電子書籍にいまだに活用されるPDF
PDFが登場してどれくらいたつだろう。EPUBなど新しいファイルフォーマットが登場した今でも、強い存在感を放つPDFだが、それはなぜなのか。
最古の文書ファイルフォーマットの1つ、PDFはAmazon、Barnes & Noble、Koboが電子書籍のファイルフォーマットに独自ファイル形式やEPUBを利用している昨今、もはやそれほど一般的ではない。大手パブリックドメインサイトでPDFがまだ活用されているかどうかを調査してみたところ、以下ような結果だった。
- Project Gutenberg:サイト上でPDF形式の電子書籍は見つからなかった。存在するのかもしれないが、無差別に30冊分ほど確認してみたところ、見当たらなかった。
- Manybooks:通常版、大型版のPDFファイルが存在する
- Feedbooks:PDFは『ほかの形式』としてリストされており、ダウンロードにはユーザーによるカスタマイズが必要
MobileRead Wikiにある電子書店リストを見ると、ほとんどの電子書店でPDFが入手可で、PDFのみとしている電子書店も一部確認できる。SmashwordsもいまだにPDFを提供しているが、『PC上あるいは印刷後の読書に適する』としている。ズームしたりテキスト形式を変更したりする際に問題が生じる可能性があるPDFが今でも非常に多く利用されていることに筆者は少し驚きを隠せない。EPUBなどほかのフォーマットと比較して、上述した電子書店でPDFファイルはどれほどダウンロードされているのだろうか。もちろん、これらのサイトはほとんどがテキストのみの電子書籍を扱っている。しかし、テキストとイメージが混在している場合はどうだろう。
O'Reillyのような先進的な出版社ですら、PDFを『紙版書籍を忠実に再現する』ものとして提供している。これはテキスト以外の要素が含まれる一部の書籍に対しては筋が通っている。テキストとイメージが混在する書籍がEPUB 3で楽に作れるわけではなく、ビューワ側のEPUB 3対応もばらつきがある。内部的にEPUB 2形式として取り扱っていたり、グラフィック、表、数式を適切にレンダリングできていないこともままある。従って、PDFは現時点で電子書籍リーダー開発という文脈ではいまだに唯一普遍的な形式といえる(問題も存在し、例えばO'Reillyはどのソフトウェアを利用すべきか幾つか注意書きをしている)。
多くのベンダーはいまだに雑誌をPDF形式で提供しているが、それは予想通りのことで、PDFは雑誌に理想的ということだ。PDFはいまだに利用されており、(少なくとも技術、学術、雑誌領域で)消滅する兆候はしばらくない。ハードウェアベンダーが協力すればPDF利用はさらに衰退するだろうが、このフォーマット自体はいまだに一定の状況下では変わらず便利なままだ。
関連記事
- 電子出版の難問――HTML5かEPUB 3か?
EPUB 3とHTML5、そのどちらが電子コンテンツを配信するフォーマットとしてふさわしいのか - 米BISG、EPUB 3を標準の電子書籍ファイルフォーマットとして公式推奨へ
米国の出版業界調査団体Book Industry Study Groupは、米国の出版業界向けに電子書籍ファイルフォーマットとしてEPUB 3を今後推奨していくことを発表した。 - 一番優秀なEPUB3ビューワアプリはApple「iBooks」、米BISGが比較シートを公開
米Book Industry Study Groupは、米国で使われている主要な電子書籍ビューワアプリがEPUB3にどの程度対応しているのかを比較調査したファイルを公開した。
関連リンク
Copyright© 2015 Good E-Reader. All rights reserved.
(翻訳責任について)
この記事はGood E-Readerとの合意の下でアイティメディアが翻訳したものです。翻訳責任はアイティメディアにあります。記事内容に関するお問い合わせは、アイティメディアまでお願いいたします。