SFC Open Research Forum 2005
〜知の遺伝子進化を加速せよ〜
イラスト入場無料
2005/11/22(火)-23(水)
六本木アカデミーヒルズ40
主催:慶應義塾大学SFC研究所
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写真1■環境情報学部の内藤助教授

SFC Open Research Forum 2005:走り続けるSFC──先端研究が社会を変える

英国の生物学者は、生き物が進化しつづけるのは、競争相手である周囲の生き物もまた進化しているからだと考えた。「立ち止まれば、すぐに出し抜かれてしまう」──SFC Open Research Forum 2005は走り続ける慶應義塾大学湘南藤沢キャンパスの今を見せる。

 「ここではだね、同じ場所にとどまるだけで、もう必死で走らなきゃいけないんだよ。そしてどっかよそに行くつもりなら、せめてその倍の速さで走らないとね!」(ルイス・キャロル 山形浩生訳『鏡の国のアリス』)

 10回目を迎えた今年の「SFC Open Research Forum 2005」(SFC ORF)は、テーマの原点を『鏡の国のアリス』に登場するレッドクイーンのこの言葉に求めた。

 「なぜ男女の性が存在するのか」という素朴な問いは、生物学上の難問でもある。ダーウィン以降最高の進化生物学者ともいわれるハミルトンは、性という高いコストと引き換えてまでも生き物が高速に進化するのは、競争相手である周囲の生き物もまた進化しているからだと考えた。生き物にとって最大の脅威は、氷河期のような天変地異ではなく、自らと同様に進化する他の生き物たちであると発想したのだ。『鏡の国のアリス』に出てくるこの一節から、ハミルトンの考え方は「レッドクイーン仮説」と呼ばれている。

 「研究の世界も同じ。周囲の研究者もどんどん走っている」と話すのは、慶應義塾大学環境情報学部の内藤泰宏助教授(写真1)。

 15年前に開設された湘南藤沢キャンパス(SFC)は、総合政策学部、環境情報学部、大学院 政策・メディア研究科、看護医療学部、健康マネージメント研究科が相互にかかわり合い、新しい知のスタイルを提示してきた。

 「SFCは開設当初からすばらしいダッシュで周囲を出し抜いてきたが、安穏としたり、立ち止まってしまえば、すぐに居場所がなくなってしまう。“だから走り続けよう”という意味を込め、10回目という節目を迎えたORFのテーマとして掲げた」と内藤氏。

 個で走るのではなく、「交配」によって進化が加速するという「レッドクイーンの法則」は、従来の縦割りの知の在り方を打ち破ろうとするSFCの理念にも通じる。

日韓の若手政治家がインターネットで対話

 今年のORFは、ビジネスマンらを対象とした初日(11月22日)と広く一般の方を対象とした2日目(23日)で異なる顔を見せる。


写真2■政策・メディア研究科の土屋助教授

 初日の目玉は、SFCが推進する「社会モデル(社会仮説)」と「政策実践(ビジネス展開)」の可能性を見せる3つのプレミアムセッションだ。

 総合政策学部の神保謙専任講師がコーディネートする「日韓インターネット政治対話」は、次世代を担う日本と韓国の若手政治家がインターネットを介して対話することによって、大学を母体とする新しいチャネルが生まれ得ることを見せる。

 「総合政策学部は学問の世界に閉じこもっているだけでなく、現実の世界にどう入っていくかが問われている」と話すのは政策・メディア研究科の土屋大洋助教授(写真2)。

 長いあいだ、韓国は近くて遠い国だったが、韓国政府による日本文化開放政策が進む一方、竹島の領有権をめぐる問題が再燃するなど、ここへきて動きは加速している。

 「研究者たちはどうだろうか? 昔ながらの地域研究の枠組みではダメだ。レッドクイーン的に走っている日韓の若手政治家をオンラインでつなぎ、将来の日韓関係のインフラ作りを目指したい」と土屋氏は話す。

 SFCでは、既に日中韓をインターネットで結んだ遠隔講義を毎週実施している。韓国の延世大学、上海の復旦大学が参加、「リージョナルガバナンス」をテーマに各大学がレクチャーし、学生が質問し合っているという。

最先端のバイオ研究が社会をどう変える?

 バイオインフォマティクス(生命情報科学)の先駆者である環境情報学部の冨田勝学部長とバイオ業界の代表的なジャーナリスト、宮田満氏が対談する「バイオインフォマティクス&ビジネス」は、大学での研究がどう社会につながっていくのかを見せる。

 冨田氏が取り組むのは、ゲノム(ヒトの全遺伝情報)などを基に「生物(細胞)をコンピュータ上に再構築する」という極めてユニークな研究だ。やがて人の体がコンピュータ上にモデル化できれば、そのパラメータを変えることによって個人の体を再現し、シミュレーションを行うことで医師の意思決定を支援することもできるようになる。

 細胞をモデル化するには、遺伝子やたんぱく質以外に代謝物質の情報も必要だという。冨田氏はそれを網羅的かつ高速に測定できる「メタボローム解析技術」を開発、「ヒューマン・メタボローム・テクノロジーズ」を自ら起業した。製薬企業や食品企業と提携して、創薬や創食を支援し、研究成果を社会に還元するのがバイオベンチャー設立の狙いだ。

 前出の内藤助教授は、「21世紀はバイオの時代といわれているが、最先端の研究が世の中にどう繋がってくるのかは見えにくいかもしれない。新しい成果が今後5〜10年というスパンでどのようにビジネスに還元され、社会や暮らしがどう変わるのかを垣間見ることができるセッションになるのではないか」と話す。

 インターネットのパイオニア、環境情報学部の村井純教授と大前研一氏による「インターネット・グローバリズム」も興味深い。中国・大連にコールセンターを開設することの可能性にいち早く着目したといわれる大前氏と村井氏がインターネットとビジネスの未来像を描く。

授業形式でSFCのアカデミズムを

 初日の3つのプレミアムセッションが、SFCの産みだす成果が「外」(社会)にどうつながるのかを見せるのに対して、祝日となる2日目(11月23日)は、SFCがつくろうとしている新しい学問や先端研究を授業形式で分かりやすく見せるという。キャンパスの「内」に入り込んだときに見えるSFCの今の姿を体験できるだろう。

 予定されている主な「模擬講義」の内容は以下のとおり。

「情報外交の今」:土屋大洋
 外交とはコミュニケーション。目隠しをされ、耳栓をしたままではコミュニケーションはできない。インテリジェンスコミュニティー(情報機関)の話を中心にデジタル時代の情報外交の今を読み解く。

「映像表現と脳科学」:佐藤雅彦
 自分自身が作ってきた表現群(バザールでござーる、などのCM)を事例に、それを生みだした表現方法の体系化とその理論化を試みてきた。模擬講義ではその一端を紹介する。

「雑誌ジャーナリズムのおもしろさ」:福田和也
 『文藝春秋』『新潮45』『実話GONナックルズ』という、まったく毛色も成り立ちも違うのに、それぞれ大きな支持層をもっている雑誌の編集長三氏をゲストにして、雑誌ジャーナリズムについて考える。

「地域情報化」:國領二郎
 大学が企業や地域の教育機関と協働して、メディアを駆使した参加型の学びの空間を構築する取り組みを紹介する。高知県立大方高校のみなさんとのコラボレーションをライブで体験する。

「サクセス・ピープルの人生設計」:赤木昭夫
 人生における成功と何か? 「運が良い」ことが成功であれば、「人生は賭け」になってしまう。しかし、それでは、自分で自分の道を切り開いていくことにならない。

 なお、SFC Open Research Forum 2005の最新プログラムはWebサイトで参照できる。

提供:慶應義塾大学 SFC Open Research Forum
企画:アイティメディア 営業局/制作:ITmediaエンタープライズ 編集部/掲載内容有効期限:2005年11月30日