“ケータイ”の世界へ食指を動かすYahoo!とGoogle神尾寿の時事日想

» 2006年01月10日 09時58分 公開
[神尾寿,ITmedia]

 世界最大の家電見本市「International CES(Consumer Electronics Show)」が始まった。筆者は国内取材のスケジュールの都合で参加していないが、提携している現地ジャーナリストから送られてくる資料に追われる毎日だ。ITmediaでも連日、興味深いレポート記事が多数掲載されている。

 例年同様、今回のCESも注目ポイントが多いが、携帯電話業界として注目すべきは、スマートフォンの普及を前提とした米国のネット企業と携帯電話メーカー/キャリアの急接近だろう。その象徴的なものが、Yahoo!とGoogleの「モバイル進出」が本格化していることだ。

 例えば、Yahoo!はノンPC向けの新サービス「Yahoo! Go」において、重点デバイスとして携帯電話をターゲットにしている(1月7日の記事参照)。これが従来のモバイル向けYahoo!と異なるのは、コミュニケーションサービスが携帯電話内蔵のアプリケーションと密接に連携している点だ。単なるポータルサイト以上のサービスに乗り出そうとしている。

 一方、GoogleはMotorolaと提携し、Google利用を簡単にする専用機能をMotorola製携帯電話に組み込むことに成功した(1月6日の記事参照)。これによりユーザーの利便性が向上し、モバイル向けGoogleの利用率が向上することは想像に難くない。

 余談になるが、Googleは昨年サンフランシスコで開催されたITS世界会議にも積極的に参加しており、フォルクスワーゲングループとともに「Google Earth」を使った次世代カーナビのコンセプトモデルを出展していた。今回、Googleの基調講演で使われたロボットラリーカーは、その時にも展示されていたフォルクスワーゲンのSUV「トゥアレグ」ベースのカスタムカーだ。

 Googleはネット上の検索サービスだけでなく、Google Earthで携帯電話やカーナビ向けの地図・位置情報サービス進出にも興味を持っている。今後、モバイル分野でも注目企業の1つになるだろう。

日本独自のエコシステムにも影響するか

 現在のYahoo!やGoogleの動きは、スマートフォンが爆発的に広がる北米市場に合わせたものだ。ノキアやモトローラなど端末メーカーにしても、Yahoo!やGoogleの利用者はスマートフォンのターゲットユーザーと重なり合うため、積極的に提携しやすい。

 一方、日本の携帯電話業界は端末メーカーに対するキャリアのコントロール力が強く、キャリアの公式サイト制度がコンテンツ/サービスの普及にも影響を及ぼしている。キャリア主導のエコシステム(生態系)ができあがっている上に、欧米型スマートフォン市場も立ち上がっていない。北米でのYahoo!やGoogleの動きが、すぐに日本市場に影響する可能性は低いだろう。

 しかし、今後を睨めば、ウィルコムや新規参入キャリアなど、従来の携帯電話キャリアのようなエコシステムを持たない企業が、欧米型のスマートフォンとネットサービスの組み合わせを導入するシナリオは十分に考えられる。

 スマートフォンの普及により、北米のIT企業は“PCの次”の拡大領域として、携帯電話に食指を動かし始めた。携帯電話の端末やサービスは、モバイル特有のパッケージングが必要なため、ノウハウや技術的な参入障壁は確かに存在する。しかし、PC市場で規模のビジネスを培ったプレーヤーが本腰を入れれば、いずれ彼らの力は無視できなくなる。スマートフォンを前提にした北米モバイル市場の動きは、日本市場にとって対岸の火事ではない。

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