Windowsを採用しても、Palm OSは「なくならない」

» 2005年09月27日 10時29分 公開
[IDG Japan]
IDG

 予想されていた通り、Palmは9月26日、Microsoftの「Windows Mobile 5.0」を搭載したスマートフォン「Treo」をサンフランシスコの記者会見で発表した(関連記事参照)。このデバイスは来年初めに米国で提供開始される。

 この製品の詳細なスペックはほとんど明らかにされなかったが、Palmの社長兼CEO(最高経営責任者)エド・コリガン氏は、Windows Treoを、Palmが世界中のIT部門へのサプライヤーになる手助けをする「歴史的に重要な」製品と呼んだ。TreoはPDAの機能に、電話機能とネットサーフィン機能を組み合わせたデバイス。

 コリガン氏はMicrosoft会長兼チーフソフトウェアアーキテクトのビル・ゲイツ氏、Verizon Wireless社長兼CEOのデニー・ストリグル氏とともに壇上に立った。Verizon Wirelessは、数カ月間Windows Treoを独占的に提供する。

 「これはわれわれの初の3G製品だ」とコリガン氏。米国の一部で利用されているVerizonのCDMA技術ベースのEV-DOネットワークでは、400K〜700Kbpsの速度でデータをダウンロードできる。

 Verizonが今回の提携にかなりの弾みをつけたと、Palmのワイヤレス・ビジネスマーケティングディレクター、ジョー・ファブリス氏は会見後の取材で語った。PalmとMicrosoftはかねてから提携について話し合っていたが、Verizonが自社のEV-DOネットワークでWindows Treoを動かすのに興味を持ったことが、2社に協力を促したと同氏。

 コリガン氏によると、これら企業は数年前からWindows Treoに関して協力してきたが、ここ数カ月の間、このデバイスに関する噂がEngadgetなどの携帯機器ファンサイトで流れていた。

 Palmの「Treo 600」「同650」は売れ行き好調だが、購入者のほとんどは個人利用を目的としている。これらデバイスは由緒あるPalm OSを搭載している。同OSは創業以来、Palmのデバイスの独占OSとして採用されてきた。

 しかし、Windows Mobile 5.0を搭載すれば、ユーザーはTreoを企業のExchangeメールサーバに接続し、Windows向けに書かれた企業用アプリケーションを同デバイスに導入できるとコリガン氏は言う。

 Microsoftは、最終的にはすべてのITプロフェッショナルが電子メールにアクセスできる携帯電話を持つようになると考えているとゲイツ氏は語った。同氏によると、Windows Treoにより、Microsoftは高まっているPalmデバイスの需要を活用できるという。

 MicrosoftとPalmはまた、PalmのアプリケーションのノウハウをWindows Treoに組み込むことでも協力してきた。これによりPalmは、TreoをHewlett-Packard(HP)など他社のWindows Mobile 5.0製品から差別化することができるとコリガン氏。

 コリガン氏は、PalmのスマートフォンおよびPDAで今後Palm OSがどうなるかについては、会見では直接触れなかった。同氏は今回の発表を、Palmの製品ラインを「拡大するもの」だとし、「ほかのものがなくなるわけではない。これは成長のための提携だ」と語った。

 その後、ファブリス氏はWindows Mobile搭載の「Zire」「Tungsten」の可能性に関するコメントを拒否した。しかしPalmのビジネスマーケティングディレクター、アレン・ブッシュ氏は、Palm OSベースTreoのアップデート版のリリースは続けると語った。

 一部の企業では既にPalm OSベースのTreo 600と650を社内で導入しており、その方針を継続したいと思っているかもしれないとブッシュ氏。すべてのデバイスにWindowsを搭載することに関心を持つ企業や、厳しいデータセキュリティ要件を課している企業は、Windows Treoの方を好むかもしれないと同氏は話した。

 「われわれは今後ずっと両方のプラットフォームの製品を提供する計画だ」(同氏)

 会見後の取材でも、Palm幹部らがWindows Treoのハード構成を詳しく明かすことはなかった。同デバイスはTreo 650と同程度のサイズで、QWERTYキーボード、電話をかけるための緑と赤の「発信」「終話」ボタンを備える。ブッシュ氏によると、SDカードスロットも装備し、Intelの「Bulverde」プロセッサを搭載するという。Intelのモバイル部門責任者ショーン・マローニ氏は、29日に2005 CTIA Wireless IT and Entertainmentカンファレンスの基調講演でこのデバイスへの参加について詳しく話す見込みだ。

 Windows TreoにはWi-Fiチップが搭載されない点に、一部アナリストは失望している。コリガン氏は、ユーザーはSDカードを使ってWi-Fiネットワークに接続できるとしているが、そうしたカードはストレージに使えるスペースをふさいだり、バッテリーを消耗させたりすると、MobileTraxの主席アナリスト、ゲリー・パーディ氏は指摘する。

 Wi-Fiアクセスの欠落から、一部の企業顧客は採用を思いとどまるかもしれないとIDCのアナリスト、デビッド・リンサラタ氏も指摘する。しかし、ほとんどのユーザーは、Windows Treoで比較的多くの帯域を必要とするモバイルアプリケーションを扱うよりも、電子メールをチェックしたり、インターネットを閲覧するにとどまるだろうとも同氏は言う。

 またVerizonは最近、自社のEV-DOネットワークのプロモーションを強化している。先週にはノートPCメーカーと提携し、また米国でWi-Fi接続に関するネガティブなメッセージを送る広告キャンペーンを立ち上げた。同社は、T-Mobile USAなどほかのワイヤレスキャリアほどにはWi-Fiネットワークに投資しておらず、企業顧客をWi-Fiから遠ざけてEV-DOにとどめることを望むだろうとリンサラタ氏。

 Palmは2006年第2四半期に、Windows Treoをほかのワイヤレスキャリアにも提供する計画だとコリガン氏は語った。ファブリス氏によると、それには欧州やアジアのGSM/GPRSキャリアも含まれる。

Copyright(C) IDG Japan, Inc. All Rights Reserved.