スキャン代行業者の実力を比較する(前編):「スキャン代行サービス」大研究(5/5 ページ)
電子書籍の普及に伴って台頭してきた「スキャン代行サービス」。この代行サービスを取り扱う短期連載の第2回は、実際に各業者に発注し、サービスの内容を具体的に検証する。
電私化.com
- 概要
電私化.comは、ディーエル・パートナーズが提供するスキャン代行サービス。所在地は福島県郡山市。基本料金は1冊150円で、カバーのスキャン(表のみ)、ファイル名変更も基本料金に含んでいる。350ページを超えると追加料金が必要。オプションとしてはOCRのほか、JPEG書き出し(圧縮ファイルで納品)や600dpiの高解像度スキャンなど、他社にないきめ細かなサービスを提供している。
カラーモードについても、全ページカラーか、もしくは「表紙やカラーページはカラー、白黒のページはグレースケール」を選択できる。目安となる納期についてはサービストップページに明示されている。
- 申し込みから納品までの流れ
申し込みの後、入金と書籍発送を同じタイミングで行うという手順になる。サービスの利用には会員登録が必要となる。ショッピングカートシステムを採用した申し込み方法はやや独特だが、申し込み後は入金確認、書籍到着確認それぞれについてメールが届くなど、今回試用した業者の中で対応はしっかりしている部類に入る。納品はオンライン(firestorage利用)で、申し込みからオンライン納品までは中8日。申込時には希望納品日の選択も可能。
料金
- 発送料:950円
- 料金:750円 350ページ以下150円×4冊+600ページ以下250円×1冊−ポイント値引100円
- 返送料:740円 返送は任意
- 納品物のクオリティ
「表紙やカラーページはカラー、白黒のページはグレースケール」というモードを指定したにもかかわらず、納品物は全ページカラーだった。単純なミスなのか、それ以外の理由なのかは不明。
全体的に黄色がかっているほか、スキャナのメンテナンス不足と思われる色の帯が冊子を問わず入っている。マンガ単行本/写真集/絵本ではかなり極端な傾きがあるなど、文章主体でない冊子も傾き自動補正がオンのまま読み取っているとみられる。
裁断の幅は他社に比べると狭く、文字がなるべく切り落とされないよう配慮されている様子だが、ページの折れなどはそのまま読み取られている。また、白紙ページは削除されている。絵本の表紙(ハードカバー)のスキャンにも対応している。
総評
ハードカバーを含む表紙スキャンやファイル名変更を基本料金に含むなど料金面のメリットは大きいが、スキャナのメンテナンス不足とみられる色の帯が入っていたり、極端に傾いているページが散見されるなど、トータルで見ると品質は高いとは言えない。
他社と比べると裁断の幅が狭いなど、読み手に配慮していると思われる個所もみられるだけに残念。ちなみに同社の所在地である福島県は、東京から発送した場合も都内宛と料金が変わらない(ヤマト便の場合)。
次回は残る3社の評価と、試用のまとめをお届けする。
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