携帯ゲームが変わろうとしている。
これまでの携帯電話内で完結するものから、ネットワークを利用するものが少しずつ登場している。韓国といえばPCのネットワークゲームが盛んな国として知られているが、携帯電話ではどうなのだろうか。ソフトウェアメーカーの「セジュンナモ」に話を聞いた。
韓国では最近、ネットワークに常時つないで楽しむ大作系の携帯ネットワーク大作ゲームが出始めている。
以前紹介したCom2usの「アイモ:The World of Magic」(6月26日の記事参照)がその筆頭として挙げられる。韓国初の携帯MMO RPG(Massive Multi-player Online RPG:多人数同時参加オンラインRPG)として話題となったアイモは、現在韓KTFでサービス中であるほか、韓SK Telecom(以下、SKT)でもクローズドβテストを行っている最中だ。
このほか日本でもサービスされている「ぽんぽんストーン!」のメーカーGamevilは、「三国争覇2 烈王伝記」および「Lapis Lazuli : Past Clockwork」という携帯ネットワークゲームを発表する予定だ。
三国争覇2 烈王伝記は同社の人気RPG「三国争覇」の続編で、1年7カ月の制作期間と12億ウォン(約1億5000万円)もの制作費をつぎ込んで完成した大作だ。前作ではシナリオが43本だったのに対し、続編では1500本にも及ぶほか、エンディングも150通り用意されているというスケールの大きなゲームだ。
Lapis Lazuliは伝説の宝を探して航海するネットワークRPG。ユーザーとギルド間で最大5対5までの戦闘が可能なほか、ゲーム内でアイテムを競売することなども可能だ。
モアイテクノロジーのMMO RPG「Zeng Online」は、香港のGAMEISLIVEと1年以上の期間をかけて共同開発されたMMO RPGで、中国の春秋時代を背景にした戦国ゲーム。「RvR(Realm vs Realm)」システムにより2つの国家陣営に分かれての大規模戦闘が可能なのが特徴だ。
このように韓国では、携帯用の大作ネットワークゲームが次々と発表されており、今年末から来年前半にかけてはサービスラッシュとなりそうだ。そんな中、単なるネットワークゲームではなく“有・無線連動”をうたうネットワークゲーム「L.O.D」が、セジュンナモから発表された。
Lord of D(以下、L.O.D)は、PC(固定回線、有線)と携帯電話(無線)によるネットワークを通じて楽しめる“有・無線連動”型のSRPGだ。ユーザーがプレイするキャラクターや、獲得したアイテムやスキルなど全てのデータが有・無線ネットワーク上で連動している。
携帯電話ではキャラクターを育て、PCでは対戦を行うというように、携帯電話とPCでは遊べる内容が異なっている。というのは、携帯電話は画面が小さくPCより性能が劣るなどスペック的に限界があるためで、PCと携帯電話それぞれの機器で使いやすくかつ特化した機能を持たせ、相互を補完できるような仕組みになっている。
ネットワーク連動という強みを活かしたユーザー間のコミュニティ機能のほか、例えば時間帯に合わせて背景が朝や夜に変わったり、ポップアップ画面でメールをチェックできるといった細かな機能も盛り込まれている。
ゲームの全容は段階的に発表されていて、最近では騎士・ハンター・魔法使い・聖霊使いという職業からなる総勢12人のキャラクターのうち、6人が最近公開されたばかりだ。
12月頃にはクローズドβサービスを行う予定で、サービスは2007年2月から、SKTおよびKTFに対応する。
L.O.Dは、モバイル部門をFM Studioが、PC部門をGleam Digital Entertainmentが開発し、セジュンナモはパブリッシングを担当している。同社はもともとWebサイトの作成ソフトを供給していた企業だが、2005年からコンテンツ専門のパブリッシャーとして、アイテムショップの運営や「HAPPY mobile」というモバイルコンテンツブランドを立ち上げたりと積極的な動きを見せている。
「韓国の携帯ネットワークゲーム市場はこれまで、成長しようとして失敗していた時期といえます」と言うのは、セジュンナモゲーム事業部部長のキム・テウ氏だ。
その要因の1つが料金制だ。「キャリアがパケット収入への魅力を捨てきれないことから、月定額ではあるもののパケット代は別といった料金制を提供し、それがユーザーに“携帯ゲームは高い”という認識を植えつけました」(キム氏)。こうした不明確な月定額料金の問題に対し、L.O.Dではこれを解決する「破格の料金制」(キム氏)を用意している。
さらにキム氏は「これまでは携帯ゲームが大量生産された成長期でしたが、これからはゲームタイトルごとの売り上げを上げていく時代」という。ゲームごとの売り上げを上げるには有料化が必須だが、同ゲームが携帯電話とPCの両方で楽しめるという点や、セジュンナモが運営するアイテムショップなどの存在も考えれば、さまざまなルートからの収入が考えられる。
つまりL.O.Dは、既存の料金制の問題点を解決しながら、ゲーム1本当たりの売り上げを向上させるという、今後のネットワークゲームの収入モデルを確立するための大事なゲームともいえるのだ。
L.O.Dはすでに携帯部分は90%、PC部分は70%程度が完成しており、キャリアと価格面で協議するなどまとめの段階に入っている。サービスについては「まずは国内から」(キム氏)というが、仏ビベンディ・ユニバーサルゲームズのゲームを韓国に提供するなど海外とのつながりもある。L.O.Dのヨーロッパにおける展開も検討しているようだ。
また、同社ではすでにL.O.Dに続くタイトルの開発にも取り組んでいる。スポーツゲームの「Sプロジェクト」を15%程度開発したほか、既に「L.O.D 2」の開発にも着手した。
さらに「日本で大変有名なゲーム」(キム氏)の韓国版に関する契約も終了し、サービスへ向けた準備が進められているという。
こうした後続ゲームの成否は、すべてLODの成功にかかっている。年末からは他社のネットワークゲームも次々サービスされていくため、相乗効果も見込めそうだ。ただしゲーム内容が他社とは若干異なるため、ユーザーがどこまでそれを受け入れられるかがポイントとなりそうだ。
プログラマーを経た後、雑誌、ネットなどでITを中心に執筆するライターに転身。現在、韓国はソウルにて活動中で、韓国に関する記事も多々。IT以外にも経済や女性誌関連記事も執筆するほか翻訳も行っている。
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