地元の書店へ行ってコミックや小説を購入する場合、わたしたちは所有権についてはっきりと理解できる。作品の代金を支払って家に持ち帰り、好きなように保存したり友達に貸したりできる。
一方、電子書籍と電子コミックは全体の状況がより複雑で、99%は購入した本の所有権を持たず、単に使用を許諾されているだけである。
DRM(デジタル著作権管理)を設定しているAmazon、Barnes & Noble、Kobo、Sonyなどの企業はサービス契約やライセンス契約に、顧客はタイトルの所有権を実際には保有しないとはっきりと記述している。
2012年のこと。リンという名で認識されているノルウェー人女性のAmazon顧客が事前の警告や説明もなくKindleへのアクセスを取り消された。彼女のアカウントは閉鎖され、Kindleはリモートで初期化された。これにより彼女が購入した作品は単純に消失した。
Comixologyのような多くのオンライン小売業者はコミックブックを販売しているが、購入作品はクラウド上に保存されている。もしサーバが落ちたり同社が倒産すれば、2000万人以上のユーザーがアクセスできなくなるだろう。2013年に閉鎖されたJMangaはクラウドとアプリ内にのみ存在した。サイトが閉鎖されると、コミックを購入した人は作品を読めなくなった。
電子書籍・電子教科書・電子コミック・電子マンガの所有権が存在しないのは書籍のさらなる電子化を進める障害の1つとなっている。DRMのような暗号化は海賊版を防止するために設けられた障壁だが、購入者にとってはやや利便性を欠く。多くの企業は電子書籍の貸し出しを提供していないので、友人に作品を貸し出すのは不可能だ。巨大なライブラリを保有していて新たな国へ移動する場合、自分のアカウント全体が閉鎖され、すべてのタイトルが消失するリスクを犯している。
一部企業はユーザーの利便性を少々ながらも向上させようとしている。ハリー・ポッターのオンライン書店、PottermoreはDRMを廃止し、電子透かしを利用している。サイエンスフィクションの出版社TORもDRMを廃止し、ユーザーが書籍の完全なコピーを自分のコンピュータにダウンロードできるようにし、サードパーティー製の電子書籍リーダーで読めるようにした。
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