auの次世代コンテンツメディア戦略――KDDI高橋誠氏に聞く(前編) Interview:

» 2006年03月28日 17時34分 公開
[神尾寿,ITmedia]

 auの好調が続いている。同社は3Gへの早期移行と、その後のパケット料金定額制の導入以降、着うたフルやEZナビウォークなど他社にない新サービスを精力的に投入。今年の春商戦ではコンテンツ分野のFMCといえる「LISMO」を導入。コンテンツメディア戦略における先進が健在であることを示した。また純増数においても、一時期ほどの伸びはないものの、ドコモと拮抗しながら高い成長率を維持している。

 au好調はなぜ続くのか。また、将来のコンテンツメディア戦略はどこに向かうのか。KDDIコンテンツメディア本部長の高橋誠氏に聞いた。

KDDIコンテンツメディア本部長の高橋誠氏

ダブル定額の順調な浸透

 auはいち早くパケット料金定額制を導入し、その後、ダブル定額(2004年6月16日の記事参照)やダブル定額ライト(2005年3月23日の記事参照)の導入など、「定額制」の普及に力を注いできた。現在、CDMA 1X WINユーザーにおける定額制の加入率は約8割に達しており、同社の強みの1つになっている。

 さらに興味深いのが、定額制利用者のデータ通信利用状況だ。周知の通り、ダブル定額は月額1000円からスタートし、ユーザーのデータ通信利用に応じた従量課金が行われて、支払い上限金額の4200円に達するフラットレートになる。高橋氏によると、このダブル定額の利用者のうち約6割が同プランの支払い上限金額に達しているという。

 「(auでは)ダブル定額の導入にあたり、ユーザーの通信利用を増やすための魅力的なコンテンツメディアサービス作りを行ってきました。ダブル定額利用者のデータARPUが上限に達しているのは、それら(コンテンツメディア分野)の取り組みが『底上げ』に役立っているためだと考えています」(高橋氏)

 実際、auのコンテンツメディアサービスを見渡せば、着うたフルやEZチャンネルはもちろん、EZナビウォークの度重なる機能強化など、最新のサービスは「定額制」を前提にしたものが多い。2月23日にオープンしたばかりのau shopping mall(2月23日の記事参照)も、定額制が前提である。

 ダブル定額で利用開始料金を下げ、定額制の間口を広げる。一方で、定額制を生かすコンテンツメディアサービスをau自身が率先して投入する。この仕組みにより、auはユーザーのデータARPU(ユーザーあたりの月間収入)向上と、定額制の浸透に成功している。

 「将来的なところを見ると、(以前からの)auユーザーの年齢層が上がってきている。(学割を使っている1xユーザーから)WINに移行する層が出てきているわけで、結果的にWINの占有率は上がってきています。(au全体の)データARPUはもう少し底上げできるでしょう」(高橋氏)

融合の延長線上としての「PC連携」

 今年の春商戦で最も話題になったサービスといえば、auの「LISMO」だろう(1月19日の記事参照)。これは音楽分野における意欲的な取り組みというだけでなく、キャリアが打ち出した本格的な「PC連携」であり、PCを介して固定網ブロードバンドとも連携する「FMC」という一面を持つ。

 「我々はパケット料金定額制の導入当時から、他メディアとの連携・融合を掲げてきました。LISMOもその1つという位置付けで、戦略的にこれまでと変わるところはない」(高橋氏)

 とはいえ、従来の放送連携などとは大きな違いもある。それはLISMOがPCとの外部接続を前提にしていることだ。携帯電話業界ではこれまで、ユーザーによる外部接続はハードルが高く、キャリアが主力ラインナップで取り組むにはリスクが大きいと考えられてきた。この点について、どのように考えているのだろうか。

 「理想的には、携帯電話とPCなど(他のデジタル機器)が何らかのワイヤレスな手段でシームレスに連携すればいいと思いますよ。しかし、現在の技術でそれをやろうとすると、初期設定や認証によってかえってハードルが高くなる。現時点ではUSBケーブルによる接続の方が分かりやすいと思いました。

 リテラシーの課題がどう影響するかはまだ分かりませんが、例えば着うたフルのメインターゲットである若年層は、PCの利用が根付き始めている。そのあたりのユーザー層からなら、PC接続が受け入れられるのではないか」(高橋氏)

 また、“動機付け”の点を、LISMOは重視している。

 「携帯電話をPCにつないだら、どのようなメリットがあるか。携帯電話にダウンロードした着うたフルをPCに保存できる、あるいは音楽CDの曲を携帯電話で聴けるようになる。ここを分かりやすくクリアーにした。

 auの事情で言いますと、着うたフルをバックアップして機種変更後も継続して聴きたいという要望は多いのですよね。1曲300円ですから、当然といえば当然なのですが(笑)。LISMOだと、着うたフルのバックアップがPCでできて、気がつけばメールや電話帳の中身もバックアップされている。こういった動機付けでユーザーに普及していくのではないかと考えています」(高橋氏)

iPodにある機能はすべて追いかけていく

 LISMOのサービスはまだ始まったばかりだが、ユーザーからの要望は続々と集まってきている。その中で最も多いのが、「Macintosh対応」だという。

 「お客様からの要望の第一位は『Mac対応』です。これは予想以上に多い。auのお客様は音楽好きが多いのですが、そういう層にはMacが普及しているんだなあ、と改めて実感しました。

次に要望が多いのが、すでにリッピング済みの音楽データの取り込みやビットレートの変更ですね。これらの要望については今後、検討していかなければならないでしょう。我々としては、iPodにある機能はすべて追いかけていきたいと思っています」(高橋氏)

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