記事で振り返る「2014年の電子書籍市場」(マンガアプリ編)
2014年も今日が最後。2014年の電子書籍市場で起こったトピックの中から、eBook USERが今年その動向を注視していたものを振り返ってきましたが、最後はマンガアプリについてみてみます。
2014年も今日が最後。2014年の電子書籍市場で起こったトピックの中から、eBook USERが今年その動向を注視していた「Webマンガ、無料コミックアプリ」「定額読み放題」「電子図書館」「書店連携」「セルフパブリッシング」「権利関連」について振り返ってきましたが、「Webマンガ、無料コミックアプリ」を取り上げます。
Comicoと少年ジャンプ+
振り返ってみると、2014年に休刊を発表した漫画誌はざっと並べても『ジャンプ改』『月刊IKKI』『月刊少年ライバル』『マンガ・エロティクス・エフ』『チャンピオンREDいちご』『別冊漫画ゴラク』『電撃HIME』『まんがくらぶオリジナル』『ひらり、』『わぁい!』など。月刊IKKIの休刊には驚きの声が多く上がりました。
こうした中、2013年から2014年にかけては、マンガボックスやComicWalker、Comicoなど無料読み放題のコミックアプリが多数登場。年の中ごろにはComicoの勢いが、年末にかけては少年ジャンプ+の勢いが目に付きました。
Comicoがユニークなのは、出版を専業としないことを逆手に、スマートフォンに特化した表現を積極的に打ち出している点です。スマホに合わせた縦スクロールや全作品フルカラーなど、既存の出版に拘泥せず、スマホ時代のマンガを1から作り、成長させようとする「デジタルのトキワ荘」を志向し、それが目に見える変化を生んでいるのが注目されます。
NHN PlayArtの代表取締役社長の稲積憲氏にインタビューした6月以降もダウンロード数は伸び続け、12月22日には700万を突破しました。6月が約300万だったことを考えると、半年ほどで倍以上になっています。
人気作の『ReLIFE』は紙のコミックスとしても刊行され、版を重ねる売れ行きを見せているほか、『保留荘の奴ら』『ナルどマ』『咲くは江戸にもその素質』『ネト充のススメ』などの人気連載も今後刊行予定です。
こうした無料コミックアプリは、会員登録も不要で、全作品無料というのを起点とすることで、有料コンテンツの購入という特に若い世代には高いハードルとなりがちな部分をうまく避け、しっかりとファンを増やしているようです。
一方、集英社が9月にリリースした「少年ジャンプ+」は単に週刊少年ジャンプのサイマル(紙と電子の同時)配信を行うだけでなく、ジャンプ作品の復刻連載やスピンオフなどを無料で提供する2本立てのアプリ構成です。ジャンプが持つ資産を惜しみなく投入し、紙離れ、あるいはジャンプ離れを起こしていた層を獲得していこうとする積極さが伝わってきます。新たな才能をデジタルの世界から見つけようとする「少年ジャンプルーキー」も応募が伸びているようです。
数年前にはまだ遠い先のことだと思っていた週刊少年ジャンプの電子配信も始まり、ジャンプブランドの下にコンテンツを集める動きが出てきたことで、いわゆる電子書店で配信される電子書籍や特定作品を無料読み放題にするアプリとはまた異なる動きが、出版社から今後も継続的に起こるのだと予感させます。
少年ジャンプ+はすでに250万ダウンロードを突破し、ほかの少年週刊漫画誌の動向も注目されます。すでに『イブニング』や『アフタヌーン』『モーニング』などの漫画誌を電子版(またはアプリ)で配信してきた講談社も、1月5日にマガジンで何らかのアクションを起こすと予告していますし、アプリの領域ではここまであまり大きな動きをみせていない小学館や秋田書店も、2015年は同様の取り組みを見せるのかもしれません。ジャンプ、マガジン、サンデー、チャンピオンに変化の波がやってくるのでしょうか。まずはマガジンの動向に注目しましょう。
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