おサイフケータイ+クレジットカードが歓迎される「もう1つの理由」神尾寿の時事日想

» 2005年04月28日 09時56分 公開
[神尾寿,ITmedia]

 4月27日、NTTドコモと三井住友フィナンシャルグループがおサイフケータイを利用したクレジットカード決済サービスで業務・資本提携した(4月27日の記事参照)。両社の狙いはレポート記事に詳しいが(4月27日の記事参照)、筆者はもうひとつ、「おサイフケータイ+クレジットカード」に注目すべきポイントがあると見る。

 それは「セキュリティ」だ。

 周知の通り、現在普及している磁気ストライプ型のクレジットカードはスキミング被害に遭いやすく、偽造カード事件が後を絶たない。また、古典的な窃盗被害によるクレジットカード不正利用の被害件数も増加傾向だ。警察庁の資料によると、キャッシュカード及びクレジットカードの不正利用被害総額は、平成16年1〜11月だけで24億9309万3千円。認知事件となっていない分を含めれば、この額はさらに大きくなるだろう。

 クレジットカードの場合、スキミングや盗難被害は「カード盗難保険」で補償されるケースが多く、キャッシュカードと比べればユーザー側の実害・実感は少ない。しかし、増加するスキミング・盗難被害によるクレジットカード会社の痛みは相当なものだ。

おサイフケータイが「もうひとつの選択肢」に

 セキュリティの観点で言えば、磁気ストライプ型のクレジットカードは問題が多すぎる。そのためクレジットカード会社では、不正利用がしにくい「ICカード+暗証番号」型クレジットカードの導入を急務としている。その流れの中に、おサイフケータイ+クレジットカードが入り込む余地がある。

 まず技術面では、おサイフケータイが採用する「モバイルFeliCa」は磁気ストライプよりも安全だ。ICカードと同等かそれ以上の安全性があると考えてよい。それは、これまでFeliCa技術がスキミング被害に遭っていない実績からもわかる。盗難被害にあった場合も、遠隔ロック機能がある分、カード型より被害を防げる機会があるだろう。

 運用面では、携帯電話の各種サービスは「暗証番号」の利用が一般化しており、おサイフケータイのクレジットカード機能を使う際に暗証番号を求めても、ユーザーは素直に受け入れられる可能性が高い。一方、ICカードは既存のクレジットカードの延長線上にあり、ユーザーに「暗証番号入力」のリテラシーがあまり広がっていないのが実情だ。都内のある小売り店の売り場担当者は、

 「(クレジットカード利用時に)お客様に暗証番号入力を、と求めると、『そんなのわからない』と突き返される事が多い。クレジットカードはサインという意識が一般的で、(クレジットカードの)暗証番号を覚えていらっしゃらないお客様が、かなりいらっしゃるのではないでしょうか」と話す。

 他にも、非接触ICであるモバイルFeliCaは認証速度が速く、サイン/暗証番号レスの少額決済において、決済のスピードアップとレジ回転率の向上に大きく寄与する。安全性とともに、スピード向上が両立しているのが、加盟店にとって大きなメリットになるのは間違いない。

 クレジットカード会社にとって犯罪被害の増加は死活問題であり、ICカードへの移行と加盟店端末の交換は既定路線だ。そのシナリオの中で、セキュリティと利便性を兼ね備えたFeliCa携帯は、クレジットカード会社と加盟店にとって「歓迎される存在」になるだろう。

 FeliCa携帯は、ICカード型クレジットカードと並ぶ“もうひとつの選択肢”として、大きく普及するのではないだろうか。

Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.