インタビュー
» 2013年08月13日 13時00分 公開

新しいマーケティング手法をビジネス小説で説明した理由 (2/3)

[新刊JP]
新刊JP

マーケッターたちが大注目! LINE@の効果とは?

中沢敦さんの著書『なぜ小さなコスメ店が大型ドラッグストアに逆襲できたのか?』

―― この本は地方のシャッター商店街の小さなコスメ店が舞台となっていますが、地方の小売店を物語の中心に持ってきたのはなぜですか?

中沢 1つは社会問題としてのシャッター商店街や地方の疲弊があって、その打開策として、地方の小売店でもソーシャルメディアの活用は有効だということを示したかったからです。結局、大きいお店でも、小さなお店でも、プロモーションのやり方はそんなに変わらないんです。だから、小さなお店を舞台にした方が、よりO2Oの効果は際立つかなと。

―― この物語では地方の商店街と郊外の大型モールが対比されていますが、非常に分かりやすかったです。

中沢 いままでは大きいものが圧倒していたんです。広告もマスメディアの影響力はすごかったわけですし、莫大なお金を払えれば、それなりの効果が見込めた。ところが、ソーシャルメディアの登場によって、マスメディアの広告が効かなくなってきている側面が出てきて、広告費をあまり掛けなくても、生活消費者の皆さんに訴求できるようになってきたんですよ。今、最も勢いのあるコミュニケーションツールといえばLINEですよね。LINE公式のビジネスアカウントってすごく広告費用が高いように思われがちですが、実はそこまで高くはなくて、費用対効果で考えれば、マスメディアの3分の1程度のコストで販促ができてしまうんです。だから小さな店でも、知恵を使えばプロモーションが可能だということを学んでいただきたいな、と。

―― 本書でも明らかになっているように、実は地方でもスマートフォンは普及している。なのに、小雪は最初に「田舎でスマートフォンを持っている人なんて、どれほどいるのだろうか」と考えてしまっていますよね。

中沢 そういった『○○だから』という思い込みが積み重なると、お店をつぶしてしまいかねません。そこをどうやって工夫していくかが大事なんですね。

 わたしたちは資生堂さんとおつきあいさせていただいて化粧品ユーザーのことを分かったのは、意外と使っている化粧品が自分の肌にあっているかどうか分からない顧客も多いのです。だから、肌を第三者にちゃんと診断してもらって、合っているものを買うということが、女性にとってより美しくための近道だと思いますし、それは会社経営も一緒で、外部のコンサルタントから客観視してもらって、アドバイスしてもらいながらやることが大切なのかなと思いますね。

―― なるほど。本書では小雪がソーシャルメディアを駆使しながら、自分の店、さらにはシャッター商店街をも盛り上げていきます。ところが、現実の蓋を開けてみると、ソーシャルメディアを使ったプロモーションの成功例は、基本的に大企業だらけで中小企業はあまり上がってきません。中小企業が成功しにくい理由はなぜだと思いますか?

中沢 1つ言えることは、ソーシャルメディアを導入したからといって、売り上げが飛躍的に伸びるわけではないということです。実は大手の企業でも失敗しているところはたくさんあります。ただ、そこに掛けられるお金が多かったり、ソーシャルメディアの専門家に教わっているから、失敗しない確率が上がるということですね。

 中小企業のソーシャルメディア活用の成功例でいえば、米国・欧州などの先進国は事例がありますが、基本的には少し反応が良かったものをトライアルアンドエラーで探して、いかにPDCAサイクルに落とし込むかということが大事でしょうね。

―― 今、中沢さんが注目されているソーシャルメディアやマーケティングツールみたいなものがあれば教えていただけますか?

中沢 先ほども言いましたけれど、LINEですね。その中の『LINE@』というツールは、LINEの中で中小のお店のプロモーションができるビジネスアカウントを設置できるのですが、1カ月5250円で利用できます(2013年7月現在)。

 これで成功しているお店もありまして、LIP SERVICEさんというアパレルのブランドですが、4万5000人以上のフレンドがいるんですよ。

―― 4万5000人ってすごい数ですね!

中沢 1ブランドでそれだけ集められるのはすごいですよ。ほかにも、ローカルでやっているピザ屋さんには約5000人のフレンドがいます。LINEは50%以上のユーザーが毎日利用していて、メールの開封率も非常に高いので、ツールとしてはすごく有効だと思います。

―― 各企業はLINE@を使ってどんな情報をユーザーに送っているのですか?

中沢 例えば、お得情報とかですね。

―― お得情報って、例えば値引きみたいなものだと思われますが、基本的に小売りにとっての値引きはその場しのぎでしかないという印象があります。本書でも小雪が大型店に対抗して値引きをして、見事に失敗していました。

中沢 目の前の店が安くしたから、対抗して自分の店も安くすると、相手はさらに安くしてくるでしょうから、どちらの店舗も利益が薄くなって、労力も増えるという悪循環を生んでしまうのです。値引きって一番簡単な販促のやり方なので、ついついやってしまいがちなんですけど、値引き競争に耐えられるのは、大型のチェーン店くらいでしょうね。一番大きなチェーン店が価格設定のカギを握っているという部分もあるので。

―― そうなると、値下げ以外で、ユーザーが求めているような有効的な情報が必要です。この物語では、小雪は化粧の教室を開いていますが。

中沢 その情報については、業界や環境にもよりますね。値引きをしても痛くない商品もあります。例えばローソンさんの『からあげクン』などのファストフード フライヤーは、元から利益率が高いと思われますので、20円くらいの値下げであれば大丈夫です。ほかにも、ドラッグストアが健康診断をしたり、ワンコインで血液検査をできるようにしたり、いろいろな方法がありますよね。

 値下げの一番の問題は、クーポンを発行すると、クーポンに慣れてしまって値下げ待ちを起こしてしまうのです。例えば、普段198円のお茶が120円に値下げされていて、それを買っていると、価格価値の基準となる“内的参照価格”が120円になってしまって、198円に戻ったときに『高い』と思って買わなくなってしまうのですよ。

―― 確かにそうですね!

中沢 そういった部分を踏まえて、メーカーさんや小売は買い物客の心理を考えながら販促を仕掛けることが大事かなと思います。

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