スマートフォンが“スマート”ではなくなる日を目指す──英Symbian

» 2005年10月12日 21時16分 公開
[末岡洋子,ITmedia]

 英Symbianは10月11日から2日間、英ロンドンでプライベートカンファレンス「The Smartphone Show 2005」を開催した。初日の11日、今年6月に新たにCEOに就任したナイジェル・クリフォード氏が登場し(6月22日の記事参照)、スマートフォンとSymbianの現在と今後の戦略について語った。

 クリフォード氏はまず、Symbianの必要性について言及した。英国の場合、10の無線ネットワークがあり、1つのネットワークを31以上の携帯電話が利用している。1ネットワークあたりの料金プランが78種類に上るなど複雑な環境だ。こうした市場でオペレーターや端末メーカー、アプリケーション開発者にメリットを提供するのが、Symbianだという。

 「オペレーターや端末メーカー、開発者にコスト、時間のメリットを提供する。標準的プラットフォームを利用することで、差別化に集中できる。Symbianはコンパスの軸のような役割を果たす」(クリフォード氏)。

 Symbianの最大の強みは、ハードウェア、UI/アプリケーションの間で一貫性のあるプラットフォーム技術を提供すること。これにより端末メーカーは、機能の選択や差別化、コスト削減、開発工期の短縮を実現できる。「1度開発すれば、それを再利用できる。再利用すればするほど、得られるメリットは大きくなる」とクリフォード氏。同氏がここで例に挙げたのが富士通だ。「Symbianを再利用することで、おサイフケータイのようなハイエンド端末から「らくらくホン」まで多様な端末を提供している」

 ハードウェア、UI/アプリケーションが選択でき、カスタマイズできるのがSymbianの強み


 端末ベンダーはSymbian OSを採用することで、多様な製品を低コスト・短期に開発・提供できる


 日本でSymbian OS搭載機を最も多くリリースしている富士通の端末バリエーション

 オペレーターにもメリットは大きい。Symbian端末の場合、新端末の検証テストのうち、アプリケーション関連コストを90%も削減でき、合計で約40%のコスト削減が可能という結果も出ているとする。これにより得られた時間を、ほかの戦略的な検討に充てられるわけだ。

Symbian搭載機の出荷台数は4000万台

 Symbianは現在、スマートフォンOS市場で最大のシェアを誇る。その数字を見てみよう。

 Symbianは現在、12社にライセンスを提供しており、現在7ライセンシーから54機種がリリースされている。これは、前年6月末時点の6ライセンシー・23機種から大幅に増加したことになる。Symbianを搭載した携帯電話の出荷台数は、今年前半で累計4000万台を超えた。第2四半期の出荷台数は780万台で、前年同期の3倍となった。今年前半に新たに登場したSymbian端末は、18機種。この中には富士通、三菱電機がNTTドコモ向けに提供した端末も含まれている。商用提供されているサードパーティ製アプリケーションは4112種。最後に、現在開発中のSymbian端末は50機種(11ライセンシー)という。

 調査会社の数値としては、英CanalysがスマートフォンOS市場におけるSymbianのシェアを62.8%としている。

 2005年前半は、前年同期比190%の1450万台を出荷した

 順調に搭載機を増やしている同社だが、市場はまだ新しく、競争も激しい。今後は、現在ハイエンドで築いた地位を維持しつつ、ミドルレンジや低価格端末の分野にフォーカスすることで、マス市場進出を狙う。クリフォード氏はこれを「スマートフォンから“スマート”を取り除く」と表現する。普及すれば、“スマート”と特別扱いする必要はなくなるからだ。

 価格を下げるという点に関して同社はSymbian OS Real Time Compatibility Layer(RTCL)技術を発表した。スマートフォンは通常、プロセッサを2つ(コミュニケーション用とアプリケーション用)利用する設計となるが、同技術により端末メーカーは1プロセッサアーキテクチャを利用しつつ、Symbianの性能を活用できるという。また昨年、3G端末で米Intel、フィンランドのNokiaとの提携を発表。この提携の延長として、IntelがSymibian 9.0とNokiaのSeries 60 3rd Editionを搭載した3G端末向けチップのコンセプトデザインをデモしている。

 Intelのブースに展示されていたコンセプトデザイン。「PXA270」と「PXA9xx」を利用しているが、実際のレファレンスデザインは先日発表した「Monahans」を採用することになりそうだ


Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.