市場にもたらされた専用デバイスの洪水が電子読書の到来を促したことで、読書コミュイティーは、電子読書を取り入れたグループと、かたくなに紙にこだわるグループにほぼ二分されたように感じる。前者のグループは電子書籍リーダーの携帯性と保管性の高さを称賛し、後者のグループは製本された本の体験に勝るものはないという。
レーチェル・アーロンズ氏がThe New Yorkerに寄稿した記事は、紙書籍の実際の価値だけではなく、モノとしての美しさを大事にするいわゆる“本フェチ”との違いについて論じている。これらのコレクターをその名がほのめかす――プリントメディアの病的フェチ――通りに片づけてしまうのは簡単かもしれないが、実際には彼らが書籍業界の原動力となっている。
アーロンズ氏が指摘するように、古本の匂いをベースにした香水や電子書籍リーダーを本のような匂いにするスプレーなど、これらのファン向けのニッチな市場は確実に存在する。集積された本の素材からなる作品や、壁を本で装飾するギャラリー作品など完全なアートジャンルも存在する。
より多くの消費者が電子書籍の価格と利便性に目を向けているので、紙の本フェチはいずれ絶えてしまうかもしれないが、出版業界はいまだに市場が紙書籍のファンに動かされていると感じている。幾つかの調査から電子書籍革命を取り込んだ消費者からの回答が引用されているが、彼らは子ども向けには紙書籍を選択しており、子どもが本に触れ、読書への愛情を育んでほしいと述べている。一部の消費者が紙書籍に置いている価値は、紙書籍と電子書籍の価格はどうあるべきかという進行中の論争にも残っている。
ディスプレイ技術が発達し、タブレットがページ送り効果を非常にリアルに再現できても、業界ウオッチャーが数年前から予言していることは真実であり続けている。紙・電子書籍を問わず、それらが死を迎えることはなく、いずれのフォーマットも消費者の気持ちと財布をつかんでいる。
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