サービスレベルを高める「発想の転換」:ITILを深める! サービスデリバリ編(4/4 ページ)
SLAという言葉に馴染み深い読者は多いのではないだろうか? これに対してSLMという管理手法がある。ITサービスの品質向上の観点からは、SLMの方がより実用的だ(攻めのシステム運用管理)。
継続的プロセスによって明らかになるのは、前述の目標値の妥当性の見直しだけでなく、当初合意した項目そのものの見直しも必要ということである。その際には以下の基準で考えていくとよい。
- エンドユーザーの視点で有効性があるか?
- それらの計測は効率的に実施されており、コストは適正か?
ネットワークサービスの監視を例にとってみよう。サービス開始当初は、ネットワーク機器メーカーの提供する拡張MIB(Management Information Base)まで子細に取得してほしいという要求がある。しかし、実際にはエンドユーザーの視点で、ネットワークが落ちていないか、パフォーマンスが落ちていないかという要件のみ担保するのであれば、ネットワークを構成する機器の死活レベルをICMPポーリングとSNMPトラップで取得し、特に重要性の高いポートごとの使用率(インターネット回線、拠点間のWAN回線など)を取得することだけで足りているのでは? と考えていく。このようにコストやサービスの内容について見直しが適宜されていくのである。
最後にSLA/SLMの導入の目的について再度触れおこう。前述の通り、ITILにおいてその目的は顧客とベンダー(社内の場合はユーザーとIT部門)が合意した項目に沿って、対象となるITサービスの品質を維持向上することにある。一方が他方からペナルティを得るため手段として導入するのを時折見受けるが、この場合はもちろんベンダー側には歓迎されない。
お互いを非難するためのSLAやSLMの導入は、お互いが保守的で防衛的になるため、サービスの品質改善を妨げ、広くはその啓蒙普及においても明らかにマイナスである。あくまで定量化された目標に基づき改善を繰り返し、その結果として相互利益を追求するという両者のパートナーシップのための合意であることを再度確認しておきたい。
関連記事
- ビジネスとITを結びつける
技術中心のアプローチから運用品質の改善/向上のアプローチへ。ビジネスがどのようなITサービスを要求するか、に焦点を当てた「サービスデリバリ」。6回にわたってそのプロセスを紹介していく。 - 「忙しい」の定量化で、終電仕事を解消
- ITILはITサービスの救世主か?
- 運用業務の効率化に効く
- 成功要因1:ITIL導入効果を見極める
- 実録 ITインフラ複雑化の悲劇
- 特集:攻めのシステム運用管理
関連リンク
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.