Yahoo!の元幹部――「こんなことになって残念だ」

Yahoo!の元幹部であるOpenAdsのCEOによると、MicrosoftとYahoo!をめぐる状況は個人的に残念なことであり、競争に悪影響をもたらすという。

» 2008年02月08日 11時41分 公開
[Clint Boulton,eWEEK]
eWEEK

 Microsoftは2月1日にYahoo!に対して446億ドルの買収提案を行ったが、業界はこれに対して複雑な反応を示している。

 Microsoftの動きは、インターネット市場でGoogleの挑戦者になるために必要なものだというのがアナリストらの見方だ。Googleは予想された通り、この取引に反対の意思を表明し、「Microsoftはデスクトップソフトウェア分野の独占をオンライン市場で再現しようとしている」と主張した。

 その一方で、この取引は、Yahoo!の凋落を示す残念な兆候であり、両社が合併すれば小規模パブリッシャーにとって競争の妨げになると指摘する声もある。

 Yahoo!のコンシューマー/ネットワークサービス部門の元マネージングディレクターで、現在は広告配信ベンダーのOpenAdsのCEOを務めるジェームズ・バイルフィールド氏が米eWEEKに語ったところによると、この取引は同氏のビジネスに悪影響をもたらすという。OpenAdsの顧客であるパブリッシャーにとって、広告を獲得するためのソースが1つ減ることになるからだ。

 100カ国余りの国々で3万社以上の中小パブリッシャーと提携しているOpenAdsでは、DoubleClickに代わるオープンソースの選択肢を提供している。DoubleClickはGoogleが31億ドルで買収しようとしている企業。

 OpenAds自体は広告ネットワークでもパブリッシャーでもなく、自社を広告配信の「中立国」として位置付けている。自分たちで広告在庫を管理し、どの広告を自社資産のどこに掲載するかを自分たちで決定したいと考えるパブリッシャーに訴求するためである。

 オンライン不動産の一等地をめぐって激しい競争入札が続いている状況の中で、広告ネットワークの巨大勢力が1つ減れば、これらのパブリッシャーの間に混乱が生じる恐れがあるという。

 バイルフィールド氏は2004年にSkypeに入社するまで、Yahoo!で電子メール、インスタントメッセージング、コミュニティー資産を担当していた。同氏は、「わたしの元雇用主がこんなことになったのは残念だ」と個人メモに記している。「Yahoo!は根本的な対策を講じる必要があり、ジェリー(・ヤンCEO)の復帰は、正しい方向に向けた一歩だ」。

 またバイルフィールド氏は、テリー・セメル元CEOも弁護している。アナリストの間では、Yahoo!が今日のような弱い立場になったのはセメル氏のせいだとする指摘もある。ヤン氏は昨年6月にセメル氏の後任としてCEOに復帰し、セメル氏は今年1月31日、代表権を持たない会長職に就任した。同日、Yahoo!はMicrosoftから買収提案を受けた。Microsoftが提示したのは、その時点でのYahoo!の株価に62%上乗せした金額だった。

 バイルフィールド氏によると、セメル氏とそのチームのスタッフは、2000年と2001年にYahoo!を揺さぶった広告業界の不況を乗り切るだけの指導力を持っていたという。

 「テリーは見事に会社を立て直した。彼はメディア型の人間だった」とバイルフィールド氏は話す。「Yahoo!で実現できなかったのは、メディア広告モデルに支えられた技術主導型のビジョンに向けた進化であり、Googleが推進しているのはそういったビジョンだ」。

 さらにバイルフィールド氏によると、たとえYahoo!を手に入れても、Microsoftがパッケージソフトウェアの巨大企業からソフトウェアとサービスのオンラインプロバイダーへの進化を遂げるのは容易ではないという。「彼らの既存ビジネスは極めて強力だが、オンラインモデルとはまったく異なる考え方に基づいて構築されたものだ」と同氏は指摘する。

 だがMicrosoftは異なる見解を抱いているようだ。同社のスティーブ・バルマーCEOは2月4日、財務アナリスト向けに行われた戦略発表の電話会見で、今後も広範なソフトウェアイノベーションを推進し、「ソフトウェア+サービス」企業を目指すつもりだと語った。

 バルマー氏によると、このインターネット「クラウド」(GoogleやMicrosoftなどがそう呼ぶようになってきた)の中で、ユーザーは今後も、WindowsやOfficeをはじめとする同社の多数のソフトウェアのオンライン版を基盤として利用することができるという。

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