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スーパー3Gのポリシーは「ロケーションの活用」―― NTTドコモに聞く 神尾寿の時事日想:

ムーバからFOMAへの移行に比べ、3.5G、3.9Gへの移行はスムーズに進みそうだ。そのポイントは“今あるロケーションを生かして高速化技術を用いること”だという。HSDPA、スーパー3Gへの移行スケジュールについて聞いた。

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photo NTTドコモ副社長ネットワーク本部長の石川國雄氏

 昨日、時事日想の特別編としてNTTドコモ副社長ネットワーク本部長の石川國雄氏のインタビューをお届けした(7月25日の記事参照)。最近のドコモはFOMAエリアの現状と今後の展望について積極的に情報開示を行っており、「ムーバよりつながる」信頼獲得への覚悟は並々ならぬものがある。インタビューからその一端が垣間見ていただけたのではないかと思う。

 さて、石川氏のインタビューの中でもう1つ、興味深い話があった。それがドコモが3.9Gと定義する「スーパー3G」までのエリア展開に対するスタンスである。

HSDPA対応の準備は整っている

 周知のとおり、ドコモは今年秋の903iシリーズで高速化技術の「HSDPA」を導入する見込みだ。これはEnhanced 3Gに定義される技術で、携帯電話業界内では便宜的に「3.5G」と位置づけられている。ドコモではHSDPAのエリアについて、当初は都市部を中心に展開し、人口カバー率90%達成を当面の目標にしている。

 「(HSDPAは)今年度に県庁所在地級都市に展開し、来年度に中小都市までエリアを広げて人口カバー率90%にします。これらの地域では、ルーラルタイプを除けば、すでに多くの基地局でHSDPA対応の設備が入っています。あとはソフトウェアのチューニングと、あとはパッケージ(拡張ボード)の交換をするだけという状況です。基地局側の大規模な改修は必要ありません」(石川氏)

 詳しい読者ならお気づきだと思うが、ドコモのHSDPA対応のアプローチは、auのCDMA 1X WINが使う高速化技術「1x EV-DO」導入の時とほぼ同じである。FOMAの開始初期は基地局を新設したためエリア展開に時間がかかったが、HSDPAは想定された“アップグレード”であるため、エリア展開のスピードは速く、スムーズに進みそうだ。

 「ちなみに(現時点でHSDPA対応を考えていない)ルーラルタイプも、親機側にチューニングとパッケージ交換を施せばHSDPA対応になります。ですから、FOMAユーザーの増加と通信ニーズの拡大にあわせて、十分に歩調が合わせられるようになっています」(石川氏)

スーパー3Gまでは今あるロケーションを活用する

 ドコモでは今後のロードマップとして、HSDPAと対になるHSUPAを3.5G世代で導入、そして2010年前後に3.9G世代と定義するスーパー3Gの導入を計画している。これは理論ピーク速度で最大100Mbps、サービス時のピーク速度でも30Mbps程度のスピードが見込まれているものだ。この3.9Gまでのエリア展開も、基本的なスタンスは「ロケーションの活用」だという。

 「スーパー3Gの開発思想は今あるロケーションを利用し、その前提の中で様々な高速化技術を用いるというものです。エリア展開で最も大変なのは場所の確保なんですね。(土地や施設の)オーナー様に設置スペースを貸していただき、近隣住民の皆様にご理解をいただく。さらにビルや電柱への設置では加重の問題もあります。これらをクリアしてようやく新たな基地局が設置できるのです。

 ドコモではすでに3万4800局の屋外基地局と約1万局の屋内基地局を設置していますが、これらのロケーションを使い、アンテナをはじめとする設備の多くを共用して3.9Gまで進化させることが重要なのです」(石川氏)

 ドコモのFOMAは2G時代に比べて多くの基地局新設が必要になり、それが原因になってエリア展開でauに後れを取った経緯がある。しかし、3.9Gへのロードマップでは基地局インフラそのものは継承しながら、それを拡張する形で高速化技術を導入していくので、今までよりもスムーズなエリア展開に期待できる。

 石川氏はスーパー3Gについて、「ドコモの力の見せどころ」と意気込みを見せる。同社の研究開発力の高さは折り紙付きであり、そこから生まれたサービスが、エリア拡大期の課題を抱えずに市場に浸透できれば、携帯電話ビジネスの活性化にもつながるだろう。まずは3.5Gの普及、そして3.9Gの登場に注目していきたい。

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