OFDMとは何か? 1 塩田紳二のモバイル基礎講座 第7回: (3/3 ページ)

» 2005年08月24日 21時25分 公開
[塩田紳二,ITmedia]
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フーリエ変換とは?

 任意の歪み波は、sinやcosの式で表すことができ、これを「フーリエ級数」または「フーリエ変換」といいます。式で説明すると話が難しくなるので、ここは図を使って説明することにしましょう。

 図は、多数の正弦波(sinやcosの波)を使って、デジタル信号と同じ「方形波」を合成してみた例です。本当にきちんとした方形波を作るには、正弦波を無限回足し算しなければならないため、こうして作られた方形波はちょっと違います。しかし、大まかな形として、矩形になった方形波ができていることは分かると思います。

多数の正弦波を足し算していくことにより、矩形の方形波を合成できる(紺色で示した波)。なお、これは、周波数fからその50倍の周波数までの方形波を足し算した結果である。実際には、無限倍までの正弦波を足し算しないと正しい方形波にはならない

 曲線だけでできた正弦波でも、このように合成させることで、角張った波形を作れるのです。「どのような正弦波を使えば、対象となる歪み波と同じになるのか」、これを求めることをフーリエ変換(Fourier Translation。物理学、数学系ではフーリエ級数展開ということもあります)といい、そのときに使う式がフーリエ級数です。また、複数の正弦波から歪み波を作ることを、逆フーリエ変換といいます。

 基本的には、周波数がfである歪み波を作るには、fの整数倍の周波数を持つ正弦波を使います。上図を見ると、方形波がゼロを通る部分とそれを構成する正弦波のゼロを通る部分が一致しています。これは、周波数が整数倍のときにしか起こらない現象です。

 音楽などでよく「倍音」というのも、同じことです。楽器の出す音はかならず歪み波なので、その周波数(音楽でいえば音程)の整数倍の周波数を持つ正弦波が必ずあり、2倍のものを倍音というわけです。実際には、3倍、4倍といった周波数を持つ正弦波も含まれているのですが、知覚できないだけです。

 ある周波数fの歪み波は、2f、3f、4f……とだんだんと高くなる整数倍の周波数の波を必ず持っています。これを高調波と言います。これに対して、元の周波数=fを基本波と言います。

 スペクトラムとは、この基本波と高調波がどのようになっているかを表したものともいえます。

 ここで理解して欲しいのは、波というものは、時間軸にそってどう変化するものなのかという見方と、波形が繰り返しているため周波数軸に沿ってどう広がっているのかという、2つの見方があるということです。どちらも同じ波を別々の始点から見たものになります。

 搬送波をベースバンド信号で変調した変調波は、ベースバンド信号が持っていたスペクトラムを持ちます。変調波も歪み波なので、搬送波周波数=fとその高調波を持ちます。このため、実際に送信されている電波のスペクトラムは複雑な形になるのです。

 なお、通常の通信では、高調波はほかの通信の妨害になるため、なるべく出さないような工夫がされていますが、ゼロにすることはできません。

 次回は、OFDMを利用するメリットや、変調・復調の仕組み、また、位相変調とグレイコードについて説明します。

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