「ビジネスのau」に向かうKDDI 神尾寿の時事日想:

» 2006年09月21日 16時45分 公開
[ITmedia]

 9月20日、KDDIがIPX7相当の防水ボディに1200mAhの大容量バッテリー、それにBluetoothを搭載し、高度なセキュリティ機能を採用したカシオ計算機製のビジネスケータイ「E03CA」(9月20日の記事参照)を発表した。E03CAは「B01K」(京セラ製)や「E02SA」(三洋電機製)に続くauブランドのビジネスケータイ(3月6日の記事参照)の第3弾に当たる。セキュリティや大容量バッテリー、GPSといったビジネスに役立つ基本機能を用意した上で、G'zOne譲りの“タフネス”を付加価値とした端末だ。ホワイトカラーからブルーカラーまで、「ビジネスの現場」で求められる信頼性・機能性を重視したモデルといえる。

 さらにKDDIは、ビジネス向けの新たなコミュニケーションサービス「Business Messenger」も提案した。これは同社の「Hello Messenger」を法人向けに機能強化したものである。以前この連載で、auがHello Messengerベースの法人向けソリューションを開発中と報じたが(2005年10月27日の記事参照)、それがサービスとして実現したものだ。

 Business MessengerはIMライクな機能と操作性を持つサービスであり、パケット通信を使い半二重の音声通話を行うPush to Talk機能も内蔵している。また新たに管理者がPCからユーザーグループの構築・編集を行う機能を用意している(9月21日の記事参照)。しかし、PC向けのBusiness Messengerクライアントソフトについては「今のところ提供する予定はない」(KDDI広報部)という。

ビジネス市場獲得に本腰を入れるau

 現在、携帯電話のビジネス市場は大きく2種類ある。ひとつは企業が携帯電話を契約する「法人市場」、そしてもうひとつが個人が契約した携帯電話を社内に持ち込んで仕事でも使う「ビジネスコンシューマー」だ。周知のとおり、日本の携帯電話市場はコンシューマーが牽引し、ビジネス市場もビジネスコンシューマーの規模が大きい。これは企業経営者と社員双方の“持ち込みケータイ”に関する問題意識が低く、法人契約がコンシューマー/ビジネスコンシューマーほど伸びなかったのが原因だ。しかし今後は、コスト削減と生産性向上、セキュリティニーズの高まりなどで、法人契約が新たな成長市場になる可能性が極めて高い。

 KDDIは今年の春商戦から、auブランドにおいて「ビジネス市場」を意識した商品展開をしてきた。まずは現在のボリュームゾーンであるビジネスコンシューマー向けとして、落ち着いた端末デザインやカラーを増やし、端末機能でも辞書やICレコーダーなど実用的なものを搭載した。特にデザインに関しては、在職中の小牟田氏に行ったインタビューで「(2006年春商戦では)ビジネスユーザーを意識したデザインを採用した」と語っている。

 さらに今後の成長市場である法人市場向けには、“ビジネスケータイ”と銘打った新たな端末ラインアップを構築した。コンシューマー向けの端末を法人市場に転用するのではなく、「法人のニーズ」にしっかりとあわせた作り込みを行ったモデルである。むろん、ベースモデルはコンシューマー向けであるが、第3弾の「E03CA」を見ると、機能・性能の取捨選択や、コンシューマーとも違う多様な法人ニーズにあわせてバリエーションを出す手法に、かなり手慣れてきている印象を受ける。

 KDDIはこれまで、auで「デザイン」と「音楽」に注力してきたこともあり、若年層や女性を中心にコンシューマー市場での存在感が強かった。しかし、昨年後半から今年にかけて同社の動きは確実にビジネス市場、特に今後急成長する法人市場を向いている。そのひとつのターニングポイントが、目前に控えたMNPである。

 「音楽のau」から、「ビジネスでもau」へ。この変化が携帯電話業界に及ぼす影響は小さくなさそうだ。

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