公共情報アクセシビリティ、次のステップは「ケータイ活用」 神尾寿の時事日想

» 2005年05月23日 15時26分 公開
[神尾寿,ITmedia]

 アライド・ブレインズは5月18日、全国47都道府県Webサイトに関するアクセシビリティ調査の結果を発表した。同社が「防災情報」を中心に各都道府県のサイトを調査したところ、そのほとんどに何らかの問題が存在したという。

 平成13年のe-Japan戦略開始と前後して、公共情報のデジタル化は急ピッチに進んだ。今では多くの情報がインターネット上に公開され、市民にとって重要なデータベースになっている。

 だが、公共情報のデジタル化が、アクセシビリティの問題を浮き彫りにした、という皮肉な一面があるのも事実だろう。アライド・ブレインズは今回、PCでの「音声読み上げソフト」への対応不備について問題点を指摘しているが、そもそも、日常的にPCを使いこなして情報検索ができる世帯/市民と、そうでない層との情報格差は次第に広がりつつある。

 筆者は以前から、国や自治体の公共情報は「携帯電話向け」もあわせて整備すべきだと各方面で主張してきた。

 むろん、その第1ステップは携帯電話向けサイトの構築と使いやすい検索機能の実現だ。サイトへの誘導は、各キャリア公式ポータルへの参加はもちろん、QRコードを用いた配布/配送物など、紙媒体から直接サイト誘導する形を用意してもいいだろう。例えば、自治体の各担当ごとが送る配送物にQRコードを印刷し、そこから自治体サイト内の該当ページに直接アクセスできる仕組みを作れば、PCから自治体サイト内の該当情報を探すよりも簡単だ。

 視覚にハンディキャップを持つユーザーに対しては、CTI(Computer Telephony Integration)システムを応用して、サイト内の情報を自動音声応答で提供するサービスを用意すればいいだろう。これなら家の電話はもちろん、外出先でも必要な時に携帯電話からアクセスできる。

 また、携帯電話ならば発展性もある。

 中でも注目なのは、2007年4月以降の、携帯電話のGPS機能搭載義務づけだ。総務省では2009年4月時点にGPS搭載携帯電話の普及率を50%以上、2011年4月時点には普及率90%にする方針を示しており、各キャリアの対応を強く求めている。

 携帯電話にGPSが搭載されれば、ユーザーは「周辺の情報を探す」という、よりリアルな世界に重ね合わせた情報アクセスが可能になる。例えば、近隣の公共施設情報やバス停の時刻表情報などを、地図の上にプロットしてアクセスできるようにすれば、視覚的で幅広いユーザー層が利用しやすいUIになる。

 また災害時の防災情報ならば、安否・所在地確認はもちろん、周辺の緊急支援施設が自位置と地図から探せる。これはPC向けの防災情報サービス以上のメリットを生み出すのではないか。

 公共情報のデジタル化が進んだ今こそ、国や自治体はアクセシビリティ問題解決およびデジタル情報活用の手段として、携帯電話の可能性を広く視野に入れるべきだろう。一方、各キャリアと端末メーカーは、QRコードやGPS機能など最新機能にも使いやすい操作性を与えて、活用シーンを増やしていく必要がある。

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