苦戦する「Vodafone live!」と行き詰まる成熟市場のジレンマ英Vodafoneの現状と今後(2)(1/2 ページ)

» 2006年08月03日 19時17分 公開
[末岡洋子,ITmedia]
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 英Vodafone(以下、Vodafone)の現状とこれからを探る本企画。第1回では、同社のグローバル戦略と重要性が高まりつつある新興市場を概観した(8月2日の記事参照)。第2回では、成熟市場における同社の課題を見ていこう。

 Vodafoneの新興市場への相次ぐ進出は、成熟市場の苦境から逃れようとするかのようにも見えるが、同社のメインの市場はあくまで売り上げの8割を占める西欧州市場だ。ただ、売上高の成長率で見ると、新興市場(EMAPA)が13.9%であるのに対し、西欧州市場は1.3%にとどまっている(VodafoneのIRデータより)。

安価でブランド力もあるMVNO勢が台頭

 携帯電話による音声通話やテキストメッセージの利用が普及した成熟市場でユーザーは、オペレーター(キャリア)を選ぶにあたり、価格やサービス、ブランドを重視する傾向がある。

 価格面では、安価な通話サービスを売りにするMVNO(用語参照)が欧州に進出している。回線をオペレーターから借り受ける事業形態のMVNOは(2006年3月の記事参照)、異業種からの参入も容易で、若者層にアピールするサービスで成功した英Virgin Mobile(5月31日の記事参照)を筆頭に、ブランド面で優位に立つものも多い。こうした勢力に勝つためにVodafoneは、ポータルサービスやブランド力を強く打ち出す必要がある。

 5月末にVodafoneが発表した業績報告書を見ると、本拠地英国の売上高やARPU(加入者1人あたりの月間売上高)が減っているのが分かる。英国市場は、MVNOやFMC(fixed mobile convergence:固定網と無線網の融合)などさまざまな面で競争が激化しており、ここでの不調はVodafoneの課題をそのまま表している。同社は西欧市場では英国、ドイツ、イタリア、スペインの4カ国の業績を発表しているが、売上高が伸び悩む傾向は、番号ポータビリティの恩恵を受けて売り上げ22%増を達成したスペインを除いて、どこも同じだ。

  • Vodafoneの主要西欧市場におけるARPUの推移(単位:ユーロ)
2005年6月末 2005年9月末 2005年12月末 2006年3月末 2006年6月末
ドイツ 24.3 24.4 22.9 21.5 22.1
イタリア 30.4 29.9 27.7 26.4 27.6
スペイン 36.2 37.7 35.3 33.3 35.3
英国 24.6 25.1 23.8 22.7 23.7

オペレーター主導のコンテンツポータルが浸透しない欧州市場

 「Vodafone live!」は、NTTドコモのiモードを意識して約4年前にスタートしたポータルサービスだが、ドコモのように深いレベルで端末メーカーと密接に協業できておらず、ユーザビリティの面で劣る感は否めない。

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