EV-DO端末とRFID機器がペースメーカーに与える影響――総務省

» 2005年08月19日 02時45分 公開
[吉岡綾乃,ITmedia]

 総務省は8月11日、携帯電話やRFID端末が発する電波が、医療機器にどのような影響を与えるかについて、調査結果を発表した。

 現在指針とされている「携帯電話を植込み型心臓ペースメーカ装着部位から22cm程度以上離すこと」は、1997年に不要電波問題対策協議会(現・電波環境協議会)で定められたもので、「医用電気機器への電波の影響を防止するための携帯電話端末等の使用に関する指針」として詳細がまとめられている。今回の調査は、2002年に行われた調査(2002年7月2日の記事参照)に続き、最新機種でテストを行ったものだ。

 電波発射源としては、携帯電話とRFID端末、影響を受ける医療機器としては、植込み型ペースメーカーと植込み型除細動器について調査している。

WIN端末がペースメーカーへ影響を及ぼすのは機器から8cm以内

 今回調査の対象となった携帯電話は、KDDIが提供しているCDMA 1X WIN端末のうち、CDMA2000 1x EV-DO通信方式の機種。800MHz対応の3機種と、2GHz対応の2機種を調査した。800MHz対応はWINの音声端末、2GHz対応は日立製作所のCF型通信カード「W02H」と、京セラ製のPCカード型通信カード「W01K」が該当する。

 電波の影響が最大になる、最悪の条件を設定して実験を行った。

 心臓ペースメーカーに対する影響が出る最も遠い距離は、800MHz帯端末で8センチ、2GHz帯端末で1センチだった。また除細動器のペースメーカー機能※について影響が出る最も遠い距離は、800MHz帯端末で2センチ。2GHz帯端末では影響がなかった。同じく除細動器の除細動機能※※については、800MHz帯端末も2GHz帯端末も影響が確認されなかった。

※除細動器のペースメーカー機能……植込み型除細動器は、通常は植込み型のペースメーカーとして機能しており、その機能のこと。
※※除細動器の除細動機能……植込み型除細動器が、心室細動(心臓が突然痙攣を起こす現象)を検出した場合に、これを止めるために強力な電気ショックを与える機能のこと。

 総務省では、これらの結果を踏まえ、現行の指針が定められた1997年当時に比べて、端末が影響を及ぼす度合いは小さくなったことを認めた上で、「22センチ程度以上離すこと」という対応策は現在も妥当、と結論づけている。

 なお、2002年に行われた調査では、ペースメーカーに対して、800MHzのPDC端末の干渉距離が11.5センチ(NTTドコモ)、1.5GHzのPDC端末の干渉距離は4センチ(J-フォン、現ボーダフォン)。W-CDMA方式の端末の干渉距離は1センチ(NTTドコモなど)、CDMA端末の干渉距離は1.8センチ(au)という結果が出ている(2002年7月2日の記事参照)

ペースメーカー装着部位から、RFID機器を22センチ以上離すこと

 RFID機器についても調査を行っている。対象となったのは、据え置きタイプが45機種、モジュールタイプが16機種。

 心臓ペースメーカーに対して、据え置きタイプのRFID機器が影響を起こす最も遠い位置は14センチ。モジュールタイプでは、RFID機器のアンテナを心臓ペースメーカーに密着させた状態で影響を起こす場合があることが確認された。

 除細動器のペースメーカー機能について影響が出る最も遠い距離は、据え置きタイプのRFID機器で6センチ。モジュールタイプでは影響は確認されなかった。

 除細動器の除細動機能についての影響を見ると、据え置きタイプのRFID機器で最長6センチまで近づけた場合に、不要除細動ショック※が発生するケースが見られた。モジュールタイプのRFID機器では影響はなかった。

※除細動器の不要除細動ショック……心室細動(心臓が突然痙攣を起こす現象)がないにもかかわらず、除細動器の除細動機能が働くこと。

 これらの結果を受け、総務省では、次のような指針を出している。

 植込み型医用機器の装着者は、ゲートタイプRFID機器が設置されている場所や、RFID機器があることを示すステッカーが貼られている場所では、立ち止まったり寄りかかったりしないこと。また、ハンディタイプ、据置きタイプ及びモジュールタイプのRFID機器を、植込み型医用機器の装着部位より22センチ以内に近付けないこと、などとしている(電波の医用機器への影響に関する調査結果)

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