成功要因1:ITIL導入効果を見極める:ITIL導入成功へのステップ(2/3 ページ)
はやりのITIL導入には多大な労力がかかるものだ。効果が得られるにはそれなりの年月がかかる。ITIL導入の成功にはこのタイムラグの間を管理できるかが1つのポイントとなる。
では、各企業は、ITILの導入効果をどのように取りまとめ、管理していくことが求められるのだろうか。効果の取まとめ方は企業によりさまざまだろうが、次の4つの要件を満たしていることが必要である。
- 各効果間の関係性および順番性が明確化され、効果の波及構造が明確化されていること
- 効果の波及には、一定度のタイムラグがあることが考慮されていること
- 非金銭的な効果であっても、定量的な効果指標(KPI)が設定されていること
- 各効果指標は、比較的容易に測定可能であること
これらの要件を満たした取りまとめ方法の1つとして、バランスドスコアカードに準じた効果の波及モデルがある。
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図1に示す効果の波及モデルは、縦軸を下から「学習」「業務プロセス」「顧客」「財務」といったバランスドスコアカードの4つの視点で層別化し、横軸には時間をとる。この上に、定量的な効果指標であるKPIを該当する層および時間を考慮してマッピングし、各KPI間の関係を線で結んでいる。図1では、KPIは下位層から段階を経て上位層に波及するといった方向性があり、またその波及にはタイムラグがあるということが図中に考慮されている。
ITIL導入プロジェクトからの矢印線が、「学習」の層と 「業務プロセス」の層にあるKPIのボックスに結ばれていることは、ITIL導入の直接的な改善効果が、下位2つの層である「学習」と「業務プロセス」において発現することを意味している。また、右斜め上に向かって、KPIの線が結ばれているのは、一定のタイムラグを経て、上位層である「顧客」や「財務」へ効果が波及するということを意味している。
インシデント管理を対象にして、これらの波及構造を簡単に見てみると、「過去のインシデントを分析することで問題の傾向を捉えることができ(学習)、プロアクティブな対応を施すことでインシデントの発生件数を削減し(業務プロセス)、これによりSLAが達成され顧客満足度が向上すると共に(顧客)、インシデント対応に関わるコストを削減することができる(財務)」ということになる。このように、ITILの導入効果は、 「学習」「業務プロセス」「顧客」「財務」の効果を並列で羅列するのではなく、各KPI間の関係性を明確化した上で、波及構造として捉えることが必要である。
なお、これらの波及モデル図は、各プロセス単位に作成するのではなく、取り組みの対象範囲全体を1枚で示すのが望ましい。波及モデル図を1枚で作成することで、より具体的なKPI間の関係を整理でき、各プロセス間の連携の重要性を改めて認識できるようになるからだ。
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