4Gなんていらない?──ウルトラ3Gとスーパー3G
KDDIが発表したウルトラ3Gや、ドコモのスーパー3Gは、通信速度などだけを見ると“4G”と呼んでもいいほど進化している。しかし4Gとは言えないし、言いたくない理由もある。
2001年に国内で3G(FOMA)がスタートして以来、次の大きな変化は2010年の第4世代(4G)と言われていた。ところが、このところ3Gの改良を進める動きが盛んだ。
KDDIは「ウルトラ3G」構想(6月15日の記事参照)を打ち出し、一方で、ドコモは「スーパー3G」を進めている(2004年7月23日の記事参照)。
タイミング的には2010年──4Gが登場してもおかしくない時期。しかし「4Gを目指すのではなく、さまざまなネットワークのシームレス化を図る流れのほうが強い」と、KDDIは、敢えて“3G”という言葉を使った理由を説明する。
KDDIのウルトラ3Gは、無線通信方式のみを指す言葉ではなく、固定網と無線網のバックボーンネットワークを融合し、固定と無線がシームレスにつながるネットワーク全体を指す。単なる通信速度の高速化よりも、柔軟なネットワーク構造のほうを、“次世代”としてアピールしたい考えだ。
しかし4Gという名前を使わない理由は何なのか、もう少し詳しく見てみよう。
曖昧な“4G”の中で決まっていること
4Gという言葉は存在しても、4Gがいったい何なのかはほとんど決まっていない。ほぼ確実なのは、3Gとは違う周波数帯を使うことだ。
ドコモが4G向けとして開発を進めている通信方式では、5G〜6GHz以下の周波数を使って実験をしている(2004年12月17日の記事参照)。これは総務省が4Gへの割り当てを想定している帯域だ。
通信規格 | 周波数帯域 | 速度 | 時期 |
---|---|---|---|
3G | 2GHz帯 | 〜2Mbps | 2001年 |
3.5G | 2GHz帯 | 14Mbps | 2006年 |
3.9G | 2GHz帯 | 30Mbps程度 | 2009年 |
4G | 5G〜6GHz帯 | 100Mbps〜 | 2010年移行 |
周波数帯が変われば基地局を新たに設置し、通信インフラを一から作り直すことになる。3Gで周波数帯が2GHz帯に変わることで、ドコモやボーダフォンが味わった苦しみが、4Gへの移行でも再び発生することになる。
4Gで想定しているような5G〜6GHzという高周波数では、ますます電波の直進性が強まり、減衰率も高くなる。高速通信は可能になるが、携帯電話向けとしては扱いにくくなるのは間違いない。
KDDIが4Gという言葉を使わず、3Gの一種としてウルトラ3G構想を発表したのは、この周波数の問題があったからだ。周波数帯が変わることをイメージさせる“4G”という言葉を使いたくないという思いが、ウルトラ3Gという名称には込められているのだろう。
そもそもKDDIが3Gへの移行をスムーズに行えたのも、2Gと3Gで同じ周波数帯を使い、方式の互換性を維持したことが大きい。発表でも、次世代CDMA2000の目標として「現行CDMAシステムとの互換性の維持」を挙げている。つまりは既存の周波数帯を使ったサービスを目指すとしている。
ドコモもスーパー3Gを3.9Gとも呼び、3Gと周波数などでの互換性を維持するとしている。具体的には2GHz帯の5MHz幅を使う計画だ。「2004年末の3GPPの会合で、W-CDMAを発展させる検討を行う提案を連名で行って承認された。想定しているのは30M〜100Mbps」(ドコモ)
わざわざ周波数帯を変えてまで、4Gを導入する必要があるのかどうか。ドコモの榎氏ではないが(2004年11月20日の記事参照)、単なる通信速度の向上ではなく、何が4Gで可能になるのかを改めて考えていく必要があるだろう。
*** 一部省略されたコンテンツがあります。PC版でご覧ください。 ***
関連記事
- 2010年にやってくる? 4Gとは何か
3Gが本格普及に入り、次世代の規格として4Gが話題に上がり始めた。明確な定義は、利用する周波数帯も含め2007年のITU-T会合で決まるが、現時点で想定される“4Gとは何か”をノキア・リサーチセンター・ジャパン所長の話から探っていく。 - HSDPAと4Gの間を埋める「スーパー3G」〜ドコモ
100Mbpsを実現するといわれる、未来の通信技術「4G」。ここに到達するまでに、ドコモはHSDPAと、「スーパー3G」というステップを踏む。スーパー3Gでは、30Mbpsの通信速度を実現できるという。 - 「HSDPA」技術と最新ロードマップ
W-CDMAの発展技術「HSDPA」。俗に3.5Gとも呼ばれ、下り最大14Mbpsの通信速度を実現する。2005年末に迫った商用化に向けて、最新ロードマップと技術概要を確認しよう。 - ドコモ、4G向け1Gbpsの伝送実験に成功
VSF-Spread OFDM通信方式と、MIMO多重化を利用。低速移動時に1Gbpsの通信速度を実現する。 - 榎氏がもらした「4G」の不透明さ
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.