TIの製造革新を実現したi2スタッフたち

【国内記事】2002.4.26

 4月23日,i2テクノロジーズのプライベートショウ「i2 PLANET 2002 TOKYO」のインダストリーセッションに,テキサス・インスツルメンツ(TI)でプランニングシステムを担当するマネジャー,マージ・ナムダール氏が登場し,同社がi2と共同で結成したMM(モデル・メンテナンス)チームを活用して,効率的な製造支援システムを構築したことを紹介した。

 TIは,テキサス州ダラスに本社をおく半導体企業。1930年の創業以来,モデム,携帯電話,ビデオ会議システムなど,ネットワーク社会に求められる包括的なデジタル・ソリューションを提供し続けている。特に最近は携帯電話分野に注力,ノキアと長年にわたる提携関係を築いており,世界唯一のノキア向け半導体サプライヤーでもある。商業,工業,消費財など,全分野における顧客数は現在3万以上に及び,世界28カ国の製造・販売拠点,そして50以上の工場から製品を供給している。2001年度には,82億ドルの売り上げを達成した。

製造支援システムにおける課題

 ナムダール氏は,「各工場を効率的に稼動させてリードタイムや余剰在庫を削減するためには,正確な製造プランをオンタイムで提供することが必須課題だった」と話す。しかし,同社にとって,世界各国に点在する工場の製造体制を正確に把握し,複雑に入り組んだ生産ラインを一元管理するのは非常に困難な作業であった。

 TIのシステム環境は複数のレガシーが組み合わさったものであり,それらが複雑にインタフェースされていた。

「さまざまなシステムを経由する業務を集中管理し,常に正確な情報をタイムリーに発信するということは,グローバルなオペレーションをひとつのインスタンスとして扱うことにほかならないという結論に至った」(ナムダール氏)

 TIは,こうした課題を解決するために,ソフトウェアソリューションを採用することを決め,さまざまなベンダーの製品を比較検討した。その結果,動的サプライチェーンの管理ソリューションにおけるリーディング・カンパニーであるi2を選択したという。

「ベンダー選定の際,機能や拡張性を考慮したのは言うまでもないが,何よりも重視したのは,お互いのビジョンを共有して,長期的な信頼関係を築いていけるかどうかという点だった」(ナムダール氏)

MMチームの結成

 TIではこうした複雑な課題を克服するための手段として,2000年初頭に,TIとi2両社のメンバーからなるモデル・メンテナンス(MM)チームを結成した。

 MMは,i2が提供する主要サービスのひとつであり,顧客システムの運営と保守をサポートするものだ。

「MMチームの最大の目標は,ミッションクリティカルなエンタープライズアプリケーションの運用とメンテナンスだった」(同氏)

 同チームのメンバーとして5人のi2スタッフがTIに常駐し,共同で問題解決に取り組んでいった。あえて常駐という形式をとった理由は,「TIではSCPの他にも, ADW(Active Data Warehouse), FP(Factory Planner),DP(Demand Planner)などのi2アプリケーションが導入されていた。製品そのものの知識だけではなく,各アプリケーションがTIの業務上で果たしている役割まで把握してもらうことが重要だった」(同氏)ためだ。

 このMMチームには,以下のような任務が課せられることになった。

・ 新たなカスタムビジネスモデルの構築。

・ i2製品のサポート

・ システム稼動時間の最大化に向けた,24時間×365日体制の製品サポート

・ 現行システムが抱えている問題点の早期抽出,優先度付け,および問題解決

・ 変更要求の文書化およびトラッキング

・ i2ソリューションの変更によって,サプライチェーンシステムや業務全体に与えられる影響の事前評価

・ 新機能追加時の,ITスタッフおよび業務担当者向けトレーニングの実施

・ ソフトウェア/ハードウェアのアップグレード実施

・ リードタイムの短縮に向けた,生産ラインの継続的な最適化

大幅な納期遵守率の向上

 グローバルに点在する拠点が蓄積したデータをベースとしてSCPが行うプランニング結果をFPに送り,FPで拠点ごとのロット製造数を決定するシステム「スタートプラン」を構築。あらかじめ決められた期限内に確実に納品できなかったのは,わずか2%以下になったという。なお,プロジェクト開始時には,納期遵守率90%が目標となっており,稼動後約1年にも関わらず,それを大幅に上回った形だ。

「スタートプランは,市場動向やその他さまざまな要因によって刻一刻と変化する。このため,常にアップデートし,正確なものをリアルタイムで提供する必要がある」(同氏)

 この仕組みが機能したことで,各製造拠点は,最新の製造計画を受け取れるようになった。需要動向が変化すれば,計画も即座に変更されるため,作業ロスの削減が可能になったという。

 また,製造ワークフローを最適化することによって,これまでは1日かかることもあったリードタイムを9〜10時間に短縮できた。同氏は,「将来的には,更に短縮できると確信している」と話している。

 問題発生時に,迅速に対処できるようになったことも大きな成果だ。例えば,初回のスタートプランで何らかの問題を検知した場合,2回目に計画を配信する前に,表面化した問題を解決できる。これで,製造拠点は,常に精度の高い情報を受け取ることができるようになった。

将来の計画

 TIでは,MMチームを今後も存続させ,アップグレードやサポートなどの業務に関与してもらう予定という。現状のスタートプランが最適なのかどうか,常に監視を続ける必要があり,現在のところ,MMチームでは,この分析業務にかなりの労力を費やしている。

 今後は,同チームが主導して現行のTIシステムに導入されているi2製品のアップグレードや,SCPの複雑性を緩和するための新たなプランニング手法の投入も検討するという。

 両社は,顧客向けの共同提案にも一層注力する予定だ。既に,大手顧客であるノキア向けに,TIとi2で共同開発したコラボレーションツールを開放するプロジェクトも完了したという。

プロジェクト成功要因

 ナムダール氏は講演中,i2との信頼関係を繰り返し強調した。

「ベンダーとクライアント間の強力な信頼関係を築き上げたことが最大の成功要因だ。MMチームが発足し,メンバーが席を並べているということが非常に重要な意味を持っていた」(同氏)

 i2のスタッフにTIへ常駐してもらうことで,より円滑な双方向の意志疎通が実現された。複雑かつ広域なプロジェクトを進めて行く上では,テクノロジーとビジネスの両方を理解することが不可欠だが,i2のメンバーは同プロジェクトに関するすべてのミーティングに参加し,TIが抱える問題点をより明確に把握してもらえたという。

「共同で作業を進めることにより,お互いの課題を指摘し合い,双方の強みを更に伸ばしていくことができたと考えている」(同氏)

 TIは,i2の創業者であるサンジブ・シドゥCEOが,エンジニアとして勤務していた企業でもある。こうした縁があってか,両社は,スタッフ間の個人的な友好関係を深めるために,食事会や映画鑑賞などといった,業務以外のイベントも積極的に実施していったという。

「信頼関係とは,実績があって初めて築き上げられるものだ。TIは常にi2に対して厳しい要求を突きつけてきたが,i2は確実にこたえてくれた。同様に,TIもi2の要求にこたえ得る成果物を作り上げてきた。他社のパッケージソリューションを導入する際にリスクが伴なうのは当然のことだが,我々はお互いに実績を重ねることによって,より強固な関係を保っていけると確信している」(同氏)

関連リンク

▼i2テクノロジーズ・ジャパン

[村上奈保子 ,ITmedia]