Gartner Column:第10回 企業間コラボレーションとは具体的に何を意味するのか?
| 【国内記事】 | 2001.08.06 |
ITの世界でコラボレーションと言えば,企業内におけるグループウェアの活用を思い浮かべる人が多いだろう。ところが,B2Bコラボレーションやサプライチェーンコラボレーションといったように,この言葉の適用範囲が企業間連携の世界にも広がっている。この企業間コラボレーションとは「具体的に」何を意味するのだろうか?
辞書的に言えば,コラボレーションとは,協業ないし共同作業ということである。グループウェアを活用して社員の共同作業を促進することで,社内業務を効率化するという意味の企業内コラボレーションについては,その意味するところも,メリットも明らかであり,改めて説明する必要はないだろう。その一方で,企業間コラボレーションについては,複数の企業が協業することだというのは明らかとしても,もうひとつイメージがつかみにくいのでないだろうか?
実は,基本的概念およびIT基盤という観点から言えば両者には共通点が多い。両者を比較してみることで,企業間コラボレーションについても理解を深めることができるだろう。
企業内コラボレーションを実現するためには,まず,当然のこととして,情報共有の仕組みが必要である。共有の対象となるものは,文書だけに限らず,データベース内の業務系データや技術部門であればCADデータなど多岐にわたるだろう。次に必要なものが,コミュニケーションの仕組みである。この仕組みは,単に上司が部下に通達を出すという一方的なものではなく,双方向かつリアルタイムなものであり,また,必要に応じて組織の枠組みを越えられなければならない。さらに,ワークフロー管理の仕組みが必要である。ワークフロー管理とは,簡単に言えば,従来であれば,文書で規定されたり,担当者の間で暗黙的に決まっていたような業務手順をシステムで管理することだ。
この情報共有,双方向/リアルタイム/Any-to-Anyのやり取り,そしてワークフロー管理という3つの要素は,企業内コラボレーションであっても企業間コラボレーションであっても共通だ。
企業間コラボレーションの典型的例としては,ウォルマートなどの米国の大手スーパーで既に活用されているCPFR(Collaborative Planning Forecasting & Replenishment)という方式がある。簡単に言えば,流通会社が自社の在庫情報や売り上げ情報をメーカーと共用することで,両社が共同で需要予測を行うというアイデアだ。例えば,メーカーが今まで推定するしかなかった売り上げ情報を入手できるようになることで,より正確かつ長期的な生産計画を実現でき,結果として在庫を極小化することが期待できる。もちろん,現実のビジネス環境で,CPFRを実現するためには,情報共有に加えて双方向通信やワークフロー管理も必要となることは言うまでもない。
企業の境界を越えた情報共有により,流通とメーカーが協業して,サプライチェーン効率化という目標を達成するというこのような発想は,流通は単にメーカーに発注して,メーカーはとにかくその注文の納期を厳守すればよいという従来の関係からの大きな飛躍である。
企業間コラボレーションにより,企業がこのような主従の関係から離れて対等なパートナーとなることで,全体の最適化ができるということは,企業内コラボレーションにより,社員が組織の枠を越えた協業を行なうことで,企業が,上司と部下が階層的につらなった軍隊型の組織から脱却し,企業全体の資源を有効活用できるようになることに似ている。
また,LANの普及が,企業内コラボレーションを現実的にしたように,インターネットの普及が企業間コラボレーションを現実的にしたと言うこともできるだろう。第2回でも述べたように,今や,世界中の企業は「つなごうと思えば,いつでもつなげる状態」になっているからである。">
こう考えてみると,一見,あまり関連性がないように見える企業内コラボレーションと企業間コラボレーションは,きわめて類似の概念であると言える。企業内コラボレーションの強化による価値を認めない人がいないのと同様に,企業間コラボレーションが将来的に生み出す価値を認めない人はいないだろう。これが,SCM,ERP,B2B ECなどのアプリケーションベンダーが,こぞって企業間コラボレーション向けの機能を強化している理由である。
ガートナーは,サプライチェーンのコラボレーションとe-マーケットプレースによる(そして,将来においては,Webサービスによる)企業間のダイナミックな連携から生まれる新たなビジネス形態をC-コマース(コラボレーティブコマース)と呼んでいる。ガートナーは,2004年までに,C-コマースが従来型の固定的なサプライチェーンを置き換えると予測している。
このあたりの話は,既に知っている人にとっては何を今さらかもしれないが,意外と理解されていないことが多いので,あえて今回の話題としてみた。もちろん,現実世界の企業間コラボレーションには,さらに複雑な要素が必要となるが,組織の境界を越えた情報共有,双方向/リアルタイム/Any-to-Any通信,ワークフロー管理が重要であるという点は変わりがない。
次回(夏休みをはさんで来々週)は,また話題が跳ぶが,第9回で紹介したところ,結構反響が大きかったSemantic Webについて触れる予定である。
[栗原潔 ,ガートナージャパン]
