インタビュー
» 2013年05月14日 12時36分 公開

「寝だめ」が体に良くない理由 (2/2)

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脳がうつ状態と同じに? 眠不足の危険性

脳がうつ状態と同じに? 眠不足の危険性

―― 菅原さんのところにはさまざまな方が睡眠について相談にいらっしゃるかと思いますが、特に多い相談はありますか?

菅原 わたしが企業を対象に仕事をしているからだと思いますが、“眠れない”というよりは、“日中眠い”というものが多いです。

 例えば、“日中眠いのに、仕事が終わったらなぜか眠くない。休日も眠くないので仕事中だけが眠い。もしかしたら仕事がストレスで嫌なのかもしれないので心療内科にかかりました”と。こういう展開は、割と多いですね。

―― 最近の風潮だと、やはりそっちに行きますよね。

菅原 そうですね。睡眠はメンタルの話と直結します。ただ、精神的なストレス状態の人と、心身ともに元気だけど睡眠を奪われた人、それとうつ病の人、それぞれの脳をスキャンすると、程度の差はありますがみんな似たような構造になっているんです。つまり、ストレスがなかろうが、うつ病でなかろうが、睡眠が奪われれば脳の構造はうつ病の人や強いストレスを感じている人と同じになるんですよ。

 だから、睡眠不足の状態を自分で作っておいて“ストレスが”とか“あの上司が……”というのはそもそも話が逆で、ストレスがあるから眠れないのではなく、眠っていないとどうでもいいことでもストレスになりやすいんです。

―― なるほど。

菅原 ストレスという言葉に汎用性があるせいか、メンタルヘルスとかうつ病などのキーワードが逃げ道っぽく使われてしまっているところはあると思います。

 わたしが仕事としてやっているのは、そういう複雑なことは後から対応するとして、まずはセルフケアの能力を高めましょう、ということです。ストレスの要因を自分でコントロールするのは相当に難しいですし、セルフケアだけでうつ病から脱却するのもとても難しいのですが、睡眠不足や睡眠の質をコントロールするのは自分でできますから、まずは自分でできることをやってみましょう、ということですね。

―― 睡眠障害の人が増えている話をよく耳にしますが、睡眠障害の状態とそうでない状態の境目はどこにあるのでしょうか。

菅原 端的に言えば、日常生活に影響があるかどうか、です。障害というものはすべてそうなのですが、はっきりした境界はありません。だから、自傷他害の恐れがないのが大前提としてありますが、人が日常生活を送るのに支障がなければ障害ではないんです。

 例えば、その人が会社生活を営んでいることでたくさんの人が迷惑していたら、これは障害だといえますが、その人が山奥に一人で暮らしているなら誰にも迷惑をかけませんから障害とはいえません。このように、どんな状況に置かれているかでも障害のラインは決まります。

 睡眠障害を検出する“ピッツバーグ睡眠評価法”というのがあるんですが、この評価法で5.5点以上の人は、医学的に問題があるといわれています。以前、それを50人ぐらいの研修でやったのですが、5.5点を下まわった人は誰もいませんでした。わたしも13点くらいでしたから。

 つまり、その時にやった50人はみんなそのテストでは睡眠障害ということになります。でも、生活に支障をきたしていないし、何とかパフォーマンスを発揮しているので、その結果だけで睡眠障害と断じてしまうのは本人の生活を改善することに役立ちません。

 “ピッツバーグ睡眠評価法”のように、睡眠障害かどうかを点数として出せるものは結構あるのですが、全然寝ていなくて常に眠い状態でも、本人が困っていなければ治療対象にはならないこともあります。

―― 睡眠障害を自分で改善することはできるのでしょうか。

菅原 基本的に、睡眠の治療は薬物療法か認知行動療法ですが、このうち認知行動療法は自分でやるものです。そういう意味では、自分で改善することができるということですね。薬物療法の方は、自分に足りない物質を一時的に薬で補うものなので、自分の力だけでなく薬の力も借りるという表現になると思います。

 睡眠は生活のスタイルと直結しているので、睡眠障害の改善には生活スタイルを変えることが必須条件になります。ただ、生活スタイルといっても今は凄く多様化しているので、こういう生活がいいですよ、という答えはないんですよね。

 ということは、万人に当てはまる一定の法則性を見出して、それ見合うように自分なりに工夫をしてみましょうという風に持っていかないといけません。それでこの本ができたんです。

―― 最後になりますが、睡眠について悩んでいる方々に対してのメッセージをいただければと思います。

菅原 この本について皆さんからいろいろとご感想をいただくのですが、皆さんが一番欲していたのは、“体の調子が悪くなってから対処をする考え方をいいかげんにやめたい”ということなんだなと思いました。

 この本で書いている生体リズムというのは、“この時間に起きたということはこの時間にはこうなる”ことが予測できるツールだと思います。これを理解しておくと、表面的な体調の良し悪しに翻弄されることなく、先を見越して行動できるようになるので、いろいろなことがうまく噛み合うようになるはずです。

 新しく何かを始めることをしなくても考え方を変えることで先を予測できるというのが生体リズムの一番の魅力なので“○時間後にこういうコンディションになっていたいから、今はこうしておこう”というように使いこなしていただけたらうれしいです。

(取材・記事/山田洋介)

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