2010年問題が、FeliCa携帯の電子錠市場を後押しする

» 2005年06月24日 11時13分 公開
[神尾寿,ITmedia]

 6月23日、東京ガス都市開発がNTTドコモの「おサイフケータイ」に対応したビルシステムを公開した。詳しくはレポート記事に譲るが(6月24日の記事参照)、ビルやマンションにおけるFeliCa携帯やカード型FeliCaの導入は、今後の急成長が見込まれる分野だ。

 その背景となっているのが、団塊の世代が大量に引退する「2007年問題」と、その先にあるオフィスビル市場の「2010年問題」である。

 2007年問題とは、団塊の世代で最も多いとされる1947年生まれの人が定年を迎える2007年を象徴化した言葉で、実際には2007年から2010年にかけて起きる団塊世代の大量引退を指す。2007年問題は、労働力不足をはじめとするさまざまな問題が予測されているが、その中で確実にいえるのは「オフィスワーカーが今後、減り続ける」ということである。団塊の世代が去った後の労働力の“穴埋め”を企業はさまざまなアプローチで行うが、抱え込んでいた団塊の世代以上の人員補充が行われないことは間違いないからだ。

 これが2010年問題の引き金になる。ニッセイ基礎研究所が2005年5月に発表した「再考/東京オフィス市場の2010年問題」によると、団塊の世代が定年退職する2005年〜2010年には東京23区内だけで約10万人(2005年のオフィスワーカーの約3%相当)が減少し、長期的な減少シナリオに入るという。

後付けタイプのFeliCa電子錠に注目

 オフィスワーカーは確実に減っていく。さらにITインフラの整備が進み、オフィス機能の分散化や利用効率の向上が進むだろう。

 オフィス市場2003年問題の時は、1人あたり床面積の拡大や、データセンターなどIT設備需要の増加、オフィスビル内の飲食店やショッピング施設ニーズにより、全体としてのオフィスビル需要の減少は限定的だった。しかし、設備の古い中小型ビルと、防災・防犯・情報設備の面で充実する先進・大型オフィスビルとの間で稼働率の差は一気に広がり、市場は2極分化した。

 2010年問題では、この傾向がさらに進み、中小規模だけでなく、大型だが設備の古いオフィスビルも、需要減の影響を受ける。これらの中古オフィスビルは、生き残りをかけて設備をリニューアルするか、先進ビルへと建て替えをする必要が出てくる。また稼働率が悪化したオフィスビルの一部は、都市部への人口回帰をあてこんで新築マンションに建て替えられるだろう。

 これらの動きは、建物でのFeliCa電子錠ソリューションを増やすには絶好の機会であり、おサイフケータイをはじめとするFeliCa携帯にとって追い風になる。中古物件の設備更新や、新築物件への建て替えでは、セキュリティと情報インフラの導入は必須だ。その点、FeliCa携帯ならば、きめ細かく使いやすい電子錠ソリューションが実現できる。しかもFeliCa電子錠は急速に普及を始めているため、今後の低コスト化が期待できる。オフィスビル市場の競争激化を鑑みれば、FeliCa電子錠が「基本的な機能」になっていく可能性は高いだろう。

 また、中古オフィスビルが新築マンションに建て替えられた場合、別の効果も期待できる。

 まず、新築マンションの付加価値としてセキュリティは重要であり、そこで採用されるソリューションはFeliCa電子錠になる可能性が高い。さらに現時点でも供給過多といわれているマンション市場に、さらなる新築物件が投入されれば、当然ながら既存マンションの相対的な価値低下は避けられない。中古マンションの付加価値としても、FeliCa電子錠のニーズが高まる。

 現在、オフィスビルやマンションにおけるFeliCa電子錠ソリューションは新規物件に取り付けるものが中心であり、この採用物件は今後も増加していくだろう。さらに2010年問題も視野に入れるならば、既存のオフィスビルやマンションに導入可能な「後付けタイプ」のニーズも急拡大する。

 FeliCa携帯は決済用途での活用がまず注目されているが、オフィス/マンション市場の急激な変化を考えれば、電子錠分野での成長も急速に進む可能性が高いだろう。

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