第1回 ITILはITサービスの救世主か?:運用管理のベストプラクティス集「ITIL」とは何か?(3/3 ページ)
「ITIL」という言葉が知られるようになった。システムの運用管理を見直すには格好のフレームワークといえる。ITILの内容を見ていく前に、まずはITILの持つ意義を知っておく必要がある。
ITサービスの大きな課題である保守運用の効率と品質を上げるために、ITILにはいくつかの活用の仕方がある。
- ITILにより、現在行っているオペレーションの状態の診断を行う。その状態を把握することで、将来の改善の方向や優先順位をつけられる
- ITILではITシステムに関わる利害関係者の共通の認識や知識を持つことになり、同じ土俵の上で議論や行動を起こすことができる
- 発注者側とSLAやSLMなど今後重要な決め事や実際のマネジメントを実現させるための参照となる
- 言い方は悪いが、保守運用の現場を担う人が間違った方法論を押し付けようとしたり、仕事を理解していない発注者や上司から身を守り、無理・無駄な仕事そして無用な残業から開放される
上記のことができていくことが、最終的に保守運用の近代化へとつながるのではないだろうか。そしてそれは、ITガバナンスとビジネスガバナンスを結びつける、組織本来のITの取得行為を本来の形にしていくことになるのではないかと信じている。
ITサービス全体に関わる組織や人にとって、ITILを活用することは救世主になりえる可能性を持っているのは事実である。問題は、日本の組織が非常に優秀な現場の人々に支えられているために、属人的な勘と経験、度胸で進めてしまう傾向を変えて行くことである。
今回の最後に申し上げておきたいのは、マネジメントフレームの導入はサーバを入れ替えるのとは大きく違う点である。組織にも個人にも多くの負荷や時間・コストなどが必要であり、生半可なものではないこと再認識する必要がある。半年ぐらいの時間軸で、到底すべてが導入できるわけではない。
何故このようなことをあえて指摘するかといえば、一部のソフトベンダーなどが自社のITツールさえ導入すればITILの実装が終わると吹聴し、導入を図る傾向があると聞いているからである。人間の体質と同じで地道な努力が必要であり、そうしないと真の体質が進化するとは思えない。ITILは自らが現状を打破し表面的な変化ではなく、自らの努力で進化を求める組織や人にとっては力強い見方になるはずだ。
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