2Gから3Gへとネットワークのシフトが進む携帯電話業界。W-CDMA技術の導入では世界標準にこだわったボーダフォンは、ここから攻勢に出る。3Gネットワークが普及を始めると共に、法人分野での携帯利用がこれまでにも増して増えてきている。企業がコスト削減目的から、生産性向上のためのツールとして携帯に目を向け始めた2004年。ボーダフォンのマイケル・ベナー法人営業統括部部長は、2004年をターニングポイントとし、2005年はVodafoneグループの力をもって、法人市場に打って出ると語る。

ITmedia 2004年の携帯電話業界はどんな年だったでしょう。

マイケル・ベナー 我々にとって2004年は、2Gから3Gへのシフトが最も大きなトピックでした。2004年は本格的に3Gへシフトしていくための準備期間。ネットワークそのもののカバレッジや質を上げてきて、3G端末も準備してきました。ようやくこの12月、年末に間に合う形で新しい端末が発売できて、2005年に入ると、3Gへのシフトを実行、加速していくということになります。

 いろいろな面で激しい変化がありました。僕が担当する法人営業エリアは、全体が非常に厳しい中で、割といい傾向にあったと思います。例えば2003年頃は、法人契約は中小企業にとっては税金対策、大企業にとっては割引を使っての経費削減がメインテーマでした。2004年は大きくビジネス市場が変わってきた年だったと見ています。

 日本は携帯技術が優れた国でありながら、ビジネスユースでは比較的遅れた国なんです。ゲームなどは、日本では前からデベロッパーがたくさん作っていましたが、ビジネス向けのソフトは今までそれほど多くなかったんです。

 一人の社員の生産性をどう上げていくのか。経営企画室、営業企画、など戦略部門が考えてやることによって、より収益性が出てくるということです。

 従来、日本では携帯はコンシューマーが持っているものでしたが、2004年はターニングポイントです。企業が従業員に何を使ってもらって生産性を上げるか。最終的にコストの話もあるかもしれないが、例えば1000円の通信費がかかっても生産性が3%上がるとなれば、圧倒的に生産性アップのほうが会社に対する貢献になるんです。

 極端な話、「週に1回のミーティングだけ来てください。それ以外は外に行きっぱなしでやってください」という業界もあります。5年前にはとても考えられないですね。

ついに立ち上がる3Gサービス

ITmedia 3Gネットワークのメリットを企業はどのように捉えているのでしょうか。

マイケル・ベナー 複数あります。速度とモビリティ。PHSという技術がありますが、速度が3Gよりはるかに遅い。モビリティという意味では、一カ所にとどまって使うのではなく、PCを電車の中に持って行って新幹線の中で使えるんです。僕もよくやりますが、“いつでもどこでも仕事ができる”という利便性は大きいと思います。

 ボーダフォンならではのメリットは、世界標準の技術を導入していることです。若干我々が遅れた理由は、ドコモのように独自の仕様を付けてW-CDMAを導入したわけではなく、世界標準のものしか使わないという方針で導入したためです。端末にしても、この12月に出てくるものは世界共通のものになっています。

 メリットはいろいろあります。スケールを生かして調達力で価格を下げていくという考え方もあるし、プラットフォームが共通ですから、ユーザーにとっては同じ端末をどこに持っていっても同じサービスが使える。コンテンツデベロッパーにとっても、日本でボーダフォンのためにコンテンツを開発すれば、Vodafoneグループの中で横展開ができるんです。

 それから具体的な機能の話を言うと、日本にはなかったグローバルローミング。音声はもちろんデータ通信も、各国の3Gネットワーク、各国の2GのGSMネットワークも合わせて非常に利便性が高い。

ITmedia ソリューションの面でも横展開ができるのは面白そうですね。

マイケル・ベナー (携帯のソリューションは)なかなか大きなアプリケーションプロバイダと組んでいくのが難しいんですよ。なぜかというと、各国の携帯電話事業者は独自の会社だから。そのため共通のビジネスモデルで横展開がなかなかできない。それができるのはボーダフォンだけです。

独自戦略で法人市場に切り込む

ITmedia 2005年は御社の3Gも本格的に立ち上がる。今年はどんなビジョンを描いていますか

マイケル・ベナー 2004年はモバイルセントレックスという言葉が出てきました。ボーダフォンは最初にサービスを出しています。ビジネスユースの市場を見ていると、外を出回る人たち──営業とかフィールドサービスといった業態は当然なんですが、会社全体の通信ニーズを提供していきたいです。


「ボーダフォンの法人営業部隊は、意識的にITのアプリケーションをモバイル化している。ですからIT業界から人も採用して、通信のことを分かっている人との組み合わせでソリューションのサポートができる部隊にしようとしています」

 例えば1000人規模の大企業を見ると、2割くらいしか(携帯を)法人契約していないんです。残りは個人契約で、会社も費用を負担したくない。机の上にPBXの電話機がありますから、携帯の分は払いませんよ、という会社が多かった。2004年に入ると、PBXは本当にいるのかと。もう少し営業だけじゃなくてこの部門にも携帯を配りましょう、という動きも目立ってきました。

 アプローチとしては、小規模、中規模から入り込んでいこうと考えています。ビルの中には設備を入れず、携帯だけで社内ネットワークを組めるようなものを実現しています。その後、段階的にハイエンドを目指していくということです。

ITmedia 2005年のモバイルセントレックス市場の中で、御社はどれくらいのシェアを占められるでしょう。

マイケル・ベナー 我々は、法人市場において圧倒的にシェアが低い状況で追いかけている状況です。1990年代はドコモさんの一人勝ちでした。KDDIさんは固定部門での法人のお客さんがいて、それなりのシェアを取ったのですが、J-フォンの頃はコンシューマー中心でやってきましたので、本格的に法人で動き始めたのは本当に2004年のタイミングなんです。

 これから追いかけていくのですが、そのためにはボーダフォン独自の戦略でやっていきたい。単にドコモを真似していくだけでは、なかなかシェアは取っていけない。

 ボーダフォンは各国で法人分野が位置付け的に強いわけですから、日本でも最終的にはコンシューマーのシェアと同じくらいを目指していきたいです。

ITmedia 独自の強みは具体的にどこにあるのでしょうか

マイケル・ベナー ボーダフォンしかできないようなサービスを出していきたい。日本で普及していない、海外での成功例のあるものを出していきます。

 我々しかできない面白いエリアは、グローバルアカウントへの対応です。日系企業でも外資企業でも国際企業で、本社から全世界を仕切っている会社とトップレベルの関係を持って、グローバル契約を結んでやっていくという前例はたくさんあります。それを今、日本で展開してまして、日系企業もボーダフォンとつきあえば、1社で全世界のモバイルニーズを提供できる。一括の大口契約という形でできます。

[ITmedia]

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