電子書籍における漫画インタフェースを大いに語る(後編):うめ・小沢高広×一色登希彦×藤井あや(5/5 ページ)
電子書籍で配信される漫画に漫画家の意見はどこまで反映されているのだろうか。うめ・小沢高広氏、一色登希彦氏、藤井あや氏という電子書籍の出版経験を持つ3人の現役漫画家による座談会は、業界への提言へとつながっていく。対談記事最終回。
「最近、作者自身の広報担当としての仕事がすごく増えてる」(小沢)
藤井 自分の作品をまとめたアプリがほしいという話ですけど、最近、Amazonが著者ページを作り始めてるんですよね。公開後もいろいろ機能が追加されていて、Twitterが表示されるようになったり、カレンダーを表示して著者がサイン会などのイベント情報を書き込めるようになったり。わたしは複数の雑誌で読み切りをちょこちょこ描いてるから、イベントだけじゃなくて、雑誌の発売日も表示できるようにしてほしいですとか、要望を出したりしてたんですけど。
── こうなるともうポータルですね。
藤井 そのつもりなのかもしれません。わたしはAmazonに同人誌もお願いしているので、著者ページに商業誌と同人誌と同時に表示してくれるのがすごく便利で。
一色 そうなると、さっき言われた、作家さんに関して自分の作品が買える一覧がないのかっていう、それに近づいてきますよね。
小沢 最近、作者自身の広報担当としての仕事がすごく増えてるじゃないですか。ツイートしたり、ブログを書いたり。
一色 増えてますね。何をやってるんだ俺たち、という感じですよね。
小沢 この前まで産休で休んでて、仕事を完全に切ってたからわりと真剣にできたんですけど、連載が始まったらそこまで手が回らない。
藤井 分かる(笑)。ブログ(の更新)も3〜4カ月に1回とかになっちゃう。
── Twitterもそうですけど、広報的な部分が作家さんに背負わされたりという量がどんどん増えてますよね。出版社の広報宣伝の予算が減っているのか、人そのものを減らされてるのかは分からないですけど。
小沢 どんどん増えてますね。NHK_PRさんみたいな出版社の営業さんが本当に欲しい。アカウント作って、たまに思い出したように出てくるだけじゃなくて。こっちがネタ振ってるのに、ツッコミもボケもしてくれないとか。
一色 そうですねー。作家がTwitterでやっているくらいのことを、せめて各出版社にひとり。
小沢 作家がやってるんだから、時間がないとか言っちゃだめですよね。
一色 冗談じゃないですよね。
小沢 最近編集の方が、ちょっとつぶやいてくださいよとか言ってくるじゃないですか。
藤井 あるある(笑)
一色 ありますね。作家にアウトソーシングしてるつもりなんですよ。でも、ちょっと待て、っていう。
藤井 版元さんも人的リソースが足りないですし、打たれ弱いんですよ。聞かれたくない質問もTwitterだと飛んできちゃうので、「質問には答えられません、質問はメールフォームから」とかプロフィールに書いてありますよね。でも意味ないんですよね、Twitterだと。
一色 でもそれをちゃんとあしらえる人がやるべきなのが、Twitterでの広報活動ですからね。
小沢 ガッツ星人を雇いたい(笑)
一色 そうそうそうそう(一同爆笑)
小沢 ガッツ星人が外注でやってくれないかな、別アカウントで。バイト的に。
一色 やらないこともないって書いてあった、確か。でもそれでガッツ星人が見事にこなしちゃったら、われわれは征服されちゃうじゃないですか(笑)
小沢 漫画界が征服されちゃう!(一同爆笑)
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