Apple純正電子書籍制作ソフト「iBooks Author」は期待以上?
Appleは、教育業界向けに電子教科書制作/配信プラットフォーム構想を発表、無料の関連ツール群をリリースした。中でも電子書籍制作ソフト「iBooks Author」はその使い勝手から人気が出そうだ。
「Appleがテクノロジーとリベラルアーツの交わる位置に存在するならば、教育は、われわれが興味を示すべき場所だ」――Appleが1月18日(現地時間)にニューヨークで実施した発表会で、教育業界向けに電子教科書制作/配信プラットフォーム構想を発表、無料の関連ツール群をリリースした。
今回のイベントは教育市場、特に電子教科書の市場に対するAppleのアプローチで、故スティーブ・ジョブズ氏がその自伝「スティーブ・ジョブズ」の中でも進出の強い意欲を語っていた事業領域の1つでもある。
無料でスゴい「iBooks Author」
Appleがこの日発表したのは、「iBooks 2」「iTunes U」「iBooks Author」の3つ。いずれもソフトウェアで、iBooks 2とiTunes UはApp Storeで、iBooks AuthorはMac App Storeから無料でダウンロードできる。Mac OS X用アプリのiBooks Authorは、Mac OS X 10.7.2(Lion)以降で動作する。
今回の発表会のテーマは「教科書の再発明」。ざっとビジョンだけ知りたいという方のために、Appleが短くまとめた動画も紹介する。
エンドユーザーの新たな学習体験として動画でもアピールされているのが、iPad上のiBooks 2アプリで電子教科書を読む、というもの。iBooks 2は、iOS向けの電子書籍アプリ「iBooks」の最新版で、後述するiBooks Authorで制作されたマルチタッチ対応のテキストブック(電子教科書)をサポートしたほか、ハイライト表示や学習カード機能など、電子教科書として役立ちそうな機能が追加されている。
iBooks Storeには新たに「iBooksテキストブック」のカテゴリが追加され、PearsonやMcGraw Hill、Houghton Mifflin Harcourtなどの大手教科書出版社がパートナーとして参加、電子教科書を並べている。紙で刊行しているタイトルの90%ほどが並ぶといい、価格も14.99ドル以下とかなり安価な価格設定だ。大手教科書出版社に肩を並べ、今回4点児童教育書をリリースしているDK Publishingの存在も見逃せない。
iBooks AuthorはKeynoteとPagesの中間に位置づけられるような電子書籍制作ソフト。文字はもちろん、動画や3Dオブジェクト、Keynoteのプレゼンテーションなどのインタラクティブな要素もドラッグアンドドロップで配置するだけという手軽さと、必要であればカスタムウィジェットでJavaScriptやHTMLを記述してプログラマブルな電子教科書を作ることができる。
iBooks AuthorのファイルフォーマットはEPUB 3をベースに一部独自タグを追加した「.ibook」。日本語コンテンツの作成も可能だが、「右開き」「縦書き」「ルビ」など、EPUB 3でサポートされた日本の複雑な組版ルールの多くは、現時点のiBooks Authorではサポートされていない。EPUB 3やAdobe InDesignのデータが正しくインポートできるとさらに人気を集めそうだ。
iBooks Authorで制作したコンテンツを販売する際の留意点
なお、iBooks AuthorはiBooksアプリでの閲覧・販売を想定した制作ソフトという位置づけで、iBooks Author上で制作したコンテンツは基本的にiBooks Storeでしか販売できない使用許諾契約となっていることに注意したい。iBooks Authorは.ibookのほかPDFで出力できるが、それをAppleが提供する電子書籍ストア以外で売ることは(契約上)できない。特に、現時点で日本ではiBooks Storeがスタートしていないので、制作したコンテンツの流通には課題が残る。
国内でiBooks Authorの競合となりそうなものを強いて挙げれば、ジャストシステムが2月に発売する「一太郎 2012 承」がある。こちらは縦書きなどの日本語書式も強力にサポートし、EPUB 3での出力にも対応、パブーと連携して出版プラットフォームを結びつけようとしている。
iBooks Authorは事前の予想にあったEPUB 3のオーサリングソフトではなかったが、これだけの機能を備えたオーサリングソフトが無料というインパクトは絶大だ。
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