韓国のゲームスタイルを変えた──携帯コントローラ「XEG」韓国携帯事情

» 2006年02月13日 13時17分 公開
[佐々木朋美,ITmedia]

 携帯電話を差し込むことで、より安定した形で携帯ゲームを楽しめるコントローラ「XEG」が話題となっている。これまで片手で操作せざるを得なかった携帯ゲームを、両手で楽しむスタイルに変えた新しいコントローラだ。XEGを開発したFlyin Studioに話を聞いた。

携帯ゲーム、片手から両手操作の時代へ

Flyin Studio代表理事のJung Sungwook氏。「XEGは携帯ゲームのパフォーマンスを高められるインタフェース。マニア好きのする機能はすべて搭載している」

 一見ゲーム専用機のコントローラのような形をしたXEGは、真ん中に携帯電話をセットできるクリップが付いたゲームコントローラだ。昨年12月に韓国で販売されたばかりだが、そのユニークな形が話題となり、雑誌やインターネットで多く紹介されている。日本でも以前「ezplusコントローラ」が販売されたが、形だけを見るとそれに類似している(2002年1月16日の記事参照)

 「電話をかけることが本来の機能である携帯電話では、ゲーム操作は数字キーを指で押すことにより行われており、そうした点がたいへん不便といわざるを得なかった。そこで私たちは3年ほど前から両手で操作が可能なXEGの開発に取り組んできた」とFlyin Studio理事のJeong Seoungwoo氏は話す。

 両手でコントロールできることで操作性が安定する以外に、一度に2つのボタンを押すことで複合的な操作も可能とする。例えばアクションゲームで飛びながらキックするなど、ほかのゲーム機では当然のように行われていたことを携帯電話でも実現し、キャラクターの動きに多様さを加味してくれる。

 さらにXEGはCPUやメモリ(1024KバイトのSDRAMおよび512KバイトのE2PROM)、USB 2.0ポートまで搭載している。PCと連結しプログラムをダウンロードしコントローラの機能をアップグレードさせるなど、高い拡張性を誇っている。

XEGで携帯電話ゲームを楽しんでいる様子。アクションやRPG、シューティングなど複雑な動きを必要とするゲームで特に力を発揮する。XEGの色展開は、シルバー、ブラック、レッド、ブルーの4種類。価格は4万9500ウォン(約6000円)

XEGの詳細構造および利用法は

 XEGへの携帯電話のセット方法は、両脇のクリップで固定するだけ。この後XEGの電源を入れてコネクタを差し込むと携帯電話との通信が可能となる。最初に利用するときに「MODE」ボタンを押し、携帯電話のインターネットを通じてハンドセット・データをダウンロードする。その後は連結し電源を入れた状態ですぐにゲームを楽しむことができる。単3乾電池2本で10〜12時間は動作する。

XEGに携帯電話をセットした様子。クリップは手で簡単に開くことができるほか、大きな携帯電話用の大型クリップの付け替えも簡単だ。右はXEGの背面。携帯電話と連結するコネクタが格納できる。また内部中央部には単3乾電池2本が入る構造となっている

 XEGのボタン構造は基本的にゲーム専用機と同様で、かつ携帯電話でゲームを利用する際に利用するボタンに対応している。

 正面には、携帯電話の無線インターネット接続ボタンや「OK」の役割をする[OK]ボタン、同じく[5][#][0]に該当する4つのボタンが正面右側に、8方向の方向キーが正面左側に付いている。方向キーの下の[MODE]ボタンではXEGのキー設定変更、方向キー上の[XEG]ボタンは、XEGサイトにボタン1つで接続する。

 また本体上には、携帯電話の「取り消し」ボタンに該当する[CLR]ボタン、携帯電話の無線インターネットと確認ボタンが別々の場合、確認の役割をする[L]ボタン、携帯電話の[*]キーに該当する[R]ボタン、メニュー選択の際、一気に移動するのを防ぐ[STEP]ボタンなどがある。

XEGのボタン配置はゲーム専用機のコントローラとほぼ同じだ

 多様なデザイン・大きさの端末が出ている韓国携帯だが、XEGは現在のところ64機種程度に対応している。XEGのクリップは簡単に取り替えられることができるので、大型の携帯電話の場合はこれを付け替えればいい。

 Jeong氏は「現在、韓国国内に出回っている携帯電話は300種以上。3月初旬には対応機種を200種、3月中旬〜4月頃には国内の70%以上の携帯電話に対応できるようにする計画だ」と述べている。

米国、そして日本市場へも今年中に進出

 XEGは今後、米国、そして日本市場にも登場する予定だ。米国ではVerizon Wireless専用のアクセサリなどを製造しているメーカー、USA Wirelessと提携し開発を進めてきた。

 米国版XEGは、デザインやボタンの配置などがUSA Wirelessによって若干変えられている。また韓国では携帯電話のコネクタは24ピンで統一されているものの、米国ではそれぞれ異なるため、イヤフォンジャックのコネクタで接続する。開発はほぼ終わっており、近く販売が始まる予定だ。

 一方「日本には第2〜3四半期の進出を目標としている」(Jeong氏)ということで、現在、日本の企業と準備を進めているという。「日本の企業とはまだ確定していることはあまりないが、市場や技術が異なるのでそれに合わせるべく情報交換などを行っている段階」だという。

 特に無線インターネットの構造やコンテンツのサービス形態、コネクタ規格や携帯電話のサイズなどは今後も調べ続けていかなければならないものだという。韓国市場と多くの面で違いが見られるこれらへの対応が、日本市場攻略のポイントともいえるだろう。

 Flyin Studio代表理事のJung Sungwook氏は「日本市場はとても魅力的な市場。ゲームの歴史がありグローバル企業も多いため、ユーザーはゲームに慣れており、XEGのような製品にも理解を示してくれるだろう」と話している。

 ただし逆に難しい点もある。「日本のユーザーは製品に完璧さを求めるので、そうした面で苦労するのではないか」とJung氏は分析する。それでも「市場規模が大きく成熟したゲーム文化を持つ」日本市場は無視できない市場のようだ。

XEGの未来は「サービス製品」

 「XEGはサービス製品」とJung氏は語る。現在の用途は携帯電話用のコントローラでしかないXEGだが、今後は大きくその機能を拡大していく予定だ。

 まずは方向キー上にある[XEG]ボタン。これは現在、XEG専用のサービスサイトに直接接続するためのボタンとなっているが、今後はこのWebサイトをXEGに合ったゲームを集めたポータルサイトに拡張していく予定だ。

 「例えば今、携帯電話の無線インターネットでゲームをダウンロードする際、あらかじめゲームを試せるデモ機能はないが、XEGのポータルサイトではそうしたことも可能にしたい」とJung氏は述べた。

 またXEGにはUSB端子が付いているが、これを利用してPCとの連携機能も強める予定だ。例えばXEGをアップグレードする際、インターネットからソフトウェアをダウンロードして機能を追加したり、PCでのゲームもXEGでできるようにするなどを想定している。

XEG本体の下に付いているUSB端子

 さらに現状のCDMA対応だけでなく、GSM端末に向けたコントローラも開発中。それが完成した暁には欧州などでもXEGが登場する。また「今年中盤〜年末までには低価格および高価格のモデルも出る」(Jeong氏)ということで、ますます進化を遂げる予定だ。

 Jung氏は「今年の韓国での販売目標は50万台。その売り上げを左右するのはコンテンツだ。今後はさまざまなコンテンツ・プロバイダと提携することで優秀なゲームを提携していきたい」と抱負を述べた。

佐々木朋美

 プログラマーを経た後、雑誌、ネットなどでITを中心に執筆するライターに転身。現在、韓国はソウルにて活動中で、韓国に関する記事も多々。IT以外にも経済や女性誌関連記事も執筆するほか翻訳も行っている。

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