日本電子出版協会は12月18日、「第8回 JEPA電子出版アワード」の大賞選考会とジャンル賞表彰式を日本教育会館で行った。
日本の電子出版物の育成と普及を目的に2007年から実施されている同アワード。2013年からは、電子出版関連メディアの関係者が選考委員を務め(編注:eBook USER西尾も選考委員を努めた)、ジャンルの選定とエントリー作品の選考を担当している。昨年は大賞に「でんでんコンバーター」が選出されていた。
今年は「デジタル・インフラ賞」「スーパー・コンテンツ賞」「エクセレント・サービス賞」「チャレンジ・マインド賞」「エキサイティング・ツール賞」の5部門で35のサービスや作品、ツールなどがノミネートされていた。各部門の受賞は以下の通り。
ジャンル | ジャンル賞受賞 |
---|---|
デジタル・インフラ賞 | dマガジン(NTTドコモ) |
スーパー・コンテンツ賞 | 少年ジャンプ+(集英社) |
エクセレント・サービス賞 | たびのたね(JTBパブリッシング) |
チャレンジ・マインド賞 | 絶版マンガ図書館(Jコミ+赤松健) |
エキサイティング・ツール賞 | 青空文庫POD(インプレスR&D) |
各ジャンル賞を受賞した中から、来場者が投票で大賞を決める形式となっており、この結果、大賞には「たびのたね」(たびたね)が選出された。たびのたねの何が注目されたのかについては、以前eBook USERでお届けしたインタビュー記事「ソーシャルDRMに合本機能――JTBパブリッシング「たびのたね」はこうして生まれた」をご覧いただきたい。
表彰式にはJTBパブリッシングの井野口正之氏(執行役員 情報戦略部長 情報戦略部企画課長)と村上祐介氏(情報戦略部企画課)が参加。
「(JTBパブリッシングが)電子出版を初めてまだ数年だが、こうした賞をいただけてうれしい。いままで紙だったものがデジタルになることでもっと自由にいろいろな試みができる。ささやかではあるがそうした試みの1つ」と井野口氏。村上氏も「“旅行ガイドブックにイノベーションを起こす”という思いに共感くださった全国の出版社の皆さまなどのご協力あってのこと」と謝辞を述べた。所用で参加できなかった青木洋高氏(情報戦略部企画課 課長代理)のビデオメッセージも来場者の投票に影響を与えたようだ。
チャレンジ・マインド賞を受賞した絶版マンガ図書館は漫画家の赤松健氏が登壇。海賊版への対抗も視野に入れ広告付きの無料公開をJコミとして始めてから数年。その取り組みにはほかの漫画家の参加も増えている。「(チャレンジ・マインド賞は)まだ成功してないけど、チャレンジしている要素が多いってことかな?」とユーモアを交えて話すが、果敢なチャレンジを継続して続け、それが結実しているのは明らかだ。
また、2014年はさまざまなマンガアプリの話題で持ちきりの1年だった。そんな中でスーパー・コンテンツ賞を受賞した少年ジャンプ+。授賞式で集英社、週刊少年ジャンプ副編集長の細野修平氏は、現在250万ダウンロードを達成した少年ジャンプ+の展望を次のように述べた。
「(少年ジャンプ+の)2015年の目標は、1000万ダウンロードを目指したい、というのではなく、“天才”を探すこと。紙のサイマル配信が最終目的ではなく、デジタルの才能を探すのが編集部の本音。(少年ジャンプのサイマル配信で)まず人を集め、集めた人に向け、自分の作品を発表(少年ジャンプルーキー)できるようにした。来年はそこから才能のある作家を発掘し、育てていきたい」(細野氏)
選考委員特別賞は「BiB/i」「近代デジタルライブラリー」
このほか、選考委員特別賞としてEPUBリーダー「BiB/i」を開発する松島智(まつしまさとる)さん、近代デジタルライブラリーで国立国会図書が選出された。
普段はWebデザイナーをされている松島さん。BiB/iの開発経緯について、「僕が本から得た知識や体験は、書かれた言葉だけの力ではなく、その周りにある組版や編集など“デザインの力”が多いと気づき、言葉を対象としたデザインの仕事をしたいと思うようになっていった。本を作りたいという気持ちと、仕事として続けてきたWebデザインとが幸せな形で合流したのが電子出版であり、EPUBでした」と話す。
「BiB/iはEPUBリーダーではありますが、落ち着いて本を読むためのものというよりも、本を誰かに届けたい方のための公開のための出版ツール。(BiB/iは)インターネットと電子書籍を1つにつなげるツール。出版・印刷などいろいろな方面とインターネットが手を取り合って面白いものが作っていけたらと思う」(松島氏)
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