i2のSCP採用で受注リードタイムの大幅削減を達成したアディダス

【国内記事】2002.4.24

 4月23日,i2テクノロジーズのプライベートショウ「i2 PLANET 2002 TOKYO」のインダストリーセッションに,アディダス・インターナショナルでグローバルサプライネットワーク担当シニアマネジャーを務めるサーディ・マズーブ氏が登場し,同社がi2のSCP(Supply Chain Planner)を導入して,グローバル・サプライチェーンの構築を実現したことを紹介した。

 アディダス・サロモンは,ドイツのフランクフルト近郊に本社を置く大手スポーツ用品メーカー。現在世界各国に100以上の子会社を抱えており,グローバルで1万4000人以上のスタッフを抱える大企業だ。世界952カ所の工場から出荷される製品は,年間2億2510万点以上で,2001年度には61億ユーロの売り上げを達成している。なお,アディダスジャパンは,同社の子会社のひとつだ。

サプライチェーン管理における課題

 アディダス・サロモンでは,受注から正式な納期回答までのプロセスに2〜3週間を要していた。これは,プロセスに複数の業者が介在するにも関わらず,情報を統合管理するシステムがなく,多くの無駄な作業が発生していたためだ。

 例えば,靴の注文の場合,小売業者が受けた注文情報は,まずローカルの子会社に渡される。その子会社内での処理を経て,世界に3拠点ある顧客サービスデスクに注文情報が伝わると,また社内処理が発生してしまう。そこを経て,米国ポートランド州にある中央の処理センターに伝えられるのが,初めに小売業者が受けたそのままの情報であるにも関わらず……。

 ここからも長いプロセスを経ることになる。同センターはまず,靴のスタイルおよび色の在庫チェックを行う。チェックを通過した注文情報は,支社を経由してから,工場への照会へと繋がる。注文に合った在庫がなければ,ここではじめて原材料を発注し,靴型の製作を行うことになってしまっていたのだ。

 この分断された処理では,エンドユーザーにおおよその納期しか伝えることができず,その結果として顧客満足度が低下してしまう懸念もあった。ライバルに顧客を奪われないためには,リードタイムを可能な限り短縮することが同社の至上命題となったのだ。

「価格で競争する時代はもう終わりを告げた。顧客が求めている商品を一日も早く届ることが,何よりの顧客サービス向上につながると考えた」(マズーブ氏)

 そして同社は,リードタイムの短縮を妨げる要因をあらゆる角度から洗い直し,以下のような課題があることを認識した。

  • 各工場の生産能力を把握できていない
  • 世界各地に分散している在庫情報を一元管理できていない
  • 注文における各プロセスがすべて人手を介して行われているため,同じ内容の確認作業が重複して行われている
  • MOQ(最小注文可能数)の確認が手作業で行われているため,非常に時間がかかる
  • 複数のITシステムが統合管理されていない
  • 情報の分散がネックとなって,下流の需要予測が困難となっている
  • 複数のリードタイムを並行して検討することができないので,刻一刻と変わる需要にこたえることが困難

i2ソリューションの採用

 アディダス・サロモンでは,このような課題を解決するために,より高度な管理システムが必要であると考えた。当初は,ボトルネックを見つけてはその都度対策を講じるという手段も検討されたが,将来的なコスト効率の面から,コアシステムに手を入れることを決断したという。

 同社は,3カ月をかけてソフトウェアベンダーを選定し,i2の採用を決めた。

「製品の持つ機能はもちろん,安定性やベンダー自身の認知度や将来性,競合企業における導入実績なども詳細に検討した。その結果,戦略的パートナーとしてi2を選ぶのが最適という判断に至った」(同氏)

 既存のプランニングシステムとi2製品を統合する導入プロジェクトは, 2001年6月からスタートした。段階的カットオーバーを経て,2002年6月にフル稼働を迎える予定という。あえて全面刷新を行わなかったのは,既存のシステムに慣れているローカル拠点のユーザーに配慮したためだ。

 導入作業は,フットウェアラインの制約管理,サイズの制約管理,型や色の管理,すべての製品のサイズ管理という4段階のビジネスリリース(i2が推奨する段階導入の手法)に分けて段階的に実施された。

 ほぼすべてのモジュールが稼動している現時点で,同社が得られた効果は以下のとおりだ。

  • 注文確定期間の短縮(2-3週間 → 1日)
  • 複数のリードタイムの並行管理を実現
  • 受注予測システムを活用して原材料の発注を前倒しすることにより,製造期間を3分の1に短縮
  • 受注予測,プランニング,在庫管理をすべてひとつのシステムで実現
  • 各工場の生産能力に応じた注文の分散・効率化
  • 従来は,手作業(電話やFAX)で行っていた情報の確認・更新作業に全体の3割以上の労力を費やしていたが, 新システムの導入により,8割以上の労力を純粋なプランニングにつぎ込める見込み
  • 将来のSCMへの基盤構築を達成。
  • 任意の期間における受注予測・プランニングの実施,物流のモデル化,在庫の正確な把握

プロジェクト成功要因と将来のシステム拡張計画

 アディダス・サロモンのプロジェクトを成功に導いた大きな要因のひとつは,段階的な移行プロセスの採用だった。リソースの再利用というメリットだけではなく,新しいシステムを段階的にエンドユーザーに露出すると共に,設計段階から彼らを参画させることにより,新システムへの抵抗感を払拭することに成功した。そして,同プロジェクトにおけるもうひとつの成功要因は,i2チームの協力にあったという。

「プロジェクトを実施する際に最も重要なのは,優れた戦略パートナーを獲得することだ。プリセールスから関与していたi2のスタッフがプロジェクト中心となってくれたので,導入が始まったときから,アディダスチーム以上にプロジェクトの内容を把握してくれていた。彼らの適切なアドバイスがなければ,予定通りのカットオーバーを迎えるのは非常に困難だったろう」(同氏)

 同社は,今後,今回のモデルをTier2のサプライヤー(サプライヤーの取引先)にも適用する計画だ。また,子会社や工場間での情報を可視化することで,一括オーダーの実現や工場からの製品出荷日,輸送期間を瞬時に把握できるシステムの構築も視野に入っている。

関連リンク

▼i2テクノロジーズ・ジャパン

[村上 奈保子 ,ITmedia]