KDDI、業績好調〜今後警戒すべきは「ボーダフォンの動き」

» 2005年10月21日 19時21分 公開
[杉浦正武,ITmedia]

 KDDIは10月21日、2006年3月期上期の決算を発表した。半期の営業収益は1兆4688億円で、営業利益として1667億円を計上。経常利益は前年同期比5.5%増の1649億円で、当期利益では同30.3%増の1014億円を計上するなど、引き続き好調な業績となった。

 会場ではまた、小野寺正社長が今後の戦略に言及。いまのところ音声定額サービスの提供は考えていないことや、今後何を警戒すべきかなどを話した。

Photo KDDIの小野寺社長

auが好調、ただし誤算は「メタルプラス」

 KDDIの業績を牽引するのは、やはりauの携帯事業だ。連結売上の4分の3を占める1兆1178億円の営業収益を稼ぎ出しており、営業損益ベースでも1852億円の黒字を計上した。「着うたフルなどau独自サービスと、定額制料金をセットで訴求したほか、家族割・年割拡充などリテンション(顧客つなぎとめ)施策を強化した」(同社)

 ただし、固定通信事業は営業損益ベースで295億円の赤字。特に立ち遅れが目立つのが直収型電話サービス「メタルプラス」(2004年12月17日の記事参照)で、9月末の開通数は約68万に止まった。「(増加ペースが)若干スロー。下期は早期に改善する」(小野寺氏)

 今後、気になるのは携帯電話の音声定額に対応するかどうか。NTTドコモは新サービス「プッシュトーク」でVoIPを利用した変則的な音声定額を実現しており(10月21日の記事参照)、これへの対抗策を講じるかどうか注目される。ただ小野寺氏は、ドコモのサービスは一般の音声通話を定額にしたわけではないため、さほど脅威ととらえていない……とコメント。KDDIとして「PTT(プッシュ・ツー・トーク)のサービスに興味はあるが、開始時期などを言う段階にない」という。

 一方で、ボーダフォンの動向には一定の警戒感を示している。ボーダフォンはドコモと異なり、通話相手が限定されるとはいえ一般の音声通話を定額化している。このサービスがヒットすると「我々が食われるのか? それともNTTドコモが食われるのか?」。ドコモと競争している分には状況が大きく変わらないが、低迷しているボーダフォンが息を吹き返すと、やっかいだという考えのようだ。

 KDDIとして、ボーダフォンと同等の音声定額は「やろうと思えばいつでもできる」(同氏)こと。今のところは、ボーダフォンのとった形式での定額化は考えていないという。

 理由として、KDDIが従来データ通信サービスに力を入れてきたことが挙げられる。1X WINで新味のあるサービスを連続して打ち出してきた同社が、今さら音声サービスに視線を向けることに抵抗感があるようだ。同時に、端末のデザインセンスなどでシェアを奪ってきたという自負もあり、「まず、端末の魅力が重要」(小野寺氏)という意識もある。

 とはいえ、音声定額にユーザーの関心が集まっていることは確か。小野寺氏の「(シェア争いに)影響が大きいようなら、考えなければならないだろう」というセリフが、同社のスタンスを明確に示しているといえるだろう。

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