骨太スペースオペラ、開幕――「星界の紋章」がWeb漫画に:胡瓜の「このWeb漫画読もうぜ!」第6回
星雲賞に輝いたSF小説「星界の紋章」のコミカライズが「FlexComix Web」でスタート。SF漫画を得意とする米村孝一郎氏が、持ち前の密度の高い描写で壮大なスペースオペラを描く。骨太なWeb漫画を求めている読者にオススメしたい作品だ。
作家・森岡浩之氏のSF小説「星界の紋章」のコミカライズが、フレックスコミックスのWeb漫画サイト「FlexComix Web」で始動した。1996年の発表後、日本のヒューゴー賞ともいえる星雲賞を受賞した「星界の紋章」――1999年にはアニメ化もされて人気を呼んだこの一大スペースオペラに、SF漫画を得意とする米村孝一郎氏が新たな息吹を吹き込んでいる。当時からのファンはもちろん、同作をしらない読者にもオススメできるWeb漫画だ。
作品の舞台となるのは、人類が太陽系外にも入植するようになった遠い未来の世界。少年ジント・リンの惑星が異民族アーヴから侵略を受ける場面から物語は始まる。ジントは政府主席だった父の“取り引き”により、地上人でありながら「アーヴによる人類帝国」の貴族として生きる運命を背負わされる。軍の養成学校に入るため帝都に向かうジントを迎えたのは、アーヴの皇帝の孫娘ラフィールだった。
漫画を描く米村氏はゲームのメカニカルデザイナーとしても知られており、メカの造形や緻密な描写はさすがの一言。冒頭から迫力のあるカラー表紙で読者をSFの世界にいざなってくれる。
とはいえ見所はメカだけではない。ファンタジックな雲の描写や瞳にパワーを感じるキャラクター、そしてトーンを多用した密度の高いコマの数々――どちらかといえばライトな絵柄の多いWeb漫画において、米村氏の骨太な画風はむしろ新鮮に見える。士郎正宗氏の漫画のような“ごちゃっとハードな描写”に飢えていた読者には、特に推薦したい。
第1話は全58ページとボリューム十分。しかも“運命の出会い”の瞬間で終わっており、読了後のウズウズが止まらない。月1ペースでの掲載を予定しているとのことで、次回更新は6月後半になる見込み。サイトの更新情報を見逃さないようにしたい。
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