを再構築。音楽誌はインタビューとともに、曲のバラ売りやアルバム販売もできる。Web上にオーディションサイトを作って、新人の登竜門にもできる。映画誌や劇場誌は予告編や本編レンタル、スターインタビューを組み合わせて“追っかけメディア”にできるし、女性誌は“商品情報+レビュー+クーポン”を合体させて物欲刺激メディアになれる。

 だが、相棒cherryさんが欠かさず買うマンガ『きょうの猫村さん』の電子書籍化は微妙かもしれない。『サザエさん』のように、どこか昭和を感じる話も印刷が似合う。方言小説の森敦著『月山・鳥海山』、向田邦子氏のエッセイ『父の詫び状』も文庫本がいい。

 骨董をめぐる名エッセイの青柳瑞穂著『ささやかな日本発掘』は三省堂のオンデマンド書籍サービス「エスプレッソ」で作った。店頭で注文、その場で印刷+製本マシンでチン! 3分でできあがり。ほかほかのタイ焼きのように温かい本だった。

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