Amazonの新型タブレット端末「Kindle Fire HDX 8.9」を使ってみた:革新はその手に?(2/2 ページ)
革新をその手に――そんなキャッチコピーで発売されたAmazonの新しいタブレット端末。その上位モデル「Kindle Fire HDX 8.9」の実力をリポート。
他の電子書店の対応状況は?
Kindle FireシリーズのAmazonアプリストアでは、ほかの電子書店アプリはいまだに扱われていない。Amazon Androidアプリストアに載っているアプリでも、Kindle Fireシリーズではダウンロードできないのだ。とはいえ、基本的にAndroidアプリとは互換性があるため、apkファイルがあればインストールは自己責任で行うことはできる。その場合、[設定]の[アプリケーション]から、「不明ソースからのアプリ」をオンにした上でインストールすればいい。
新モデルに搭載されているWebブラウザは、これまでのKindle Fire シリーズ同様、WebKitベースの「Silk ブラウザ」。他の電子書店のブラウザビューワ対応状況を確認したところ、Yahoo!ブックストア、eBookJapanは非対応、ニコニコ静画(電子書籍)は要Flash Playerで利用不可。BookLive!は利用可能だったが、横向き時に見開き表示にはできなかった。縦向きであれば閲覧に問題はない。
Kindleストアの利用は?
次に、端末からKindleストアを利用してみよう。ホーム画面の[お買い物]メニューを開くとAmazonストア全体のトップ、デジタルストアの[本]を開くとKindleストアだ。また、ホーム画面などの検索欄からキーワードを入力すると、Web、Kindle本、アプリストアなどから候補がサジェストされる。各ストアの検索欄であれば、そのストア内だけが検索される。[Amazonでお買い物]からは、Amazon.co.jpで通信販売ができる。
これまでのKindle Fireシリーズと同様、ストアの検索結果一覧では、購入済みコンテンツかどうかの判別ができない点に不満が残る。詳細画面を開けば、未購入のコンテンツは[¥××で購入]ボタン、購入済みのコンテンツは[今すぐ読む]ボタンが表示されるが、検索結果一覧ではどの本が購入済みか分からないのだ。
詳細画面の書誌情報は、PC Webに比べると少な目。書影が以前よりやや小さく見えるのは、画面解像度が上がったのに対し画像サイズは変わっていないからだろう。文字も相対的に小さくなり、拡大もできない。ストアのアクセシビリティという点にも配慮してほしいところだ。
購入は非常に簡単。1タップで即座に購入し、ダウンロードも自動。誤ってタップしてしまった場合の注文キャンセル機能もある。ただ、続刊のあるシリーズ書籍を購入しようと思った場合に、1巻づつ開いて購入しなければならない面倒さは相変わらず。いわゆる「シリーズまとめ買い」的な機能が待たれる。
読書時のインタフェースは?
タッチパネルの操作はこれまでのKindle FireシリーズやAndroidアプリ・iOSアプリとほぼ同じで、画面中央をタップで上部にメニュー表示、下部にスライダー。左側をタップでページめくり、右端タップで戻る操作。
上部の[表示]メニューからは、フォントの大きさや種類、行間や余白の調整、背景色の変更などができる。フォントの種類は筑紫明朝が追加され3種類になった。
[メモ][シェア][ブックマーク]の機能はこれまでと変わっていない。[移動]アイコンはメニュー一覧から姿を消し、メニューを開いた状態から左上の三本線アイコンをタップすることで表示される。同期や書籍の情報、目次もこの中だ。
文章を表示した状態からタップ&ホールド(長押し)で範囲選択、指を離すとメモ・ハイライトなどのオプションメニュー表示や辞書機能。ハイライトは4色から選択できる。
続いて、コミックの場合もチェックしておこう。一点気になったのは、コミックを閲覧していると、ページめくり中にビューワが強制終了する場合があること。筆者が確認した端末固有の問題なのか、コンテンツに原因があるのかは不明だが、読んでいる途中で突然ホーム画面に戻され、最後に読んだ位置も保存されていない状態になった。
2560×1600ドットで339ppiという解像度はほかの端末と比べて頭ひとつ飛び抜けているが、問題は提供されるコンテンツがそれに対応しているかどうかだ。最近配信されているコンテンツは比較的高画質になってきているようだが、従来から配信されているコンテンツの大半は高解像度化による恩恵は少ないように感じる。正直、かえって画質の粗さが気になるほどだ。
まとめ
とにかく軽くて薄い、これに尽きる。長時間片手で持って読書をしても苦にならない。旧モデルは持ち運ぶのをためらう重さだったが、新モデルなら常時カバンに入れておいてもいい。 「Amazonのコンテンツ配信サービスを利用する専用タブレット端末」としては、これ1台で充分だろう。ここまで軽くなれば、複数の端末を使い分けする必要も感じない。
他方、オープンから1年以上経っても、Amazonアプリストアがあまり充実していない点はネック。筆者はGoogleのサービスに強く依存しているため、Googleのアプリが利用できないのは非常に辛い。これは、AppleのiPhoneやiPadを長く使ってきた方も同じだろう。裏を返せば、他社サービスを利用してきた資産がない(もしくは少ない)方で、今後もAmazonのサービスを中心に利用するという割り切り方ができるなら、ベストバイだ。
著者プロフィール:鷹野 凌
フリーライター。「日本独立作家同盟」呼びかけ人。ITmedia eBook USER、ダ・ヴィンチ電子ナビ、INTERNET Watch、マガジン航などに寄稿。ブログ「見て歩く者」で、電子出版、ソーシャルメディア、著作権などの分野について執筆。自己出版で『これもうきっとGoogle+ガイドブック』を1〜3巻まで配信中。
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