近くて遠いLiberty AllianceとPassportの距離
| 【海外記事】 | 2002.2.20 |
サンノゼ・コンベンションセンターで開催されているRSA Conferenceの会場で,ユーザーIDの統合をめぐって対立する2つの構想が相対することになった。
2月19日に行われたゼネラル・セッションの1つ,「Managing Online Identities(オンラインIDの管理)」では,「Passport」を擁するマイクロソフトとLiberty Alliance陣営によるディスカッションが行われた。
PassportもLiberty Allianceも,最終的に目指すところはほぼ同じだ。ユーザーが,Webサイトやサービスごとに異なるアイディンティティ(ユーザーID)を使い分けるのではなく,一元的に,それもさまざまな場所やデバイスからシームレスに本人確認と認証・アクセス制御を行えるようにすることが目的である。
マイクロソフトのPassportはWindows XPやHotmailで利用されており,活用度はともかく,2億人以上のユーザーを獲得している。セキュリティホールの存在は気にかかるが,現実にサービスとして提供されている点で,一歩先んじているとも言える。
一方Liberty Allianceは2001年9月に,サン・マイクロシステムズのほかシスコシステムズやNTTドコモ,RSAセキュリティ,ソニーなどによって結成されたアライアンスだ。顔ぶれから分かるとおり広範な分野から参加があり,モバイル機器や家庭用機器も含め,効果的な統合IDシステムを実現するものと期待されている。ただ,Liberty Alliance準拠で実際に利用できる製品やサービスはまだどこにも存在していない。
このようにそれぞれ一長一短の陣営によるディスカッションの結果,明らかになったことは2つあった。1つは,双方とも「オープンな標準」や「相互互換性」が重要であり,それが消費者の望むことだと認識もしていること。もう1つは,にもかかわらず,PassportとLiberty Allianceの相互接続,あるいは統合が実現されるのは,まだしばらく先のことになるということだ。
ディスカッションには,マイクロソフトからは.NETコアサービスプラットフォームグループの上級副社長,ブライアン・アーボガスト氏が参加。また,Liberty Allianceからはサン・マイクロシステムズの最高戦略担当者,ジョナサン・シュワルツ氏に加え,同アライアンスに参加しているAOL,ユナイテッド航空からそれぞれジョン・ポール氏(Webプロパティプロダクトグループ担当上級副社長),エリック・ディーン氏(CIO:最高情報責任者)が参加した。
マイクロソフトのアーボガスト氏は,「われわれは相互互換性を重視している。Liberty Allianceとの相互互換は,顧客が望んでいることであり,またわれわれにとっても機会を広げてくれるものだ」とし,近い将来,Liberty Allianceをサポートしていく可能性を示唆した。またサンのシュワルツ氏も,「われわれはけっして,(Passportに)敵対しようと考えているわけではない」と語った。
だが司会者に「ではいつ,(相互互換が実現され)ユーザーにとってインターネットが使いやすいものになるのか?」と水を向けられると,シュワルツ氏の言葉は歯切れがやや悪くなった。「技術的な問題以外に,ビジネスも検討しなければならないことがある。実現までには,まだしばらく時間がかかるのではないかと考えている」とし,さらに「われわれは常にオープンな標準を重要視している。いずれにせよ大事なことは,信頼でき,しかも拡張されたサービスを,ユーザーが便利に使えるようにすることだ」と語った。
目指すゴールは同じながら,この2つの認証システムの間の距離は縮まるようにはみえない。
今年半ばにはフレームワークを
この日の午後,Liberty Allianceは,アライアンスに新たに11社が加わり,総勢38社が参加したことを発表した。
発表会の席上,午前中のディスカッションにも参加したユナイテッド航空のCIOであり,Liberty Allianceプロジェクトの会長も兼ねるエリック・ディーン氏は,おおまかながら同アライアンスの今後のロードマップを語った。
「ばらばらのアカウントをリンクさせ,分散している認証システムを統合するため,われわれは最初のステップを踏み出したところだ。目標は,まず商用サービス向けのフレームワークの標準を作り上げること。もう1つは,サービスや各技術が利用できるインタフェースを作成すること。このうちフレームワークについては,今年半ばくらいまでに作成したい」(ディーン氏)
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| おぼろげながら今後のロードマップに触れたディーン氏 |
同氏はまた,Liberty Allianceのターゲットとして,コンシューマー向けのサービスだけでなく,企業内システムも視野に入れていると述べた。「多くの場合,所属しているのは1社だけなのに,ユーザーは複数のアカウントを使い分けなければならない。ディレクトリと組み合わせることで,これらを一元化し,互換性のあるプラットフォームを提供したい」(ディーン氏)
なお,ディーン氏もPassportとの競合については「重要なのはアイデンティティの統合であって,競合が目的ではない。目的はあくまで電子商取引やサービスを推進することだ」と述べている。
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[高橋睦美 ,ITmedia]

