日本SGI ソリューション・
キュービック・フォーラム2006


いよいよコンテンツが主役の時代に!
ブロードバンド・ユビキタスが築く新たな世界
時代の変貌を予感する2日間
2005年11月29日(火)、30日(水)
ウェスティンホテル東京/SGIホール
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写真1■代表執行役社長兼CEOの廣瀬禎彦氏。「コンテンツを一言で表すと?」の問いには、「表現。コンテンツはコミュニケーションの媒体」と話す

コンテンツが主役の時代、目指すは「アラジンの魔法のランプ」

「コンテンツが主役の時代」――日本SGIが主張してきたこの時代が確実に到来しつつある。では、実際のコンテンツ・サプライヤーはどのようにこの動きを見ているのか。コロムビアミュージックエンタテインメント代表執行役社長兼CEOの廣瀬禎彦氏に話を聞いた。

「コンテンツが主役の時代」――日本SGIが主張してきたこの時代が確実に到来しつつある。では、実際のコンテンツ・サプライヤーはどのようにこの動きを見ているのか。昨年、14年ぶりに赤字を脱出し、これから攻めに転じようとしているコロムビアミュージックエンタテインメント代表執行役社長兼CEOの廣瀬禎彦氏に話を聞いた(写真1)。

ITmedia 「コンテンツが主役の時代」というと、なかなか理解しにくいのですが、これまで社長がビジネスをされてきた中で、そう思うに至った経緯をお聞かせいただきたいと思います。

廣瀬 これは日本でもこれから議論になるトピックだと思います。幾つか例を挙げて説明しましょう。テレビ局について考えてみましょうか。一般的に、われわれがテレビ局の価値と思っているものの本質は番組であり、そこで展開されるコンテンツです。しかし、番組の権利を持つのは、制作プロダクションやそこに在籍するクリエイターです。本当に重要なものは何かという点に目を向けたとき、コンテンツ自体の価値が高く評価されるようになってきました。

 一方、メディア表現が非常に自由になってきています。電波メディアの登場以前は、プリントメディアしかありませんでした。文字と写真を駆使し、限られたスペースの中でそれらをどう配置するかを腐心した結果、新聞や雑誌のようなメディアになったわけです。

 電波メディアが登場すると、今度は音声や映像も利用可能になりました。ラジオであれば音声だけですが、テレビになると放送する映像にも気を遣う必要があるなど、表現がまた複雑になりました。

 さらに、インターネットメディアが登場しました。プリントメディアの蓄積性と電波メディアの即時性を兼ね備え、その表現方法も、テキスト、画像、映像、場合によってはアニメーションやCGと非常に幅広い表現力を持っています。幅広い表現力を持つということは、従来のメディアと比べ、コンテンツを作ることの比重が非常に高くなったことを意味しています。

 コンテンツ自身の価値が評価されていることと、コンテンツ制作の比重を考えるに、コンテンツの時代が到来したと考えるのです。

ITmedia 音楽業界では、かつての紙や電波のメディアが主流だった時代と比べて、どういった変化があったのでしょう。

廣瀬 分かりやすいところでは、ライブレコーディングが減り、打ち込みが増えています。美空ひばりの時代は、レコーディングといえば一発撮りでした。しかし現在は、フレーズや1小節ごとでも作れてしまい、それをつなぎ合わせることで、誰でもそれなりの音楽が作れてしまいます。

 また、iTunesに代表される音楽配信も大きな変化ですが、現在のそれがデジタル配信の完成型だと思ったら大間違いです。音楽のネット配信は、機能的・技術的には、かなり前から実現可能でした。ただ、音楽業界、特にアーティストが、配信事業に対して協力しないとそもそも成り立たないものだったのです。スティーブ・ジョブズ氏の人柄をアーティストが信用し、そこに一つの共感があったから実現できたのであって、システムがあったからできたわけではありません。その意味では、システムあるいは機能的なことだけでは踏み込めない新しい形のコンテンツ・サービスが、ジョブズ氏のおかげで始まったということは大きなことです。

ITmedia コンテンツの時代で重要となるのはどういったことでしょう。

廣瀬 コンテンツが持つクオリティをどう上げていくかです。特に音楽の場合は、音表現のダイナミクスを最大化できるものをわれわれが用意し、アーティストが持っている能力を最大限に表現して伝えられればいいわけです。それを実現するために、コンテンツ制作のシステム化がこれからの大きな課題となります。コンテンツ制作は人間の創造力そのものです。創造力をもって物事を表現するというそのプロセスが、ストレスなくできるような環境を支援するシステムの必要性が出てくるわけです。そこからさらに踏み込むならば、制作したコンテンツを作った人の意図した表現にできるだけ忠実なものとし、さらにそれを届けたい相手に届ける仕組みが必要ですね。

ITmedia デビット・モシュラは、その著書「覇者の未来」で、IT市場の変遷をメインフレームの時代からPCの時代、そしてネットワークの時代を経てコンテンツの時代がくると予言しました。くしくも廣瀬さんの経歴を見ると、日本アイ・ビー・エム、アスキー、セガ、アットネットホームそしてコロムビアミュージックエンタテインメントと、モシュラが指摘する時代ごとのビジネスを手がけているようにも見えます。廣瀬さん自身は、なぜコンテンツの会社に身を投じられたのでしょうか。

廣瀬 アットネットホーム時代は、日本でかなり早くケーブルインターネットのサービスを立ち上げました。そこでのサービスもテレビとほとんど同じサービスを提供できるはずだと考え、さまざまなことにトライしました。そうした経験から分かったのは、メディアの表現力が増えれば増えるほど、エッセンスとなるのはコンテンツを作り出すことにほかならないということだったのです。

 もう1つ分かったのは、新しいメディア環境を提供するディストリビューターがコンテンツを作れないことです。もう少し正確に言うと、コンテンツを作り出す機能と、それを配信する機能は文化がまったく異なります。インフラのように形として現れるものは、コストの積み重ねがトータルコストとなり、そのトータルコストに対してマージンを乗せることで市場価格が決まります。しかし、コンテンツはそうではありません。価格設定に論理性がありませんし、需要と供給という概念も希薄です。また、インフラは、設備投資をすればいいシステムができますが、コンテンツはお金を放り込んだからといって必ずしもいいものができるわけではありません。このように、異なる2つのカルチャーを一つの組織体として、あるいは一つのビジネスとして扱うのが非常に難しいのです。

 また、コンテンツ・サプライヤーが、新しいメディア環境を積極的に使おうとしない限り、メディア環境を提供するディストリビューターがいくらコンテンツ・サプライヤーにアプローチしても反発があるものです。ですから、コンテンツを新しいメディア環境で流通させるためには、外からいろんなことをやるということも一つの方法ですが、中に入ってやるほうがいいのではと考えたのです。それがコロムビアミュージックエンタテインメントに入った理由です。

ITmedia コンテンツの時代ではコンテンツ・サプライヤーにとってのリスク要因はないのでしょうか。

廣瀬 いいクリエイターを見つけて育てられなくなったら大変でしょうね。そういう意味では、日本の教育方針が一番のリスク要因といえるのかもしれません。画一的な人を生み出すような社会ですと、ユニークなコンテンツが出てくるチャンスは減ります。

 いいクリエイターやコンテンツを見つけるには、いかに自分が価値基準を持つかが重要で、きちんとした判断基準が求められます。その判断基準をどうやって作り上げるかというと、最高のクオリティを持つ作品をたくさん見るなり聞くなりしなければならないでしょう。

 しかし例えば、MP3のように非可逆圧縮の音楽ソースに慣れてしまうと、判断基準がMP3になってしまうことになりますが、それは恐ろしいことです。音楽の大事なことはダイナミックレンジなのですから。その意味では、すきまだらけのデジタルではなく、アナログが再注目されることも考えられなくはありません。

ITmedia アナログへの復権ですか?

廣瀬 もちろん非常にコストの掛かることですので、限られた人に対してのサービスとして、ということになるのかもしれませんね。とはいえ、例えば、外食産業では、同じ腹を満たすという目的に対して、一方はファーストフード、一方は銀座のレストランといった感じで、50倍の価格差があっても成立してしまっています。これを考えると、例えばあるアーティストのアルバムを買おうとする場合、CDで購入すれば約3000円、iTunesなら約1500円、弊社が提供する高付加価値のスペシャルメディアが1万円であっても売れるはずなのです。また、インターネットはCDのクオリティよりもはるかにダイナミックレンジの広い音楽を配信することだってできるのです。そうした動きがあってもおかしくないですね。自由度の高いコンテンツだからこそこうしたことが可能となるのです。

 音楽産業がこうした高付加価値に進んでいくことは間違いないでしょう。ただ、コンテンツの世界では、確定需要があって、それに対して供給すると割り算で値段が決まる、というものではありません。需要は非常に先行性が強いし、供給も、マージナルコストは小さいので、いくらでも供給できる。そうすると価格の決まり方自体も違うのです。買う側の主観的な値段になるし、あとはひょっとしたら売る側の勝手な値段かもしれません。いずれにしても、一番たくさん売れているものが誰にとってもいいものではないことを再認識すべきです。

ITmedia コンテンツの時代ではどういった動きが考えられますか。

廣瀬 コンテンツの「評論」、つまりコンテンツに関する情報の重要性が増すでしょうね。今はコンテンツそのものが議論されていますが、コンテンツを判断するための情報というのが実はこれから重要になってくるのです。例えば、米国のワイン評論家でロバート・パーカー氏をご存じですか? パーカー氏が高いポイントを付けたワインはどれも数万円以上の値段が付くのですが、同様のレーティングがコンテンツ業界にも出てくるでしょうね。音楽業界なら例えば渋谷陽一さんや湯浅学さんなどがそれに当てはまるのかもしれません。

ITmedia 最後に、廣瀬氏が考えるインターネットの未来はどのようなものでしょう。

廣瀬 われわれにとってインターネットのあるべき姿は、「アラジンの魔法のランプ」なのです。ランプをこすると、何でもできる魔神が出てきて、「だんな様、ご用件は?」と言うのです。そして用件を伝えればそれをかなえてくれる。コンテンツは、もっと柔軟性を持たせることができるので、受け取り側の嗜好と作る側が直結した形で存在してもいいのではないかと思います。

提供:日本SGI株式会社
企画:アイティメディア 営業局/制作:ITmediaエンタープライズ 編集部/掲載内容有効期限:2005年11月30日